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日本企業が直面する人手不足と対応策を巡る課題


 最近、日本ではどの業界を見ても「人手不足」という言葉が聞かれるようになりました。私自身、金融機関の経営者や上場企業の関係者と話す機会が多いのですが、その中で特に印象的なのは「人が採れない」という声を本当に頻繁に耳にするようになったことです。コンビニや飲食店で外国人の働き手が増えているという分かりやすい現象だけではなく、一見すると人員が潤沢に見える大企業でも、採用の難しさに直面しているのが現実です。

 企業を評価する際に「経営者が適切な判断をできているか」は非常に重要です。しかし、それぞれの専門領域の話となると、外部から正確に評価することはなかなか難しい側面があります。その中で、企業が採用や人事制度にどう向き合っているのかを見ると、経営者の姿勢や会社の本質が見えてくることもあると私は感じています。この記事では、企業が人手不足にどう向き合っているのか、最近私が聞いた話や感じたことをもとに説明します。

出所)中小企業庁

大企業でも起こる人材不足の現実

 まず、現場で起こっている採用状況の変化についてです。表面上は人がいるように見える大企業でも、実際には「全然採用できない」という声が非常に多いのが実情です。以前は早慶が2割、MARCHが5割、その他が残りというイメージだった企業が、最近では早慶がほとんどおらず、MARCHが3割ほど、残りはそれ以外の大学という状況に変わってきています。つまり、学歴フィルターを下げなければ採用が成立しないようになってきているわけです。
 また、採用できても内定辞退が増えたり、入社して数年以内の離職率が上昇している企業も多いようです。大学卒業生自体の絶対数が減っている中で、企業同士がその限られた人材を奪い合う状況になっており、従来のやり方では「欲しい人材が取れない」という事態が普通に起こっているのです。

 さらに、バブル期前後に大量採用した企業では、その人口ボリュームゾーンが一斉に定年退職を迎えています。この世代には30年以上働き、会社のことを深く理解している人も多く、彼らが抜けた後の穴を埋めることができないという問題も同時に発生しています。

増える定年延長とその副作用

 こうした状況の中で、最近増えているのが「定年退職年齢の引き上げ」です。65歳や70歳まで働けるよう制度を変える企業が増えており、役職定年を廃止する動きも見られます。社員にとっては長く働けるというメリットがありますが、多くの企業では一定の年齢になると給料が下がる仕組みになっており、部長職であっても60歳を迎えると給与が6割に下がり、部下よりも給料が低くなるといったケースが起こっています。

 会社側にとっては、採用が難しい中で経験豊富な社員に残ってもらえ、かつ人件費も抑えられるので合理的な面があります。しかし私は、この対応は根本的な解決になっていないと感じています。

 定年を70歳に延ばしても、いずれその世代も退職します。その後に育つ若手が採用できていなければ、同じ問題に直面するだけです。さらに、給料が下がった状態で重い責任を負わせる体制では、やる気の低下や組織の歪みを招く恐れがあります。上が詰まることで若い世代にチャンスが回らず、組織の活力が失われていくという弊害もあります。

採用強化に向けた表面的な施策

 採用難を受けて、企業が広告宣伝費を増やすケースも増えています。テレビCMやYouTube広告などを通じて学生への認知度を高めようとする動きです。確かに、一般消費者と接点の少ないBtoB企業は、そもそも知られていないことが採用の妨げになっている場合があります。しかし、CMで知名度が上がったとしても、企業の根本的な魅力が変わらなければ「本当に欲しい人材」が応募してくるかと言えば疑問が残ります。
 CMを打てば「認知度が上がった」という数字は出せます。しかし、それはあくまで表面的なものであり、企業の競争力や働きやすさといった本質が変わらない限り、根本的な解決にはつながりません。経営者が目先の数字を追ってしまいがちな典型例だと感じます。

求められる競争力のある組織づくり

 本質的に重要なのは、業界の中で確かな競争力を持つ組織を作り、社員が働きやすい環境と魅力的な報酬を提供できるかどうかです。これができれば自然と人材が集まってきますし、若手も定着しやすくなります。

出所)中小企業庁

 また、私はそもそも新卒一括採用そのものが時代遅れではないかと考えている立場です。例えば金融機関なら、デリバティブを扱う部署には大学院でファイナンスを学んだ人を採用した方が合理的ですし、地方営業なら地元をよく知る人材を採用した方が強みになります。

私の考え
 雇用の流動性を高めるための施策としては、新卒一括採用ではなく中途採用がもっと増えていく必要があると思っています。

日本での解雇規制緩和に関する一考察

 しかし、部門ごとに採用権を与えると管理が大変になるため、人事部が一括で採用した方が安上がりだという理由で、今の制度を続けている企業が多いのが実情です。

転勤制度の見直し

 さらに最近は離職率を下げる目的で「希望しない地域への転勤を廃止する」という企業も出てきています。共働き世帯が増え、転勤に伴う負担が大きくなっている今の時代には、合理的な判断だと思います。
 ただし、地方や人口の少ない地域に行きたがる人は多くないため、転勤を廃止すると「誰も行きたがらない支社」が生まれる可能性もあります。これは新卒一括採用が都市部に偏っていることとも深く関係しており、地域別採用を拡大するなど抜本的な見直しが必要になるでしょう。

長期的視点の必要性

 定年延長やCM強化といった表面的な対策だけでは根本的な解決にはつながらず、むしろ将来的な競争力の低下を招く可能性すらあります。企業が長期的な視点に立ち、本質的な組織づくりに取り組めるかどうかが今後の鍵となるでしょう。引き続きよろしくお願いいたします。


ご参考(雇用記事のまとめ)

■ 解雇規制緩和と日本人の労働、海外駐在員の現状(2024/9/6)
■ 役職定年の年齢引き上げに見る日本経済の課題(2024/11/16)
■ Z世代の解雇データに見る世代間のギャップ(2025/8/16)

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