経験をお金に変える方法をゴルフで学ぶ――ゴルフが教えてくれた「経験を資産に変える人」の共通点



「もっと稼ぎたい」

そう思っているビジネスマンは多い。

けれど、本当に収入を大きく伸ばしている人を見ていると、単に「働く時間」が長いわけではない。

彼らは、自分が経験したことを、

知識に変え、
知識を仕組みに変え、
仕組みを価値に変え、
価値をお金に変えている。

そのプロセスが、とても上手い。

そして私は、その能力を意外なほどわかりやすく教えてくれるのが「ゴルフ」だと思っている。

ゴルフは、経験がそのままスコアとして返ってくる。

成功したショット。

失敗したショット。

無理をしてOBを打ったホール。

安全に刻んでパーを拾ったホール。

プレッシャーに負けた一打。

冷静に判断できた一打。

18ホールを終えると、それらがすべて「経験」というデータになって残る。

大切なのは、その経験を次にどう使うかだ。

これは、そのままビジネスにも当てはまる。



あるビジネスマンが、ゴルフを始めて社長になった

私の知り合いにAさんというビジネスマンがいる。

最初から経営者だったわけではない。

30代の頃は、会社員として営業の仕事をしていた。

仕事は真面目。

人付き合いも悪くない。

成績も平均以上。

しかし、本人にはずっと一つの不満があった。

「一生懸命働いているのに、収入がそれほど増えない」

ということだった。

Aさんは、仕事ができない人ではなかった。

むしろ仕事はできる。

ただし、ある意味で「経験を消費している人」だった。

営業で失敗する。

反省する。

翌月にはまた同じような営業をする。

お客様から断られる。

「次は気をつけよう」と思う。

しかし、数週間経つと忘れている。

成功する。

喜ぶ。

でも、なぜ成功したのかを分析しない。

つまり、

経験は増えているのに、能力が増えていなかった。

そんな時、Aさんが始めたのがゴルフだった。



最初は、ただの趣味だった

Aさんはゴルフを始めた頃、とにかく飛ばしたかった。

ドライバーを持てば、できるだけ遠くへ飛ばす。

ミスショットをすると、

「今日は調子が悪い」

で終わる。

スコアが悪ければ、

「ドライバーがダメだった」

「パターが入らなかった」

「今日は暑かった」

と理由を探す。

ところが、ある日のラウンドで大きな失敗をした。

ティーショットを大きく曲げ、林の中へ入れてしまった。

残りは約150ヤード。

目の前には木がある。

Aさんは、そこから直接グリーンを狙った。

結果は、木に当たってさらに奥へ。

そこから脱出するのに2打。

結局、そのホールは「7」。

ラウンド後、同行していたゴルフ仲間から言われた。

「最初の一打より、その後の判断のほうがもったいなかったね」

Aさんは、その言葉が妙に気になった。



「ミス」ではなく「判断」を見る

次のラウンドから、Aさんはゴルフの見方を変えた。

スコアだけを見るのをやめた。

代わりに、

「なぜ、この判断をしたのか?」

を見るようにした。

すると面白いことに気づいた。

スコアを崩しているのは、必ずしも「技術的なミス」だけではなかった。

むしろ、

焦っているときの判断

欲が出たときの判断

取り返そうとしたときの判断

に問題が多かった。

これは、仕事でも同じだった。

営業で一件失注すると、焦って別の案件を無理に取りにいく。

売上が足りない月には、利益率の低い仕事まで受ける。

上司から厳しく言われると、本来必要ではない仕事まで抱える。

つまりAさんは、

「ゴルフが下手だった」のではない。

判断の仕方に問題があった。

そう気づいた。



ゴルフには「経営の縮図」がある

ゴルフと経営の共通点については、以前から多くの書籍で語られている。

経営コンサルタントのDavid K. Hurstは『Learning from the Links』で、ゴルフとマネジメントには、先を読み、複数のシナリオを考え、リスクを検討し、計画を実行するという深い共通性があると説明している。(Simon & Schuster⁠)

また、日本でも『ビジネス思考はゴルフで学べ!』という書籍があり、ゴルフを題材にドラッカー、コトラー、ブルーオーシャン戦略、ランチェスター戦略などのビジネス思考を解説している。(WAVE出版⁠)

