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米国株の下落要因の整理と今後の見通し


 最近、アメリカの株式市場が調整局面に入り、主要な株価指数であるS&P500は2月19日の高値から7.8%下落し、NASDAQは同じ期間に11.6%下落しました。まだ大きな下げではないという見方もありますが、今後の展開を気にする投資家も多いのではないでしょうか。
 私のもとにも多くの質問が寄せられているため、この記事ではアメリカ株式市場の現状について解説します。

株価下落の背景にある複数の要因

 アメリカの株式市場が下落している要因は1つではなく、複数の要因が絡み合っています。その中でも特に注目されるのが、トランプ政権による関税政策です。

関税政策による市場への影響

 2025年3月9日時点で、関税に関する新しい情報が次々と出ており、状況は日々変化しています。
 
現在の状況を整理すると、2月から中国に対する追加関税10%がスタートし、3月4日からはカナダとメキシコの製品に対して25%の関税が適用されました。ただし、カナダのエネルギーや資源関連製品については関税率が10%に引き下げられています。さらに3月6日には、USMCAを満たす製品や自動車について、関税の発動を4月2日まで延期することが決定されました。

USMCAは第1次トランプ政権下で誕生した自由貿易協定(FTA)であり、前身の北米自由貿易協定(NAFTA)に比べると自動車や鉄鋼の分野で原産地規則がかなり厳格化されているため、原産地規則を達成することができずに利用できていない産品も多い。

ジェトロ

 しかし、4月2日以降は再び関税が引き上げられる可能性があり、交渉も不透明なままです。

 これらの関税が本格的に適用されると、アメリカ国内では輸入品の価格が上昇し、それによって消費が抑えられ、景気に悪影響を与えると予想されます。

経済成長率への影響

 関税の影響を考慮しない場合、アメリカの経済成長率は安定した伸びを見込まれていました。FRBが昨年12月に発表した見通しでは、2025年の実質GDP成長率は+2.1%、2026年は+2.0%とされていました。また、IMFが1月に発表した予測では、2025年は+2.8%、2026年は+2.7%とやや高めの成長率が想定されていました。

 しかし、現在予定されている関税がすべて発動された場合、投資銀行やエコノミストの分析によると、2025年の成長率は+1.0~1.5%程度に鈍化する可能性が高いと考えられています。これは、物価の上昇による消費の落ち込みや、企業の設備投資の抑制など、さまざまな要因を考慮した予測ですが、あくまで推計の域を出ません。それでも、景気後退には至らないものの、成長率の大幅な低下は避けられないとの見方が一般的です。

インフレの高止まりと今後の見通し

 関税の影響と並んで懸念されているのが、インフレの高止まりです。特に、サービスや家賃など、一度上昇すると下がりにくいとされる項目の価格が引き続き高い水準を維持しています。2022年ごろと比べればインフレは落ち着いたものの、FRBが目指している2%の目標には到達せず、現在は3%前後で推移する見通しとなっています。

特に、サービス価格の前月比上昇が、これまでのレンジを超えてきたことが注目されています。インフレが加速する兆しを見せたことで、市場ではインフレへの警戒感が高まっています。

2月12日発表の米消費者物価指数の詳細解説

 この状況に関税の影響が加われば、さらなるインフレ圧力がかかる可能性があり、市場の不安要素の一つとなっています。インフレに関する重要な指標として、3月12日に消費者物価指数(CPI)が発表される予定であり、その結果によって市場の反応も変わるかもしれません。

政府の歳出削減と景気への影響

 もう一つの重要な要因として、トランプ政権による財政支出の削減が挙げられます。政府の無駄遣いを減らすこと自体は健全な政策ですが、短期的には公務員の解雇などによる失業者の増加や、政府支出の減少による景気の冷え込みが懸念されます。
 トランプ政権としては、長期的な視点でアメリカ経済の立て直しを図るために必要な措置と考えており、ベッセント財務長官も「痛みを伴うのは当然」としながらも、債務削減を進める方針を明確にしています。この政策による影響はしばらく続くと考えられるため、今後の景気動向を見極めるうえでも注視すべき点となります。

ハイテク株の下落とAI市場の変化

 株式市場の調整の中で、特にハイテク株の下落が目立っています。

テスラ

 その中でも特に大きく値を下げているのがテスラで、昨年12月からの下落率は45%に達しています。これは、電気自動車市場への期待が後退したことに加え、イーロン・マスク氏の言動に対する批判や、テスラの販売不振などが影響していると考えられます。

NVIDIA

 また、AI関連の代表的な銘柄であるNVIDIAも、2月27日の決算発表後に株価が下落しました。売上高は前年同期比78%増の393億ドルと過去最高を記録しましたが、次の四半期の売上予想が市場の期待に届かず、失望売りが出ました。
 1月には、DeepSeekの登場により、AI市場の主役が変わる可能性が指摘されており、これまでAI関連銘柄として高評価を受けていた企業の株価が調整局面に入る可能性があると予想されていました。今後、AI市場の主役がどこに移るのかが明確になるまで、ハイテク株の調整が続くかもしれません。

「もし最先端のチップを使わなくても高性能なAIが開発できるなら、NVIDIAの最先端チップは不要になるのではないか」という懸念が生じ、NVIDIAの株価が大幅に下落したのです。

DeepSeekショック解説とAI市場の今後の見通し

今後の見通し

 これらの要因を総合すると、アメリカの株式市場は当面の間、低迷が続く可能性が高いと考えられます。長期的な視点では、資産バブルの継続や富の格差拡大が問題となっていますが、現時点ではそれがすぐに崩壊する兆しは見られません。
 トランプ政権としても、株価の大幅な下落は望んでいないと考えられるため、どこかのタイミングで経済を下支えする政策が打ち出される可能性があります。今後の市場の動向を注視しながら、慎重に対応していくことが求められそうです。引き続きよろしくお願いいたします。


ご参考

為替相場については、プロでも予測が非常に難しい領域です。為替リスクをどう捉えるか迷っている間に、時間だけが過ぎてしまう可能性が高いです。

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