UAEの出生率低下に見る中東の少子化問題
中東でも進む少子化の波
日本では少子化が長年の社会問題となっていますが、実は先進国だけでなく、中東の産油国でも同様の現象が起き始めています。中東の経済・金融の中心地であるドバイを擁するUAE(アラブ首長国連邦)も例外ではなく、少子化が問題になりつつあります。
イタリアの出生数が低い理由と、少子高齢化が進行していることについて解説します。これは日本だけでなく、多くの先進国でも同様の状況が見られています。
UAEは多国籍・多文化社会として知られており、少子化が起きていると聞くと意外に感じるかもしれません。しかし現地の様子を見ると、少子化は単に経済力では解決できず、ある程度受け入れざるを得ない問題であることが見えてきます。この記事では、UAEをはじめとする中東地域における少子化問題について詳しく解説します。
統計データで見るUAEの出生率の推移
まず統計データを見てみましょう。UAEの出生率は1970年には6.7でした。これは一人の女性が生涯に産む子どもの数の平均を示しています。しかし、2021年には3.2にまで低下しています。このデータは統計局が発表し、フィナンシャル・タイムズがまとめたものです。
UAEの出生率と移民
UAEの人口はおよそ1000万人弱ですが、そのうちUAE国籍を持つ人は約10%しかおらず、残りの大多数は移民です。この出生率は移民を除いたUAE国民のデータです。移民を含めた出生率は2021年時点で1.4とさらに低い数値になっています。つまり、移民の有無にかかわらず、出生率の低下は顕著だということが分かります。
アラブ首長国連邦(United Arab Emirates:UAE):人口
約1,006万人(2023年:IMF)
UAE国籍者のみの出生率はまだ2.0を上回っていますが、現在の下降トレンドが続けば、いずれ2.0を下回る懸念が出ています。
中東各国でも進む出生率の低下
他の中東諸国も同様の傾向を示しています。例えばサウジアラビアでは、1970年には出生率が7.6だったのが2021年には2.4に低下。イラクは6.7から3.4に、イランでは6.7から1.7にまで下がっています。どの国でも著しい低下傾向が見られます。

サウジアラビアの財政赤字
サウジアラビアは「オイルマネーで潤っている国」というイメージがありますが、実際にはここ10年ほど財政赤字が続いています。
少子化と経済力
日本では、子育てにかかる費用が負担になっていることが少子化の要因とされ、子育て支援策が進められています。しかし、中東の産油国のように生活に困っていない国でも少子化が進んでいる事実から、お金だけで問題を解決するのは難しいことが分かります。
ではなぜ中東でも出生率が低下しているのでしょうか。
その大きな理由はライフスタイルの変化にあります。かつては、UAEでは女性が10代半ばで結婚し、多くの子どもを産むのが一般的でした。しかし今では女性も大学進学や就労が一般化するなど、ライフスタイルは大きく様変わりしています。
1970年代のUAEは人口が約30万人ほどで、砂漠と石油しかない国でしたが、今では1,000万人近い人口を抱える大都市国家へと変貌しました。豊かさと選択肢の増加が、出生率低下に影響していると考えられます。
家族形態の変化
UAEやサウジアラビアはもともと一夫多妻制が認められていますが、最近では一人の女性と結婚する男性が増えています。経済的な理由もありますが、そもそも「たくさんの妻と子どもを持つ」ことを望まない男性が増えているのです。
サウジアラビアの知人によれば、かつては妻を複数持つことが豊かさの象徴でしたが、現代では「一人の妻と静かに暮らしたい」という価値観にシフトしてきているとのことでした。
移民と労働力
中東諸国、特にUAEでは、少子化が進んでいても日本のように労働力不足を深刻に心配する必要はあまりありません。というのも、人口の9割が外国人労働者であり、これまでも積極的に移民を受け入れることで労働力を補ってきたからです。
なぜこれほど大量の移民を受け入れても社会問題になりにくいのか。それはUAEが王族による強力な政治体制、いわゆる「独裁国家」であるためと言われています。欧米のように移民に市民権を与え、選挙権を持たせる仕組みではないため、国のルールは変わりません。そのため、移民の受け入れによる社会変動や政治的不安は起きづらい一方で、移民労働者の人権問題が指摘されることもあります。どちらが良いとは一概に言えませんが、少なくともUAEでは労働力不足への懸念は小さいと言えるでしょう。
国防
では、人口減少において何が問題なのかというと、国の存続や国際社会でのプレゼンス維持に関わる点です。UAEには約6万人の軍隊がありますが、これはすべてUAE国籍者で構成されています。隣国イエメンでの内戦や、海を隔てたイランの存在を考えると、国防は非常に重要です。
18歳から30歳までの男子が減少すれば、軍隊の維持が困難になる恐れもあります。UAE国籍者は現在およそ100万人程度。今後さらに人口減少が進めば、国家の存続自体が危機に瀕する可能性もあるのです。
少子化問題
この記事では、人口の大半を移民が占めるという特殊な事情を持つUAEにおける少子化問題を取り上げました。しかし、人口3,000万人を超えるサウジアラビアや9,000万人近いイランでも出生率は大幅に低下しており、これらの国では影響がさらに複雑になるでしょう。
UAEの例からわかるのは、経済的支援だけでは少子化を防げないという現実です。政府による経済支援は必要ではありますが、それだけで顕著な改善を望むのは難しく、ある程度少子化を受け入れる覚悟が必要だと言えるでしょう。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
ご参考
日本人投資家を狙う悪徳ブローカーの存在
ドバイの不動産市場では、日本人投資家をターゲットとした悪徳ブローカーが多数存在します。少数ではありません、多数です。
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