楽々古事記【20】夜に駆ける
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八田間大室(やたまのおおむろや)
「コッチ来い」
スサノオは、連れ帰ったオオナムヂを自分が過ごしている八田間大室へと招き入れました。
「(すっげぇ、でけぇな)」
「おいッ」
「はい」
「オレの頭の虱(しらみ)を取っちゃらんやか」
「わかりました」
オオナムヂが虱を取ろうとしてスサノオの頭を見ると、
「(虱やなくて百足(むかで)やん…)」
と、ウジャウジャと百足が這いずり回っていました。
それを見たスセリビメが小声で、
「この椋の実(むくのみ)を噛んでプチプチ鳴らして、この赤土を口に含んで吐き出してみてん。パパは百足を噛み殺しよるっち思うはずやけん」
と言って、そっと手渡してきました。
オオナムヂは言われた通りに実行すると、
「(おお、噛み殺しよるんか、可愛いヤツやのぉ)」
と騙されながらも気持ちよくなって、グーグーと寝息を立てて眠ってしまいました。
ガリバー
「(今のうちに逃げよう)」
「(うん)」
オオナムヂとスセリビメはアイコンタクトで会話すると、スサノオから…、いや、根の国から脱出することにしました。
まず、オオナムヂはスサノオの長い髪を、柱という柱に括りつけてガリバー状態にしました。
そして逃げる前に、
・生太刀(いくたち)
・生弓矢(いくゆみや)
・天之詞琴(あめののりごと)
を持ち出し、スセリビメと一緒に宮殿を出ました。
【天之詞琴】あめののりごと
・天之沼琴(あめのぬごと)とも。
神さまのお告げ(託宣や神託)を聞く道具として用います。
宮殿を出たときも、その出入り口を大きな岩で塞ぎ、念には念を入れたのですが…
ポロンポロン、ジャラーン‼
なんと…、暗くて木の枝がよく見えず、天之詞琴を枝に引っかけてしまい、大きな音を鳴らしてしまったではありませんか。
「しまった! 気づかれるッ!」
その天之詞琴の音は、大地を揺らす雷鳴の如く響き渡り、深い眠りの中にいるスサノオを揺り起こしてしまいました。
「な、なんか今の音は? う、動けん。柱に髪が…」
瞬時に状況を把握したスサノオは、
「あんのヤロォー、ただじゃおかんぞ!」
と、どえらい剣幕で怒り狂い、柱ごと薙ぎ倒して二人のあとを追いました。
黄泉比良坂(よもつひらさか)
ズシン、ズシン、ズシン
「パパだわ、この足音…」
「急ごう!」
「はいッ」
二人は黄泉比良坂の暗い中を、地上めがけて必死に駆けていきました。
獅子吼(ししく)
【獅子吼】ししく
仏教用語で、正義や真理を獅子が吠えるように隅々に響き渡らせること。
※古事記には出てこない言葉です。
「逃げ切れたやか」
「そうみたいね」
二人が地上付近まで来ると、暗闇の奥の方からスサノオの声が聞こえてきました。
「おーい聞こえるかぁ。いいかオオナムヂ…。お前が持っていった生太刀と生弓矢で、お前を苦しめた八十神兄弟を、山や河に追い詰めて全員やっつてけてしまえ!。そして我が娘スセリビメを正妻とし、大国主神(オオクニヌシ)と名乗って国を造り、出雲の地に行って岩盤を土台にして太い宮柱を立て、天に届くほどの千木(ちぎ)を構えたデカい宮殿を建てるんだぞ。いいか、わかったな、このクソ野郎ーッ!」
遠くに聞こえたその声は、獅子吼の如く響き渡りました。
「スサノオさま…」
「パパ…」
二人はスサノオの言葉を胸にシッカリと刻み、暗い黄泉比良坂を駆け抜けて、地上の世界である葦原中国に辿り着きました。
【黄泉比良坂???】
黄泉比良坂って、黄泉の国と地上の間にあるんじゃなかったの? と思いますよね。でもどうやら、根の国にも黄泉比良坂があるみたいなんです。この二つの黄泉比良坂は繋がっているのか? はたまた根の国に黄泉の世界があるのか? ホントに謎です。スサノオが根の国の母ちゃんに会いたいって言ってたので、う~ん…。ワカチコです。
【千木(ちぎ)】
千木については天孫降臨のときにでも説明しますね。
図① 振り返り天地図

図② 今回の図

図③ スサノオ系図

図④ オオナムヂ系図

スサノオの引退
スサノオはこれにて引退です。
スサノオといえば、大泣きして父イザナキを困らせて、天つ神の地位を剥奪され、姉アマテラスを困らせては、高天原を追い出されてしまいました。
自業自得とはいえ、散々な目に遭った神様です。
しかし、地上の葦原中国で八俣大蛇を退治するというヒーローになりました。
その後、どこで何をしているのかが分かりませんでしたが、根の国にいたようですね。
今現在も、根之堅洲国の大王としていらっしゃるようです。
でも、いつの間に根の国に行ったのでしょうか?
よほど母ちゃんに会いたかったのかもしれませんね。

今回はこれにて終了です。
ではでは。。。
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