その仕事は届く
委託ドライバーの父親の台詞。
「仕事ってのは魂こめてやるんだ。
皆待ってるんだ。喜んでくれるんだ。
昔のこと考えてみろ。
荷物が一人一人の家にきちっと届けられるって奇跡だぞ。
俺たちは奇跡を起こしてるんだ」
「やっちゃんがそう言ってたんだよ。
俺たちは日本の物流を背負ってるんだって。
日本のこの国を回しているんだって。物流なくして国はなし、と。
(弁当を)いただきまーす」
その息子 電気会社に勤めていた腕のいい職人、
でも訳あって今は父と共にドライバーとして
働いている息子の台詞。
「やっちゃんやっちゃんってさ。やっちゃんは死んだろ。
弁当10分で食べて車で寝て一日200個配達して死んだじゃん。
50万もらってたころはよかったかもしんないよ。
それが半分になってそれでも弁当10分でさ、
身体壊して死んじゃったじゃん。
俺たちが回してるって、誰もオヤジのことあてにしてないよ」
映画『ラストマイル』からの台詞。
大手通販ショッピングサイトと物流業界、
その中と現場で働く人たちを描く人間ドラマでありながら
「ブラックフライデーに仕掛けられた爆弾?!」や
「自殺した社員の謎の真相」という
サスペンス色もミステリー色もありながらのエンタメ作品だ。
大好きで何度観たかわからない(し、いまだに観る)
『アンナチュラル』や『MIU404』と同じ世界線で
同じ登場人物も出演するというちょっとしたお祭り感もあり、
エンタメでありながら色濃く
「伝えたいこと」「問題提起」がされている作品である。
映画館には行けなかったのでずっと待っていて、
この夏終わりにAmazonプライムで配信されたのですぐに観て、唸った。
(この内容をアマプラでというのもなんか意味深というかおもしろいけど)
ある事件に巻き込まれるセンター長やチームマネージャー、
(この二人が一応の主人公なのだがただいい人には描かれないのも巧い)
上層部のお高くとまる人びと、振り回される下請けの運送会社の局長、
もっとも「現場」な中年の息子と老いた父の委託ドライバー、
そして荷物を楽しみにしている一般家庭の人びと、
それぞれの立場と構造を描き、伝えていて、でもエンタメで、巧い、すごい。
中でも冒頭に台詞を引用したドライバー父子が、わたしには、ぐっときた。
父は火野正平(遺作になるのかな)、息子は宇野祥平が演じているのだが、
この二人が、ほんとうに、よかった。
あちらこちらにめちゃくちゃに振り回される下請け運送会社局長役の
阿部サダヲもいつもの如く
「いっぱいいっぱいのおじさん」を好演していて
これもよかったのだけれど、
わたしには、この二人がとても印象深く、深く、気持ちに、刻まれた。
ということをなぜ今思い出したのだろう。
書こう書こうと夏終わりからしていたのだが、今朝がた、ふと。
すこしまえに読み終わった
ブレイディみかこの新刊『私労働小説 負債の重力にあらがって』を
思い出してのこともあるかもしれない。
2年前、パート1を読み終えたときにもここに書いた。
2となる本作はさらにキレが増していた。
キレキレを通り越して、伝えようとされている想いが怒りがやるせなさが、
でもみてみぬふりをしないという決意がばしばしに飛んできた痛いほどに。
あとがきまでばしばしだった、
あとがきという名の自己解説だった、すごい。
労働、仕事。はたらくこと。
自らの労力と時間ともてるすべを使い、
日々生きていくためのおあしにすること。
自分や自分のまわりにいるひとの文字通り
食べていくこと生きていくためのそれは
おあしにつながることでもあるのだが社会とも超絶繋がること。
その労働の仕組みや構造の中においていつだって一番しんどいのは、
目に見えないところで一番その仕組みを構造を支えているのは、
にもかかわらず陽があたらなかったり無理無体を強いられていたり、
搾取はされども報われることが少なかったりする
「現場」の皆であり人びと我々でもある。
その「現場」の中にも序列や階級のようなものが大なり小なりあったり、
群れの中の人間関係においてそういったものが
勝手に出来上がったり作られたり、
そこでまた目に見えたり見えなかったりする衝突やひずみが起こりもする。
ブレイディみかこはそのひずみをみてみぬふりをしない。
現場、地べたから、自身の経験から、ミクロからマクロへ、
そこからじゃないと見えてこないことを徹底して書く、
その声を聞くこと聞こうとすること、労働を、「仕事」を、人間を、書く。
なにかのエッセイではいつぞやの紅白歌合戦で歌われた
美輪明宏の『ヨイトマケの唄』(と、労働者の父親)と
中野重治の詩『歌』を併せて書いていた。
伝えたいことが拳と共に飛んでくるような気がした。
野木亜紀子もまた仕事、労働を描くことに力のあるひとだと思う。
『アンナチュラル』も『獣になれない私たち』も直球だったし、
『海に眠るダイヤモンド』の骨にもそれがあったと思った。
『アンナチュラル』4話『誰がために働く』はすごかった。
こんなセリフも言わせていた。
「イタリアの友達が言うには労働って罪なんだって、
皆は罪人で罪を償うために働く」
からの
「(あなたは)どうして働いているんですか?」
「ん~、生きるため?」
作品を主人公を象徴するような台詞も忘れがたい。
「絶望するくらいなら、うまいもん食って寝るかな」
仕事。生きること。生きていくこと。人が生きること。
いろんなことを考える。考えることをやめずにいようと思っている。
そして、わたしはわたしも自分の仕事をしてゆくするしているしてゆく。
皆、体、気持ち、大事にね大切にね、日々無理なくね。
冒頭の印象的な会話は、『ラストマイル』のkeyというか軸になる。
このやりとりからの、最後、二人が二人の「仕事」を通して、
その仕事が、大きく、筋に人々に関わる。これが、よかった。
誰かの仕事が、仕事は、きっと、絶対、
と、ぎゅっと思わされる信じられる気持ちになる。
だからね、
こんなこと言っても何にもならないし薄っぺらいし
うまく伝わらないかもだしその薄っぺらだけではダメだと自覚の上で、
いろんなことをちゃんと考えたり考えていき続けながら、
それでも言いたいし書きたい。
あなたは、あなたがあなたの仕事をしていることは、
あなたの仕事は、届く、届いている、誰かに、私に、そこに、
ぜったい、ちゃんと、とても。

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構成作家/ライター/エッセイスト
momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。
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