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日本の相続税の設計思想「なぜ制度と実感はズレるのか」

 中山美穂氏の相続に関する報道をきっかけに、相続税というテーマへの関心が高まっています。遺産の規模や相続に関する判断が取り上げられ、なぜ多額の財産があるにもかかわらず相続を放棄するのかと疑問に感じた方も多いのではないでしょうか。
 一般的に、相続は「財産を受け継ぐ出来事」として捉えられます。しかし、今回の事例が示しているのは、必ずしもそう単純ではないという現実です。多額の財産があっても、それをそのまま受け取ることが合理的とは限らない。この点に、多くの人が直感的な違和感を覚えたはずです。では、このような出来事は特殊なケースなのでしょうか。それとも、相続税という制度そのものに理由があるのでしょうか。

出所)財務省

 相続税は「わかりにくい税」として語られることが少なくありません。しかし、そのわかりにくさの性質は、想像されるものとは少し異なります。税制の複雑さという点で言えば、消費税の方がはるかに難解です。消費税は、法令や通達、さらにはインボイス制度に代表される実務運用まで含めて理解しなければならず、仕組みの面でのハードルが非常に高い税です。
 それに対して、相続税の基本構造自体は、基礎控除や累進税率といった形で比較的整理されています。計算の枠組みだけを見れば、理解不能なほど複雑というわけではありません。

 それにもかかわらず、多くの人が相続税に強い違和感を抱くのはなぜなのでしょうか。

 ここで問題となるのは、仕組みの複雑さではなく、「意味のわかりにくさ」です。なぜ、生前に所得税や住民税、消費税などを支払って形成された財産に対して、死後に改めて課税が行われるのか。なぜ、財産を受け取るという出来事が、大きな負担を伴うことになるのか。こうした問いに対して、制度としての説明と、人々が抱く実感との間には、ズレが存在しています。そして、このズレこそが、相続税をめぐる議論を複雑にし、ときに感情的な対立を生む要因となっています。

ご参考(消費税の記事のまとめ)

■ 基礎控除の見直しに関する一考察(103万円の壁を通じて)
■ 消費税と輸出免税と還付金
■ 食料品消費税ゼロの制度設計


 この記事では、この「制度と実感のズレ」に焦点を当て、相続税とは何かという基本から出発しながら、その違和感の正体を一つずつ整理します。国税庁や財務省が示している制度の説明に立ち返りつつ、相続税という制度を立体的に捉え直していきます。

相続税とは何か、何に対して課される税なのか

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