つまり、

ゴルフは小さな経営ゲーム

と考えることができる。

18ホールという限られた資源。

14本という道具。

天候や風という外部環境。

自分の体調という内部環境。

そして、一打一打の意思決定。

これらを組み合わせて、最終的なスコアを作っていく。

会社経営も同じだ。

人。

お金。

時間。

商品。

顧客。

市場環境。

それらを使って、最終的な利益をつくる。



Aさんは「経験ノート」を作った

ここからAさんが面白かった。

ラウンドのたびに、一冊のノートを持つようになった。

書くことは3つだけ。

①何が起きたか

②なぜそうなったか

③次はどうするか

例えば、

「13番、残り160ヤード。池越えを狙ってミス」

と書く。

そして、

「なぜ?」

と考える。

すると、

「バーディーを取りたかった」

という本当の理由が出てくる。

さらに、

「次は?」

と書く。

「ピンを狙わず、池を避けてグリーン手前まで運ぶ」

となる。

これだけだ。

しかし、この習慣がAさんの仕事を変えていった。



ゴルフの「反省会」が、仕事の改善会議になった

営業が終わるたびに、Aさんは同じことをするようになった。

「何が起きた?」

「なぜ起きた?」

「次はどうする?」

以前なら、

「今日はお客様の反応が悪かった」

で終わっていた。

それが、

「初回面談で商品の説明をしすぎた」

「相手の課題を聞く前に提案した」

「価格の話をするタイミングが早かった」

と具体化されていった。

そして、それを翌日の営業で試す。

すると少しずつ成約率が変わった。

ここで重要なのは、

経験を反省で終わらせなかったこと

だ。

経験を、

「次の行動」

に変えた。



経験は、それだけではお金にならない

ここは非常に重要だ。

「経験がある」

ことと、

「経験がお金になる」

ことは違う。

10年間営業をしている人がいたとしても、

同じことを10年間繰り返しているだけなら、

「1年の経験を10回繰り返した」

だけかもしれない。

一方、

失敗

分析

改善

再実行

成功

再現

を繰り返す人は違う。

経験が「知恵」に変わっている。

ジェームズ・クリアーは『Atomic Habits』で、結果を生むのは目標だけではなく、それを実現するシステムだと説明している。さらに、改善には測定やフィードバックが重要だと論じている。(James Clear⁠)

