インディフィニト・ノート 35話
<前話までのあらすじ>
鶴居は過去に試合を台無しにしてしまった事を思い出しながら奥島の凄さを体感して、この男から勝利したいと思うようになる。黒崎も頭に血が上っている。そんな二人を嘲笑うかの如く、きっちりと利用して誤爆を成功させる奥島。西田はアイコンタクトで自分が何をすれば良いのか理解をして実行に移すべく黒崎をド派手な技で投げたのだった。
1話は<1~5P>こちらから
34話は<166~170>こちらから
35話<171~175P>
「この技の凄いのは、技を掛けている選手が両脚を開脚して尻もちをつくようにマットに落とす所なんです。しかも抱え上げている相手を自分の脚の間に投げるので見栄えも良いです!」
島谷が早口で力説している間にマットに背中から叩きつけられた黒崎。
あまりの痛さに、これ以上の追加攻撃は受け付けないとばかりに横に転がりながら場外の運動マットへエスケープする。この時点でタッチする相棒を失った鶴居。
「ファルコンアローが完璧に決まりました。黒崎は運動マットで身動きが取れない状態だ。奥島は気にせずにサードロープからコーナー最上段に向かってゆっくりと昇って行っている!」
初めてとは思えない島谷のプロレス実況振りに、ニヤつきながら試合の邪魔をしないように自軍のエプロンサイドへとリングアウトする西田。
「未だ目を覚まさない鶴居。このまま黙って技を受ける事しかできないのか。またどんな技で仕留めに来るのか、それもまた楽しみでありますっ」
徐々に自分の実況に酔い始めていた島谷。
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実況で一息ついた島谷は、周りを見渡してみると何処から持ってきたのか大人数分のパイプ椅子が並んでおり、全中戦争に参加している面子だと分かる。先ず後方に居たのが斑工業の五人だった。恐らくパイプ椅子も運動マットも彼らが置いた物だと気付く事ができた。
大方、気絶から目を覚ました時に、登場するタイミングを伺っていたのだろうと確信した。大人しく試合を見ているという事が何よりの証拠だった。
顔と高校は紐づいていたのだが自分が強くないと思う人物については名前を覚える必要は無いと判断していたので視覚した五人の名前は思い出せなかった。
次に実況している長机では右角に自分が居た状態で左側の手前より、暁海校の山里、奥に巨漢の山崎が居た事が分かった。細川に持たされたスポーツ飲料の銘柄だと分かる物を各々、手元に置いていて量は違うが飲んでいる事も分かった。
頭の中に記憶したデーターから必要な情報を検索する為に、名前を打ち込む。先ずは巨漢の山崎……。
柔道畑の男で単細胞な性格。次に山里……。プロレスおたくでデータ収集が趣味の柔術黒帯と出た。
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頭の中の情報を引き出すためのトリガーはキーボードを叩くような仕草ではなく、握り拳から人差し指を開いた状態の右手で右のこめかみを2回トントンする動作を繰り返す事で発動するのが定番だった。一度、キーボード風も試してみたものの。カタカタする音が頭に張り付いて必要な情報を正確に取り出すのに時間が掛かり過ぎる事が多かった。
以降、ずっと封印されている。逆に言えば右手の人差し指が真っすぐに伸ばせない状態になった時に過剰なストレスを感じる事は予想できた。なので喧嘩に巻き込まれたとしても慣れない左手を使うようにしている。殴るのは好きではないので防御か逃げるかの二択しか持っていないタイプだった。
武器を持つのも極端に嫌がっている。武器の扱いが慣れていない人間が奪われた時の悲惨さを中学時代に嫌という程、見てきたので怪我を増やす行為は愚か者だと考えてもいた。それを高校に入った時の作戦会議で偶然、話し
た際に実に合理的な考え方だと気に入られた所から不良チームに加わる事になった。
173
周りの状況を確かめると再びリングに視線を戻した島谷。
「さぁトップロープに昇ってコーナーポスト最上段で体の向きを鶴居の方へ向けた」
「私、山里と申します。この向きでは、ムーンサルトプレスの可能性は消えましたね!」
突然、机の下から別のスタンドマイクを机上に置いて解説に加わる山里。
この簡単すぎる自己紹介を受けて、とんでもない失態をしてた事に気付く島谷。
「スミマセン。興奮して自己紹介が遅れました。私、メイン実況の島谷と申しますっ」
「サブの解説を務めさせて頂きます。私、山里です。格闘技全般に詳しいです!」
2回も名前をアピールしてくる図々しさに内心バクバクしているがメインがサブに舐められてはカメラの向こうにいる御客に対しても不穏な空気にさせてしまうので自分の仕事に集中する。
「果たして、ここから何の空中殺法繰り出すのか。はたまたシンプルな技を披露するのか?」
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奥島は西田から貰ったハチマキを解いて後ろに放り投げた。
「山里さん。これは一体何を意味するんでしょうか?」
「そうですね。マスクマンであれば大技でも難なくこなしてしまうのでしょうが意外と神経質なタイプなのかもしれません。
それだけに高難易度な技が出て来る可能性が高まりましたねっ。特に個人的には鶴居の位置にも注目しています」
「成程、一つ一つの動作にちゃんと意味があるという事ですね!」
初めてコンビを組んだとは思えないトークのテンポ感が抜群に合っていると感じた山里と島谷。
「両腕を上げて両手を首の後方へ振りかぶると、ジャンプして鶴居へと高速で回転していくぅー」
「両膝を両手で抱えながら回る姿はまるで芸術を見ているようです」
山里は補足解説をしながら感動している。
「距離が遠いようにも感じるが決まるのか?」
「あの技では厳しい気もしますが……」
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35話<171~175P>
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