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プラチナNISAに見る毎月分配型投信について


 金融庁が新たに高齢者向けのNISA、「プラチナNISA」の創設を検討しているという報道が出ており、少し話題になっています。特に、これまでのNISAでは対象になっていなかった「毎月分配型の投資信託」が対象に含まれるかもしれないということで、様々な意見が出ている状況です。

出所)金融庁

 私はこれまでも「毎月分配型の投資信託」について、否定的な立場を取ってきました。この毎月分配型の投信は、金融機関がかつて積極的に販売してきたもので、今でも一定数は売られていますが、あまり評価されていない商品です。
 そのような毎月分配型の投信が、なぜ今、高齢者向けNISAの対象になろうとしているのか。「高齢者が金融機関に食い物にされるだけではないのか」、そうした不安の声も聞こえてきます。

毎月分配型投信

 私はこれまでも毎月分配型投信に対して否定的な立場を取ってきましたが、これは金融庁も同じです。金融庁も以前から、「毎月分配型の投資信託は、健全な資産形成に資するものではない」と指摘してきました。

毎月分配型投信の歴史

 かつて、売れ筋ランキングの上位がほとんど毎月分配型投信で占められていた時期もあり、なかには5兆円を超える資金を集めたファンドもありました。しかし、金融庁の指摘や、専門家たちが警鐘を鳴らしたことなどの影響もあり、徐々に市場シェアを失っていきます。
 
これに加え、2010年代の世界的な低金利時代も大きな影響を与えました。基本的に、毎月分配型投信の運用スタイルは「高金利の国の国債などに投資し、そこから得られる利息を毎月分配する」という仕組みです。

タコ足配当

 しかし、世界的に高金利債権が少なくなり、利息だけで高い分配金を支払うことが難しくなりました。その結果、「分配している」と言いながら、実際には元本を取り崩して投資家に返しているだけ、というケースも増えました。人気が低迷していったのは、こうした背景によるものです。
 「高い分配金」をアピールし勧誘しておきながら、実際には預かった元本を分配金として返している、これは「タコ足配当」と呼ばれます。タコが自分の足を食べる様子に例えたものですが、こうした実態が広く指摘されるようになったのです。

資産形成の観点

 また、利息などの利益を分配するのではなく、再投資していくほうが資産形成には有利だという考え方も広がっています。加えて、毎月分配型の投信は、分配金を出すために手数料が高くなりがちであり、その点からも「本当に投資家の資産形成に資する商品なのか」と疑問が呈されてきました。つまり、言葉巧みに集めた資金で、金融機関が手数料を稼ぐための設計になっているのではないか、そうした指摘が続いてきたのです。

若者と高齢者の比較

 こうした問題を把握していたはずの金融庁が、なぜ高齢者向けNISAに毎月分配型投信を対象にしようとしているのでしょうか。おそらく、説明としては「高齢者の経済状況を考慮した」ということになるでしょう。
 若者の場合、将来に向けて資産形成していく時期のため、投資で得た利益も分配せず、再投資して資産を増やしていく方が適しているでしょう。だからこそ、長期投資を前提とする従来のNISAでは、毎月分配型投信はそぐわないとされてきました。

 しかし高齢者は、若者とは資産運用ニーズが異なります。収入が限られる一方で、もう将来に向けた資産形成の時期ではありません。余剰資金を運用しながら、一部は消費に回して生活していく。そうしたニーズが想定されます。定期的に決まった金額を生活資金として引き出す必要がある場合、運用しながら定期的に分配金が得られる仕組みは、確かに合理的な側面もあります。
 これが、高齢者向けNISAにおいて毎月分配型投信が対象にされようとしている背景だと考えられます。

投資の始まりと終わり

 ここで思うのは、これまでの資産運用の話題が、基本的に投資を始める時のことばかりだった、という点です。「毎月一定額を積み立てましょう」、「これが資産形成に一番良いやり方です」といった話はよく聞きます。しかし、いざ資産を積み上げた後、「どう取り崩していくか」という議論はほとんどされてきませんでした。
 
これは、金融機関の営業マンやプランナーの多くが、「商品を買ってもらう」ことが中心のビジネスモデルになっていることも影響しているでしょう。
 投資を始めるだけでなく、どう売るか、どう取り崩していくかが、人生設計において極めて重要なテーマです。そういう意味では、本当に高齢者ニーズに合った金融商品は、これまでほとんど存在してこなかったのかもしれません。もしかしたら、毎月分配型投信がそのニーズにある程度合うのではないか、そうした見方もできるわけです。

毎月分配型投信に対する見解

 毎月分配型投信が素晴らしい商品で、積極的に利用されるべきだと言いたいわけではありません。
 毎月分配型投信の設計は、「見せかけの利益」をぶら下げて資金を集めることを狙ったものでもあり、投資家が損益の認識を誤るリスクもあります。真に「取り崩し」を想定して作られた商品とは言いがたいのが現実です。

 高齢者に対して積極的に販売されれば、トラブルも増えるでしょう。

貯蓄から投資へ

 政府や金融庁は、「貯蓄から投資へ」という流れを進めたいと考えていますが、それはつまり、金融機関にリスクを取らせるのではなく、個人投資家にリスクを取らせ、経済成長につなげたいということです。そのためには、日本で多くの金融資産を保有している高齢者層のお金を投資にシフトさせたい、そういう思惑も背景にはあります。

個人投資家はいくらやられても、国は見捨てることができます。そのため、個人投資家にリスクを取らせようとしているわけです。「貯蓄から投資へ」と言われている背景には、こうした思惑が見え隠れしているということを忘れてはいけません。

投資初心者への質問と回答、誤解の解消

 だからこそ、「高齢者向けの金融商品とは何か」という議論が、これから活発化していくことを期待したいと思っています。

最後に

 人それぞれではありますが、私は「高齢者は無理に投資しなくてもいい」と思っています。国が投資を押し付けるような流れにも、疑問を感じています。それでも、もし進めるのであれば、もう少し適切な商品設計が必要だと考えています。


ご参考

投資へのアプローチ
 投資に関しては、本当にいろんな考え方があり、リスク許容度があります。ポートフォリオもみんな違います。これが正解というものがあるわけではありません。

NISAに見る投資対象と投資の本質について

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