ゴルフで言えば、

「80を切りたい」

だけでは80にならない。

なぜ100を打ったのか。

どのホールで崩れたのか。

どの距離が苦手なのか。

何を練習するのか。

次のラウンドで何を試すのか。

そこまで仕組みにする必要がある。

ビジネスも同じだ。



Aさんは「自分の勝ちパターン」を見つけた

数年経つと、Aさんのノートには大量のデータがたまっていった。

そして、あることに気づいた。

自分は、

「新規顧客を大量に開拓する」

より、

「既存顧客から紹介をもらう」

ほうが圧倒的に成約率が高い。

さらに、

「商品を売る」

より、

「お客様の問題を聞いて、その解決方法を提案する」

ほうが利益率も高かった。

つまり、経験を積み重ねたことで、

自分が勝てる場所

が見えてきた。

ここからAさんの収入が大きく変わっていった。



「全部やる」をやめた

以前のAさんは、

「仕事は断らない」

タイプだった。

しかし、ゴルフを通じて、

「すべてのショットを攻める必要はない」

と理解した。

ゴルフでは、毎回ピンを狙う必要はない。

危険な場所に打てば、次の一打が難しくなる。

だから、

「今、一番得な選択は何か?」

を考える。

これは経営でも同じだった。

Aさんは、

利益率の低い仕事を少しずつ減らした。

相性の悪い顧客との取引を見直した。

自分がやらなくてもいい仕事を人に任せた。

そして、

「自分が最も価値を出せる仕事」

に時間を集中した。

売上は一時的に減った。

しかし、利益は増えた。

そして、時間が生まれた。



「時間」が生まれると、人を育てられる

ここからAさんは、もう一段階変わった。

以前は、

「自分が頑張れば売上が増える」

という考え方だった。

しかし社長になるには、

「自分がいなくても売上が生まれる」

仕組みが必要になる。

そこで、Aさんは自分の営業ノウハウを社員に教え始めた。

営業トーク。

質問の仕方。

提案書の作り方。

クロージングのタイミング。

失注したときの分析方法。

これらをすべて「感覚」から「言語」に変えていった。

ここでもゴルフの経験が役に立った。

ゴルフでは、

「なんとなく打つ」

から、

「この状況なら、このクラブで、この球を打つ」

へ変える必要がある。

経営も同じだった。

「営業がうまい人」

ではなく、

営業がうまくいく条件を説明できる人

になった。

これが、組織を作る力になった。



経験を「商品」に変える

Aさんが社長になってから、さらに面白いことが起きた。

自分が10年以上かけて経験してきたことを、

「研修プログラム」

として商品化したのだ。

それまでは、

「自分だけが知っている経験」

だった。

しかし、

「誰かの問題を解決できる知識」

に変えた瞬間、それは商品になった。

ここに、

経験をお金に変える本質

がある。

経験そのものを売るのではない。

経験によって得た、

「失敗しない方法」

「成功しやすい方法」

「時間を短縮する方法」

「リスクを減らす方法」

を売るのだ。



ゴルフで言えば「スコア」ではなく「再現性」を売る

例えば、ゴルフが上手い人がいる。

「私は70台で回れます」

と言うだけでは、価値は限定的だ。

しかし、

「あなたが100を切れない原因はここです」

「この3つを直せば、次の3カ月で90台を狙えます」

と言えたらどうだろう。

そこには価値が生まれる。

つまり、

経験 → 知識 → 方法 → 再現性 → 商品

という変換が起きている。

ビジネスでもまったく同じだ。



そしてAさんは社長になった

Aさんが社長になった理由を聞かれたとき、本人はこう話していた。

「昔は、経験を増やせば成功すると思っていました。でも違った。経験から何を取り出すかが大事だったんです」

この言葉は、とても印象に残っている。

ゴルフを始めたことで、Aさんは、

「失敗した」

ではなく、

「この失敗から何を学べる?」

と考えるようになった。

そして、

「この学びを、仕事でどう使える?」

と考えるようになった。

さらに、

「この方法を、人に教えられないか?」

と考えるようになった。

最後には、

「これを仕組みにできないか?」

と考えるようになった。

この瞬間、

ただの経験が、

資産

に変わった。



ゴルフは「PDCA」を18ホールで教えてくれる

ゴルフの面白さは、一度失敗してもゲームが続くことだ。

1番ホールで失敗しても、2番がある。

前半で崩れても、後半がある。

今日100を打っても、次のラウンドがある。

これはビジネスにおいて、とても重要な感覚だ。

失敗を「終了」と考えない。

失敗を、

次の改善材料

と考える。

ジェームズ・クリアーが紹介する「意図的な練習(deliberate practice)」でも、単なる反復ではなく、目的を持ち、測定し、フィードバックを受けながら改善することが重要だとされている。ゴルフの練習は、その考え方を非常に体感しやすい。(James Clear⁠)

