メローニ政権の成果とイタリア国債の変化
イタリア国債について、アップデートします。日本では高市政権になって以降、日本国債の利回りが上昇している一方で、イタリアはメローニ首相の就任後3年間で、むしろ国債利回りが大きく低下しています。この記事ではこの差がどこから来ているのか、イタリアの足元の数字と合わせて整理します。
イタリア10年国債利回りとドイツとの差
最初に、イタリア国債の利回りを簡単に見ておきます。2025年12月10日時点で、イタリアの10年国債利回りは3.547%、ドイツの10年国債利回りは2.851%で、両者の差は0.7%程度になっています。
ユーロ圏の国の信用力を見るときは、基本的にドイツ国債との利回り差(スプレッド)を見るのが一般的です。ユーロ圏では、ドイツが最も信用力が高いと市場が見なしているため、ドイツとの差が縮むほど「その国の信用力が改善した」と解釈されやすいからです。
2023年は、イタリアの10年国債利回りが4%を超えていて、ドイツとの差も1.5%程度ありました。それが足元で0.7%まで縮んでいるということは、少なくとも債券市場は「イタリアの信用力は改善した」と判断している、という見方が成り立ちます。
フランスとイタリアの逆転
2023年当時は、ユーロ圏ではドイツの信用力が最も高く、次にフランスやベルギーなどが「セミコア」とされ、そして利回りが高いのがイタリア、スペイン、ギリシャといった、英語で言うところのperipheral countries(周辺国)だと説明しました。この「周辺国」という言葉は、ヨーロッパでは昔から少し見下したニュアンスを含んで使われることもあり、正直なところ差別的な匂いもある表現です。それでも市場の世界では長く使われてきました。ただ、ここ2年ほどで、利回りの景色が大きく変わっています。
2025年12月10日時点で、フランスの10年国債利回りは3.568%。ドイツとフランスの差は0.72%で、イタリアよりもフランスの利回りが高い状態になっています。さらにスペインを見ると、10年国債利回りは3.312%で、ドイツとの差は0.46%にとどまっており、フランスを大きく下回っています。
つまり、かつて「周辺国」と呼ばれ、信用力が低いと見られてきたイタリアやスペインの信用状況が改善する一方で、フランスは悪化しており、立場が入れ替わるような変化が起きているということです。
イタリア国債の評価の理由は財政赤字の改善
なぜイタリア国債の利回りが低下し、信用力が改善したように見えるのでしょうか。結論から言うと、財政赤字が改善しているからです。
コロナの影響が最も強かった2020年、イタリアの財政赤字はGDP比で9.4%まで拡大しました。そこから緩やかに改善が進み、2024年には3.5%程度、2025年にはさらに3%に近づく方向で改善してきているとされています。EUには財政赤字をGDP比3%以内に抑えるべきだというルールがあり、イタリアは長くその達成が難しい国だと思われてきました。それが「もうすぐ目標に届きそうだ」というところまで来た。この変化を市場が評価し、ドイツとの利回り差が縮んだという流れです。
フランスとの比較
対照的にフランスは高水準の財政赤字が続いており、2024年時点でGDP比5.8%程度とされ、3%に向けてどう減らしていくのか、その道筋が見えにくい状況だと言われています。ここが、フランスのスプレッドが広がり、相対的に信用力が悪化して見える大きな理由になっています。
メローニ政権の現実路線
メローニ首相は、就任前は積極財政的な発言も多く、EUに対しても対立的だと言われてきました。ところが就任後は、必要な投資は行いながらも、財政改善にも前向きに取り組むという、かなり現実的な路線で対応してきました。財政改善というと、いわゆる緊縮で経済成長が鈍化しがちですが、メローニ政権は必要なところには投資を行い、インフレ補助金などで消費を下支えする政策も続けてきました。その結果、極端に高い成長率ではないものの、ユーロ圏の中では比較的良好な成長率を維持しています。
GDP成長率で振り返ると、2023年がプラス0.7%、2024年もプラス0.7%、2025年はプラス0.6%程度の予想とされています。ウクライナ戦争に伴うロシア産エネルギー問題などもあり、ドイツがマイナス成長に沈む局面もあった中で、イタリアは比較的うまく乗り切ったと言えると思います。ここはメローニ政権の政策が、少なくとも市場の目には「バランスが取れていた」と映った部分でしょう。
