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世界から注目されている日本――しかし日本人自身が一番信じていない。


「文明OSの再設計」>>日本と世界の次の50年   第3回

「日本は、素晴らしい国ですね」

こう、外国人に言われたとする。おそらくかなりの日本人は、少し照れながらこう答えるだろう。「いえ、そんなことは……」と。

ところが、世界はまったく違う見方をしている。


数字が語る、外から見た日本

アンホルト・イプソスが毎年発表する「国家ブランド指数(NBI:National Brands Index)」は、世界60カ国・各国500サンプルの市民調査をもとに、各国への信頼度・好感度・尊敬度を数値化するものだ。「輸出品の品質」、「政府のガバナンス」、「文化の発信力」、「人々のホスピタリティ」、「観光の魅力」、そして「移住・投資先としての魅力」という6つの軸で評価される。

日本のNBIランクの推移を見ると、2008年〜2015年は概ね5〜7位。ところが2017年頃から急上昇が始まり、2021年に3位、2022年に2位、そして2023年にはついに世界第1位に躍り出た。2025年の最新データでも日本は首位を維持している。2位ドイツ、3位カナダ、そして14位アメリカという顔ぶれの中で、だ。

この順位が示しているのは単なる「観光地人気」ではない。NBIの評価軸は、その国が「信頼できるパートナーか」「住みたい場所か」「尊敬できる文化を持っているか」を問うものだ。日本はその総合評価で、世界60カ国の市民から最も高い評価を得た国になった。


インバウンド4300万人・コンテンツ文化の浸透

数字の重みは、インバウンド統計にも現れている。

2003年に500万人だった訪日外客数は、2025年には推計4300万人規模に達した。20年あまりで約9倍という増加は、単なるブームではなく構造的な変化だ。

同時に見落とせないのが日本発ソフトコンテンツの浸透だ。アニメ・マンガ・ゲームを中心とする日本のソフトコンテンツは、かつて「サブカルチャー」と呼ばれていた。

だが今や、世界の指導者たちが公言して影響を受けた作品を語る時代になっている。
オバマ元大統領は「ナルト」、マクロン仏大統領は「ジブリ作品」、メローニ伊首相は「ルパン三世」——それぞれがひいきの日本のアニメキャラクターを挙げている。

こうしたソフトパワーの経済的帰結として、ソニー、任天堂など日本のコンテンツ・エンターテイメント産業(合計9社)の輸出額は、すでに鉄鋼や半導体といった製造業の主力品目を上回り始めている。
かつての「ものづくり」の国が、「ソフトパワー」の国としての実績をあげている。


百年企業の4割が日本に存在する理由

もう一つ、ほとんど知られていない統計がある。世界の百年企業の約41%、33,000社以上が日本に集中しているという事実だ(帝国データバンク調べ)。2位のアメリカ(24.4%)を大きく引き離し、日本の長寿企業は圧倒的に世界一だ。

578年(飛鳥時代)創業の「金剛組」は、四天王寺を建設した宮大工集団として今なお存続している。

飛鳥時代にまで遡る四天王寺

島津製作所は江戸時代の仏具屋から、明治維新を期に理化学器械製造へ参入。現在は最先端の医療・分析機器メーカーとして世界に名を馳せる。

古河グループは1875年の足尾銅山を起点に、古河鉱業→古河電工→富士電機→富士通(スパコン富岳など)へと技術の発展的な系譜を紡いでいる。

これらは単なる「長寿企業」や「老舗」の話ではない。時代ごとに自己変革を遂げながら存続してきた組織としての適応力と文化資本の持続力だ。
スタートアップ企業の数ではアメリカに圧倒的に及ばない日本だが、企業の「持続可能性」という尺度で見ると、まったく異なる様相が浮かび上がってくる。


外から見た輪郭と、内から見た自己像のギャップ

ここで立ち止まって考えてみたい。

冒頭に戻ろう。国家ブランド指数が世界1位という評価を聞いて、「そうだよね」と素直に頷ける日本人はどれほどいるだろうか。多くの人は「でも、少子高齢化で……」「デジタル化は遅れてるし……」「賃金も上がらないし……」と反射的に反論するのではないか。

この認識ギャップは興味深い。外の世界は日本の「安全性・清潔さ・食文化・職人精神・長寿企業・ソフトパワー」を高く評価しているのに、内側にいる日本人はそれを「あって当たり前のもの」として認識できていない。あるいは、課題にばかり目が向いている。

見られている自分が、見えていない。

これはある種の謙虚さに見えるが、実は「機会の損失」でもある。世界に向けて発信できる価値を、自分たちが過小評価している状態では、その価値を戦略的に育て・磨き・輸出することが難しくなる。


「注目されている」事実を言語化・可視化する

日本の国家ブランド指数首位は、マーケティングの結果ではない。意図せざる蓄積——日本人が長い時間をかけて積み上げてきた安全、信頼、美意識、ホスピタリティ、そして文化の継続性——が、グローバルな文脈で、世界に誇れる「価値」として可視化されたものだ。

だからこそ、問いはここから始まる。

インバウンド観光客に「消費」されるだけの国になるか、それとも日本が積み上げてきた文化的なポテンシャルを、これから人口減少モードへ移行する世界への「モデル」として体系化できるか。

人口減少・少子高齢化において日本は世界の最先端を走っている。それは弱点であり課題だが、同時に「人類が50年後に直面する課題の、先行事例」でもある。

縮小しながらも生活の質と安全を維持し、百年企業を生み育て、世界が憧れるコンテンツを生み出し続ける——その経路を言語化し、発信することは、22世紀に向けて、日本が担いうる知的・文化的な役割かもしれない。

世界から「注目されている」ことに、まず気づくこと。そしてその視線に応答する言葉を、日本人自身が持つこと。それが最初の一歩だ。


データ出典:アンホルト・イプソス「国家ブランド指数(NBI)2023・2025」、帝国データバンク「世界の長寿企業ランキング」

和田雄志 Future Navigator

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