見出し画像

画用紙に穴を開けながら学んだこと

油彩画を始めた当初、作品を見た方によく聞かれたのが「美大卒ですか?」という質問です。抽象油彩画を制作していたからかもしれません。

完全な独学とは言い切れませんが、美大には通ったことがありません。アートについては自ら各方面に足を運び、様々な角度から学んできました。絵を描くことに関して言えば、かつて取り組んでいたデザインプロジェクトに活かすため、基礎を身につけたいと思い、職場近くの教室で2年近くデッサンを学びました。そのときに言われた言葉が、今もふと頭に浮かびます。

「あなたはまだ見えていないわね。」

当時の私は、一か所ばかりに手を加えてしまい、他の部分や全体のバランスが見えていないことが多々ありました。描きやすい場所を見つけてはそこに逃げ込み、写実的に描き込もうとするあまり、周囲がおろそかになってしまうのです。当然バランスは崩れ、描き直しが続きます。意味もなく消しては描いてを繰り返し、厚い画用紙に穴を開けていました。

デッサンのモデルは次第に難易度を増していきます。奥行きの表現が難しい、葉の入り組んだポトスの鉢植えに始まり、透明感の重なりが厄介なフラスコへ。さらにデッサンの定番であるヴィーナス像、頭部が割れて穴の開いた石膏像、ボロボロに汚れた登山靴と続き、最終的には、くしゃくしゃに破れた茶色の紙袋が無造作に目の前に置かれました。

「これでもか」と言わんばかりの視覚的な試練でしたが、終盤になると私も意地になっていました。紙袋のシワを追いかけるうちにそれがいつしかクセになり、シワの迷路から抜け出す道筋を探ることに没頭していました。うまく言葉にできませんが、しんどくても夢中になっていたのです。

視覚と脳が連携して右手を動かすデッサンの作業は、今の私のバランス感覚を養うのに役立っていると思っています。ただ、完全独学のアーティストから「本当はそんなことをする必要はないんだけどね」と言われたこともあります。これは個人差もあることですし、何が正しいのかは分かりません。どの方法であれ、たどり着けるなら正しいのかもしれない。ただ少なくとも私の場合、独学だけでデッサンを続けていたら、視野が狭いまま、紙に穴を開け続け、全体像のバランスをつかめずにいたかもしれないと思っています。

左側:抽象油彩画 ベニヤ板右側:木炭画
一番上の画像左側:抽象油彩画 ボードにアートボード4枚を貼り付けて制作
右側:黒色鉛筆画
5作品ともひと昔前に制作しました。


いいなと思ったら応援しよう!