だから私は、ゴルフをするビジネスマンには、

「スコアだけを記録しないでください」

と言いたい。

記録してほしいのは、

判断

だ。



お金になる経験には「5つの段階」がある

経験をお金に変えるなら、次の順番を意識するといい。

STEP1 経験する

まず行動する。

ゴルフならラウンドする。

仕事なら営業する。

新しい商品を作る。

人と会う。

失敗する。

成功する。

すべてが材料になる。

STEP2 記録する

「何が起きたか」を残す。

スコアカードでもいい。

営業日報でもいい。

数字でもいい。

記録がなければ、経験は記憶の中で薄れていく。

STEP3 分析する

「なぜ起きたのか?」

を考える。

ここが最も重要だ。

STEP4 再現できる形にする

「次はどうすれば同じ結果を出せるか?」

を考える。

ここで経験が「ノウハウ」になる。

STEP5 人の問題を解決する

最後に、

「このノウハウで誰かの問題を解決できないか?」

と考える。

ここで初めて、

経験が価値になり、価値がお金になる。



だから「失敗」は資産になる

ビジネスで失敗した経験。

営業で断られ続けた経験。

社員が辞めた経験。

商品が売れなかった経験。

会社のお金を失った経験。

これらは、そのままでは苦い思い出だ。

しかし、

「なぜ失敗したのか」

を理解し、

「次はどうするのか」

を決め、

「同じ失敗を他人がしない方法」

まで整理できれば、

その失敗には価値が生まれる。

むしろ、成功談だけでは人を救えないこともある。

なぜなら、成功には偶然が混ざるからだ。

失敗には、

避けるべき条件

が隠れている。

そこに価値がある。



ゴルフ場では、経営者の本性が見える

ゴルフを一緒にすると、その人の性格がよく分かる。

ミスしたときに、

誰かのせいにする人。

クラブのせいにする人。

天気のせいにする人。

そして、

「自分の判断が悪かった」

と言える人。

私は、この違いは経営において非常に大きいと思う。

経営者になれば、すべての結果を自分だけでコントロールすることはできない。

景気。

市場。

競合。

社員。

顧客。

為替。

さまざまな外部要因がある。

だからこそ、

「自分がコントロールできるもの」

に集中する必要がある。

ゴルフでも、

風は変えられない。

ライも変えられない。

相手のスコアも変えられない。

変えられるのは、

自分の判断と次の一打

だけだ。

経営も同じだ。



そして、もう一つ大切なこと

ゴルフには「完璧」がない。

プロでもミスをする。

だから面白い。

ビジネスも同じだ。

完璧な商品を作ってから始めよう。

完璧な計画を作ってから動こう。

そう考えていると、いつまでも始められない。

Aさんも最初から正解を知っていたわけではない。

打って、

失敗して、

考えて、

また打った。

その繰り返しだった。

重要なのは、

経験を積むことではない。

経験から学習する仕組みを持つこと。

そして、

学んだことを誰かの価値に変えること。



「経験」は、最高の原材料になる

もし、あなたが今、

「自分には特別な才能がない」

と思っているなら、一度、自分の過去を振り返ってみてほしい。

10年間営業をしてきた。

部下を育ててきた。

会社を立て直した。

何度も転職した。

商品を売ってきた。

失敗した。

成功した。

クレーム対応をしてきた。

顧客を増やしてきた。

これらはすべて、

あなたしか持っていない経験

だ。

問題は、その経験を「ただの思い出」にしてしまうか、

「誰かの役に立つ知恵」に変えるかだ。



最後に、ゴルフボールを一球だけ打つとしたら

私は、ゴルフを人生の縮図だと思っている。

ティーグラウンドに立つ。

風を見る。

ライを見る。

残りの距離を見る。

危険な場所を見る。

そしてクラブを選ぶ。

一度決めたら、打つ。

結果が出る。

良くても悪くても、次のショットが待っている。

人生も同じだ。

ビジネスも同じだ。

大切なのは、

「良いショットを打ったか」

だけではない。

その一打から何を学んだか。

そして、

その学びを次の一打にどう生かしたか。

さらに言えば、

その経験を誰かの価値に変えられたか。

ここまでできる人は強い。

なぜなら、経験するたびに資産が増えていくからだ。

お金を失っても、経験が残る。

失敗しても、知恵が残る。

苦労しても、ノウハウが残る。

そして、その知恵とノウハウを仕組みに変えれば、やがて人を動かし、会社を動かし、売上を生み出す。

Aさんが社長になった本当の理由は、

「ゴルフが上手くなったから」

ではない。

ゴルフを通じて、

経験を学びに変える習慣

を身につけたからだ。

そして、その学びを、

仕組みに変え、価値に変え、最後にはお金に変えた。

ゴルフには、人生で一度しか打てないショットはない。

今日の失敗は、明日の経験になる。

明日の経験は、やがて知恵になる。

知恵は、誰かの問題を解決する。

そして、人の問題を解決できるものには、必ず価値が生まれる。

だから、もしあなたが「もっと稼ぎたい」と思っているなら、まず自分の過去を見てほしい。

あなたは、すでにたくさんの「原材料」を持っているかもしれない。

必要なのは、新しい何かを探すことではない。

今までの経験を、価値に変える技術を身につけること。

その方法を、ゴルフは静かに教えてくれる。

次のラウンドでは、スコアカードの横に一行だけ書いてみてほしい。

「今日の一打から、私は何を学んだか?」

その一行が、もしかすると、

あなたの人生で初めての「経験をお金に変える一歩」になる。



参考にした考え方・書籍

・ジェームズ・クリアー『Atomic Habits』――小さな改善を積み重ねる仕組み、目標よりシステムを重視する考え方。(James Clear⁠)

・ジェームズ・クリアー「The Beginner’s Guide to Deliberate Practice」――ゴルフの練習を題材に、目的を持った反復、測定、フィードバックの重要性を解説。ベン・ホーガンの練習姿勢も紹介されている。(James Clear⁠)

・David K. Hurst『Learning from the Links』――ゴルフとマネジメントにおける、先読み、リスク判断、計画、実行の共通性を扱った書籍。(Simon & Schuster⁠)

・伊達直太『ビジネス思考はゴルフで学べ!』――ゴルフを題材に、ドラッカー、コトラー、ブルーオーシャン戦略、ランチェスター戦略などを考えるビジネス書。(WAVE出版⁠)

※Aさんのエピソードは、個人が特定されないよう再構成したケースとして掲載しています。

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