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第十四章:ミュージックホーンが導く、リベンジの小倉トースト

「このベッド好き! 離れたくない!」

手の中に収まる理想郷の心地よさに、身体が完全に溶け込んでいた。枕元のリモコンをパチリと押し、テレビをつける。僕は旅先で朝の地方放送テレビ番組を観るのを楽しみにしている。

地元ならではのローカルなニュース、ちょっと泥臭くて温かい街の空気感、独特のテンポ。その土地の「生のリアル」を感じる。


朝の温泉でキリッと身体を覚醒させ、湯上がりに用意されている一口サイズの乳酸菌飲料をグイッと一本。痒いところに手が届く憎いサービス。


「腹が減っては戦ができぬ」……と言いたいところだが、ここはあえて「武士は食わねど高楊枝」の精神を気取る。なぜなら、この朝一番の空腹をすべて捧げたい場所がある。身支度を整え、名鉄名古屋駅へ向かった。


パノラマカーの遺伝子を受け継ぐ、あの独特な「名鉄ミュージックホーン」が駅に鳴り響く。

今回の旅は特急には乗れない足枷をハメているはずなのだが、そこは名鉄さんの懐の深さ。一般車であれば、普通料金のまま、あの赤い特急電車に揺られて優雅に移動できてしまうのだ。

「なんて、ありがたい……!」

そんな私鉄王国の優しさに甘えながら、名古屋のど真ん中へと舞い戻った。


今日の第一目標。それは、天然酵母の食パン専門店『つばめパン&Milk 名駅店』だ。

実はこの店には、忘れられない苦い記憶がある。以前、娘とふたり旅をした際に「ちょっと寄ってみようか」と朝の8時過ぎにのんびり訪れたのだが、手渡された整理券に印字されていた案内時間は、なんと「12:00頃」!あまりの大人気っぷりに、その時は泣く泣くリベンジを誓って撤退したのだ。

だからこそ、朝一タイミングで突撃しなければ、遠方から来る旅人には到底辿り着けない聖域だ。


カウンターに滑り込み、念願の「小倉トースト」のモーニングを注文する。

運ばれてきた一皿を前に、思わず息を呑む。外はサクッ、中は極上のふんわり感を残した厚切りトースト。その上に、これでもかと美しく鎮座する艶やかな小倉あんと、溶け出すバター。パン好きのツボをこれでもかと的確に突いてくるそのクオリティは、数ある名古屋のモーニングの中でも完全に群を抜いている。

あぁ、幸せだ。この味に出会うために、僕は朝のベッドの温もりを振り切ってきたのだ。


大満足で席を立った僕は、ぬかりなくお土産用として食パンを「1斤」買い求めた。

僕の地元・大阪の言葉で言うところの「明日のパン」をハックした。

朝食でエネルギーは120%充填された。さあ、ここからローカル線の旅、そして旅の最大の目的地である、西尾市・盛華堂の「看板娘さん」の元へと一歩ずつ近づいていく。

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