文豪ワロタ/進士素丸『文豪どうかしてる逸話集』
先日、図書館で『文豪どうかしてる逸話集』というタイトルの本が目に留まり、借りて読んだ。
少し前に、夏目漱石の『こころ』を読んでみたら案外すらすらと読めたこと、その心理描写にも共感できたことで、以前は遠くに感じていた文豪に多少の親しみを感じるようになっていたからだ。
太宰治や芥川龍之介、中原中也、宮沢賢治、川端康成といった有名な文豪たち27名の生前のおもしろエピソードが軽やかなトーンで楽しく紹介されていて、予備知識がほぼない状態でも楽しめた。やっぱり文豪と呼ばれるだけあって破天荒、クレイジーな人ばっかりだな…と思った。
素晴らしい作品を世に残した人たちで、すでに亡くなっているから笑い話になっているが、こんな人が身近にいたらたまったもんじゃないだろうな、とも思った。笑
「文豪」というと部屋や別荘にこもって黙々と執筆する"孤独"なイメージしかなかったけれど、思った以上に同時代の文豪同士の交流があったことも知った。
やはり人間の心理を描く天才たち…人との関わりが大好きだったんだろうな。引きこもってちゃ人間のリアルな話なんて書けないよね。
特に笑えたところを、感想と共に書いておく。
(原文ママのところもあるが、一部要約して引用。面白かったからこの本買おうかな)
芥川龍之介が大好きすぎる太宰治。ひたすら龍之介の名前を書き連ねた恥ずかしいノートを、後年公開される。
KADOKAWA、p.22
写真も載ってたけど特に「芥」の字を何回も書いてた。可愛い。
肺結核の療養のために地元に帰ってきた正岡子規は、親友の夏目漱石の家に転がり込み、そのまま2ヶ月近くも居候し、毎日のようにうなぎをおごらせ続けた。
わろた。夏目漱石、優しいね。
借金することに慣れすぎて借金を「錬金術」と呼んでいた内田百閒。
わろた。錬金術じゃないです、ただの借金です。笑
谷崎潤一郎、佐藤春夫に奥さんを譲渡するも、「やっぱり返して」と言い出す。(小田原事件)
絶縁状態になったが、9年後に和解、新聞に声明文まで掲載。(細君譲渡事件)
人騒がせすぎる。面白いけど。当時の新聞も載ってたけど、かなりのスペース使ってた。笑
揉めに揉めた直木三十五の悪ふざけ企画「文豪諸家価値調査表」。当時の作家に直木の独断と偏見で点数をつけていくというもので、谷崎潤一郎は「性欲96点」と書かれたり、田山花袋は「好きな女」という項目に「弟子」と書かれたりして、読者にはこれが大いにウケた。
当時の実際の一覧表も載ってた。項目が細かすぎて笑えた。ちなみに田山花袋の性欲は99点。w
なお、文藝春秋に掲載。現代に繋がる文春のゲスイズムの原点を感じてしみじみ。
【坂口安吾】の代表作
『不良少年とキリスト』(1949)
自殺した太宰治への届かないお説教。
太宰の自死を痛烈に批判しつつ「死ぬなんていつでもできる。いつでもできることを、偉そうにやってんじゃねぇ!」と溢れる太宰愛は隠し切れていない。
この説教は泣けるわ。それをまた作品にしちゃうところも作家ならではで素敵。いつか読みたい。
【檀一雄】の代表作
『小説 太宰治』(1949)
太宰治の死後に書かれた、太宰を中心とする多くの作家との交流を描いた作品。
「あくまで小説ですから」と言い張っているが、書かれている内容はほとんど事実。
こちらも同様。書くの、辛かっただろうな。でも書かない方がもっと辛くて、書かずにはいられなかったんだろうな…
【佐藤春夫】の代表作
『小説 永井荷風伝』(1960)
師と仰いだ永井荷風との交流や逸話、そして佐藤視点による永井荷風作品論。
この作品を読んだ評論家が荷風論について反論すると、「確かに私の解釈は空想にすぎないかもですけど、だからこそ『小説』って銘打ってるんですけど」と一蹴した。
さきほどの檀一雄のコメントでも思ったが、「小説」って便利だなと思ったw
ほぼ事実を書いても「あくまで小説ですから」
嘘を書いても「あくまで小説ですから」
どっちにも言えて、逃げられる。笑
本音を書いても「いえ、これは僕の本音ではなく、あくまで登場人物の心理を描いただけですから」
超かっこいい名台詞を書いても「僕は常日頃、こういうことを考えています」
便利すぎない?「小説」笑
エッセイだったら全部が「ノンフィクション、作者の発言」になるけど、同じ意見を言っていても、それが小説だったら「フィクション、あくまで登場人物の発言」になる。
そうだよね、小説家って「キャラクターに言わせる」脚本家、演出家みたいなもんだもんね。
私も小説書こうかな!と思えた。笑
そんな甘い世界じゃないのは、分かってる。
私は読むだけで精一杯、十分です。
次は夏目漱石の『吾輩は猫である』を読もうかと思ったが、図書館では文庫本が見つからず『夏目漱石全集』とかいう8cmくらいの分厚く年季を感じる古書の中に掲載されていた。『こころ』に比べてめちゃくちゃ長い上に漢字も多くてかなり本腰入れないと読めなさそうだったので、一旦棚に戻した。
