ロサンゼルスの暴動とメキシコ移民問題
アメリカのロサンゼルスで暴動が起こっていて、大変なことになっています。ことのきっかけについては一概に言いづらいところもありますが、2025年6月6日に不法移民の摘発が行われたことが原因だったという話もあり、簡単には収まりそうにない雰囲気があります。
この地域はメキシコなどから移ってきた移民が多く暮らしているエリアであり、デモの中にはメキシコ国旗を掲げる人たちも多く見られます。そうした中、6月15日からカナダのアルバータ州で開催されるG7サミットでは、メキシコのシェインバウム大統領がアメリカのトランプ大統領と会談する予定になっています。
この記事では、この問題を政治的な視点ではなく、経済的な視点から見ていこうと思います。最初に申し上げておきますが、私はトランプ政権を支持するとか、デモの人たちを支持するとか、そういう意図は一切ありません。ただし、不法移民というのは法律的には正しくない滞在をしているため、摘発されても文句を言えない立場ではある、それは事実としてあるわけです。ただし、人道的な観点からの配慮は必要だと思っています。
アメリカ在住メキシコ人とメキシコ経済の関係
今回の暴動に関して、アメリカに住むメキシコ人社会が大きく関わっているという見方があります。実、アメリカで暮らすメキシコ人たちの生活がトランプ政権になってから大きく変わってきているというデータが最近公表されました。
その一つが、メキシコの国際収支です。5月23日に公表された2025年1〜3月期の国際収支によると、経常収支は76億ドルの赤字になりました。これは前の四半期、つまり2024年10〜12月期の128億ドルの黒字から一転、大きな赤字に転落したということです。
中国企業のメキシコ工場で生産されるものについても高い関税をかけると言っています。トランプ政権が誕生した場合には、メキシコ経済の好循環がストップしてしまう可能性もあります。
この中でも注目すべきなのが、「第二次所得収支」という項目で、これは居住者と非居住者の間での対価を伴わない資金の移転、つまり仕送りや送金を指しています。メキシコ経済は昔からアメリカに出稼ぎに行ったメキシコ人からの仕送りで支えられてきた側面があり、これが大きな外貨獲得手段となってきました。
2024年の年間送金額は647億ドル、日本円にして10兆円近い金額がメキシコに送られたと確認されています。そのうち、97%がアメリカからの送金です。これはメキシコのGDPの約3.5%に相当する金額であり、いかにアメリカからの仕送りでメキシコ経済が支えられているかが分かります。
仕送りの減少と不法移民の摘発
では、2025年1〜3月期の第二次所得収支はどうだったかというと、141億ドルでした。これは2024年10〜12月期の163億ドルを下回っています。ただ、1〜3月期は季節的に送金が減る傾向があるため、この段階ではあまり注目されていませんでした。
ところが、6月2日に中央銀行が発表した月次データで、2025年4月の仕送りが前年同月比で12%減少し、47億6,000万ドル、日本円で約6,800億円だったということが明らかになりました。これは、季節的な要因を除いても大きな落ち込みです。実際、12%の減少は2012年9月以来の大幅な下落ということで、送金が急減していることが確認されています。金額にして、前年から約1,000億円が減った計算になります。

では、なぜ送金が減っているのか。
すべてがそうだとは言いませんが、一部では不法移民の人たちが送金を控えているという見方があります。今、アメリカでは不法移民の摘発や強制送還が一部で行われている中、不法移民の人たちは目立たないように行動しなければならない状況にあります。
そのため、これまでしていたメキシコへの送金を一時的にストップしている人たちがいる、それが送金額減少の背景にあるのではないかと見られています。
経済への影響
もちろん、減少した1,000億円のすべてが不法移民によるものとは限りません。ただ、アメリカからすると、不正な手段によって巨額の資金がメキシコに流れているということが、こうしたデータからある程度見て取れるということになります。
逆に、仕送りによって生活を支えられてきた側からすると、これは死活問題です。これだけの金額ですから、家族の生活がかかっているという人も多くいるでしょう。不法移民を擁護するつもりはありませんが、こうした状況では、彼らも必死に抵抗することが予想され、簡単には終わらない問題になると考えられます。
関税の影響
仕送りの減少に加えて、関税の影響もメキシコ経済に大きく響いています。2024年のメキシコ経済の成長率は、インフレを除いた実質ベースでプラス1.5%でしたが、IMFが4月に発表した見通しによると、2025年はマイナス0.3%まで落ち込むと見られています。

IMFなんて無難な予測しかしないだろうと思う方もいるかもしれませんが、実際その通りで、そうしたIMFですらマイナス成長を予想しているというのが、今回のポイントです。
メキシコ経済の構造的課題
つまり、アメリカとの貿易不均衡や不法な出稼ぎ労働者を含めた送金によって支えられてきたメキシコ経済の脆弱性が、改めて明らかになったということになります。また、これまで中国がメキシコに工場を建て、アメリカ向けの輸出拠点としていたこともあり、そういった恩恵を受けてきたメキシコ経済ですが、今後数年間は向かい風が続くことになるでしょう。
ロサンゼルス暴動の一考察
今回のロサンゼルスの暴動については様々な見方があると思いますが、しばらくは収まらないのではないかと私は見ています。トランプ政権としても、ここで弱腰な対応を取れば、また不法移民が増える可能性がある。なるべくコストをかけずに不法移民を抑制するには、厳しい姿勢を見せる必要があるでしょう。
一方で、不法移民の人たちや、メキシコで仕送りを待つ家族たちの生活もかかっているわけで、この問題は簡単には解決しない、しばらく続く可能性が高いと思われます。引き続きよろしくお願いいたします。
ご参考
不法移民の増加とSNSの影響
もちろん、不法移民が増えている要因としては中東やアフリカで不安定な地域が増えていることが大きな要因ですが、その背景にもこうしたインターネットやSNSの存在があります。
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