見出し画像

『AI時代、コードを書くより設計が大事』と言われても、いまいちピンと来ない理由

「これからのプログラマーには、コードを書くスキルではなく、設計やレビュー、計画といった、より高度なスキルが求められる」

「制作力より設計力が重要になります」

最近はこういう言葉をいたるところで耳にします。

しかし「意味がよくつかめない」と感じる人は多いようです。

私の生徒(プログラミング初心者)と話していても、そう感じている人は少なくありません。

「AIという新技術によって価値の移動が起きるのは分かる。うん、理屈では分かる。でも.....」といった、実感として腹に落ちていない状態でしょうか。

理由は2つあります。

一つは、「設計」とか「レビュー」とかいうことが、あまりにも抽象的すぎて意味が分かりづらいから。

もう一つは、多くの人にとって、「プログラマー/エンジニア」のイメージが、「コードを書く」という目に見えやすい具体的な行為にあるからです。

なので私は、次のような例え話を使って、このAI時代の変化を生徒に説明しています。

似た変化はすでに歴史の中で起きていた

かつて日本を含む先進国では、「ものづくり」が主力産業でした。

国内の工場で製品を大量生産し、売っていたのです。

しかし時代が進むと、その製造の役割を人件費の安い新興国に移していきます。

同じものを作れるなら、人件費が安い国に生産をシフトさせていくのはごく自然な経営判断です。

そして元の先進国側は「ものづくり」から手を引き、新しい領域にフォーカスしていきます。

「デザイン」、「ブランディング」、「企画」、「マーケティング」といった、知的資産や知的資源を創造する仕事です。

つまり、単なる「生産」から、「判断」、「企画」、「方向付け」といったより上位の階層への労働移動が起きたのです。

「実際に手を動かしてつくる」という工程の価値は下がる一方、「何をつくるべきか」、「どうつくるべきか」、「どう進めるべきか」を考える仕事の価値が上がりました。



プログラミングの世界でいま起きていることも、これとよく似ています。

AIが「コードの生成」という、製造業でいう「工場での生産作業」にあたる部分の多くを担えるようになりました。

その結果プログラマーの価値は、「コードを書く」ではなく、そこよりも上の階層である「計画」、「設計」、「レビュー」、「判断」というステージに移っているのです。

Apple社がしていることも同じ

もっと身近な例でいえばAppleです。

Appleの本社はアメリカにあります。

では、いま私たちの手元にあるiPhoneやMacBookも、アメリカの工場で作られているのでしょうか。

そんなことはありません。

日本や台湾の町工場が作った無数の部品を集め、人件費が安い国で組み立てています。

そして完成した製品は、アメリカ本社が企画したブランド戦略やマーケティング戦略のもと、世界中で販売されます。

つまり次のような形です。

• 企画・設計 → アメリカ
• 実際の組み立て → 第三国
• マーケティング・セールス → アメリカ

頭を使う仕事だけがアメリカにあり、身体を使う仕事は別の国が担当しています。

製造業で起きたこと、そしていまAIの登場で起きていることと似たような構図です。


ものづくりの空洞化がもたらしたもの

さて、製造業の歴史では揺り戻しもありました。

製造工程が海外へ流れた結果、先進国の工場で働いていた人たちの雇用は失われ、地域の産業が空洞化したのです。

人々の生活の不満は、当然政治にもつながっていきます。

アメリカでトランプ大統領が支持を集めた背景にも、こうした空洞化への不満があったと言われます。

「上流にシフトすればいい」という話は、社会全体で見るとそう単純なものではありません。

全員が、設計者やデザイナーになれるわけではないからです。

作る仕事を失った人が、そのまま上流の仕事へと移れるわけではないからです。



AIでも同じような揺り戻しが起きるのかどうか?

それはまだ分かりません。

初心者はどう受け止めればいいのか

ここまで読んで、「コードを書くスキルは無駄になるのか」と不安に感じるビギナーの人がいると思います。

私はそうは思いません。

理由はシンプルです。

設計やレビューといった上流の仕事の基礎は、結局「コードを書けること・読めること」にあるからです。

「AIが書いたコードが正しいのか?」

「このAIのコード、動くことは動くけど、実は潜在的な危険性はないか?」

こういったことを見抜くには、自分でコードを書いた経験が必ず必要です。

工場を一度も見たことがない人に、良い設計や品質判断ができないのと同じです。

これからプログラミングを学ぶ人がやるべきことも、そう大きくは変わりません。

まずは自分の手でコードを書きましょう。

自分でコードを書き、アプリを完成させてみましょう。

大事な点は、AIにすべての答えを書かせないことです。

時間もたくさんかかるでしょうし、エラーも出るでしょう。

そこはAIに聞いてもいいのです。

ただ「コードを書く」という部分は必ず体験しておいてください。

そしてある程度進めたら、全体像を理解するように意識しましょう。

またしても工場の例えですが、正しい「設計」や「レビュー」そして「判断」をするには、工場の生産プロセス全体が頭の中に入っていないと不可能だからです。

AIは部分的なコードは得意ですが、システム全体をどう設計するか、技術同士をどう組み合わせるかという判断は、依然として人間の理解に依存します。

そのため「全体像の理解」や「体系的な理解」の重要性は、AI時代になってむしろ高まっています。

1ヶ月ほど前にこれと近いテーマの記事を書いたので、あわせてご覧ください▼


よくある質問

コードを書かなくなるなら、プログラミングの勉強は不要ではないですか?

上流の仕事、つまり設計・レビュー・判断をするには、結局「コードの理解」が欠かせません。

工場を持たなくなった国が、それでも「ものづくりの知識」を捨てなかったのと同じです。

作る工程をAIに任せるからこそ、任せた結果が正しいかを判定する力の重要性は高まっています。

初心者は、いつから上流を意識すればいいですか?

最初から意識する必要はありません。

まずは基礎を体系的に学びましょう。

上流のスキルは、基礎の理解の上にしか積み上がりません。

「なぜそう動くのか」、「他の仕組みとどうつながっているのか」を理解していくうちに、自然と設計やレビューの視点が身についていきます。

Reactに関しては、つまずくポイントと乗り越え方を整理したガイドがあるので、学習を始める前に目を通してください▼


フロントエンドは何から、どのように学べばいいですか?

HTML・CSSからReact・TypeScript・Next.jsまで、どの順番でどう進むかをまとめた2026年版のロードマップがあります▼


Reactを体系的に理解したい方は、こちらの教材も参考にしてください▼

https://monotein.base.shop/p/00005




いいなと思ったら応援しよう!