EUとの関係改善と移民対応
メローニ政権のバランスの良さは、EUとの関係にも表れています。就任前はEUに対して敵対的な言動もありましたが、首相になってからはEUとも良好な関係を構築し、補助金を受け取り続けることで経済を支える面もありました。
不法移民の問題でも、EUと連携して対応してきたと言われています。2024年以降、イタリアでは不法移民が激減しているという話がありますが、EUを通じてチュニジアなどに資金を提供し、斡旋業者の取り締まりを強化してきたといった背景があるとされています。こうした点は支持層の期待に応えたとも言えますし、政治的な安定感の演出にもつながったはずです。
失業率の改善と格付け引き上げ
経済面の結果として、イタリアの失業率は改善が続いています。2025年12月に発表された10月の失業率は6.0%で、2007年以来の低水準とされています。欧州債務危機の頃には13%近くまで上がった時期もありましたから、これは大きな改善です。
こうした経済状況の改善と、メローニ政権が継続して財政改善に取り組む姿勢が評価され、格付け会社がイタリア国債の格付けを引き上げる動きも出てきています。結果として、イタリア国債の利回りは低下している、という流れです。
個人向け国債の復活と人気
もう一つ、イタリア国内の動きとして興味深いのが、個人向け国債が人気になっている点です。ユーロ圏では2010年代にマイナス金利が長く続き、その時代は個人向け国債の発行があまり行われませんでした。しかし金利が正常化してきてから発行を再開し、資金を集めています。
10月に行われた発行では、2兆円以上の資金を集めたという話があります。内容としては7年の変動金利で、保有期間が長くなるほど利率が上がっていくタイプになっており、満期まで保有すると額面に対して0.8%が支払われる仕組みも付いています。
イタリアは他の欧州諸国に比べて社会保障制度がそこまで手厚いとは言えず、個人で資産形成を意識する人が多いとも言われています。そうした需要が個人向け国債に向かい、需給面からイタリア国債の利回り低下を一定程度後押ししている、という見方は十分に成り立つと思います。
イタリア料理の無形文化遺産登録
最近のイタリア関連ニュースとして、イタリア料理がユネスコの無形文化遺産に登録されたという話がありました。和食が2013年に登録されたことはご存知の方も多いと思いますが、今回の発表を受けてメローニ首相も喜びのコメントを出しています。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は10日、インドの首都ニューデリーで開催した政府間委員会で、イタリア料理を「無形文化遺産」に登録することを決めた。 イタリアは2023年から登録を目指しており、今回の決定を受けて観光業の活性化に期待している。
私がイタリア料理で一番好きなのは、アーリオ・オーリオです。アーリオはニンニク、オーリオはオリーブオイルの意味で、パスタをニンニクとオリーブオイルで仕上げる、最もシンプルで完成度の高い料理だと思っています。唐辛子を入れると、いわゆるペペロンチーノになりますが、ペペロンチーノも広い意味ではアーリオ・オーリオの一種だという位置づけです。

出所)日本パスタ協会
初めてイタリアに行ったとき、ニンニクとオリーブオイルだけでここまで美味しくなるのかと驚いた記憶があります。ローマのフォロ・ロマーノの近くで食べたのですが、また機会があれば、イタリアでアーリオ・オーリオを食べたいと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
ご参考
個人的には、メローニ首相が日本でどこを訪れるかにも注目しています。政治とマーケットの関係を考える上で彼女は示唆的な存在です。メローニ首相は、就任前は財政拡張路線と言われてきた政治家でしたが、首相になってからの3年間で財政赤字を大きく改善し、国債利回りは大きく低下しました。高市首相も、そのあたりの現実はよく理解しているはずです。
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