第六章:夜明け前の高揚感と、ガルボ
す2025年12月16日、午前4時30分。
旅立ちの朝がやってきた。
寝室に響くスマホのアラーム。メロディ自体はいつもと同じはずなのに、この日ばかりは不思議と軽やかに耳に届く。
これから始まるのは、3連休を利用した1泊2日の旅。日常という足枷を外す、束の間の脱出劇だ。
昨夜のうちに用意しておいた身支度をパパッと整え、いざ参らん。
今回の最初のチェックポイントは、近鉄京都駅 6時00分発。
このデジタル切符を骨の髄まで楽しむための鉄則、それは「始発に近い列車でスタートすること」だ。そのストイックな早起きすら、すでに旅のエンターテインメントの一部なのである。
外はまだ、吸い込まれそうなほどに暗い。
静まり返った街の中、駅に向かって自転車を走らせる。冷たい風が顔を叩くが、不思議と寒さは感じない。
ふと、子供の頃の記憶が胸の奥からフラッシュバックした。
今は亡き親父が、よく海釣りに連れて行ってくれた時のことだ。
普段なら絶対にまだ寝ているような深い時間から、じわじわと世界の夜が明けていく。あの時、子供心に抱いた「世界が自分だけのものになったような」なんとも言えない強烈な高揚感――。
今、暗闇の中でペダルを漕いでいる自分の心境は、まさにあの頃のままであった。
駅前のコンビニに滑り込み、大人の遠足セットとして「カフェラテ」と「ガルボ」を買い込んでホームへ乗り込む。
ガタゴトと動き出す列車の振動を感じながら、僕は静かに息を吐いた。
予定通り、第一チェックポイントへと辿り着いたのだ。
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