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血糖は「いつ歩くか」で決まる

外来で「食後に10分歩いてください」と言うと、だいたい怪しまれる。

「先生、それだけで何が変わるんですか?」そりゃそうだ。
10分の散歩で血糖が下がるなんて、自分だって最初は信じていなかった。


きっかけはリブレだった(CGMで見えた食後血糖)

FreeStyleリブレという血糖センサーがある。腕につけると血糖値をリアルタイムで測ることができる。こういう機器を総称してCGM(持続血糖モニター)と呼ぶ。糖尿病の患者さんが使うものなんだけど、去年、完全に興味本位で自分につけてみた。500円玉くらいのパッチを二の腕にパチンと貼る。「針を刺す」と聞くと怖そうだけど、実際やってみると装着は一瞬で、痛みもほぼない。貼りっぱなしで2週間過ごすと、リアルタイムで血糖値がスマホに飛んでくる。

2週間つけていて最も衝撃を受けたのが、 「食後に歩いた日と座っていた日で、同じものを食べても血糖のピークが全然違う」 ということだった。

同じ食事で、食後の血糖ピークが 30 mg/dLくらい違う 日がある。食後血糖は140 mg/dL以下が正常とされているから、30の差はかなりでかい。

高かった日は、食後にそのままデスクで座ってカルテを打っていた。低かった日は、たまたま用事があって院内を歩いていた。歩いた時間は、せいぜい10分。ちなみに自分は毎日ハムスターのように昼に同じサラダを食べ続けていて、CRISP SALAD WORKSのEVANGELIST(伝道師)になってしまった。
だから「同じものを食べたのに血糖が違う」の比較がやりやすかった。

「まさかこれだけで?」と思って論文を調べ始めたら、まさかだった。
ここ数年でメタ分析が何本も出ていて、全部同じことを言っている。

以前、インターバル速歩の記事で「歩数より強度が大事だ」という話を書いた。あれは歩き方の「質」の話。今回は歩く「タイミング」の話だ。
運動の効果は「何をやるか」だけでなく、「いつやるか」で激変する
これが今回の一本の軸になる。
▼体力年齢が「10歳若返る」インターバル速歩についてはこちら


食後に「立つだけ」で9%、「歩く」と17%(血糖スパイク)

まず、いちばんインパクトのあるデータから。

2022年にSports Medicineに載ったBuffeyらのメタ分析。7件のランダム化試験を統合した結果、食後に軽く歩いた群は、座りっぱなしの群と比べて 食後血糖が約17%低下 した(効果量 d = −0.72。医学研究ではd = 0.5以上が「中〜大きい効果」とされるので、かなり強い部類だ)。

1回あたり2〜5分の歩行。 コンビニに行って帰ってくる程度の話だ。

面白いのは「立つだけ」との比較で、立位でも座位より約9.5%は血糖が下がるのだが、 歩くとその倍近くに跳ね上がる 。足を動かして骨格筋を収縮させると、GLUT4というブドウ糖の取り込み口が筋肉の表面に出てくる。インスリンの助けがなくても血糖を引き込める。

インターバル速歩の記事で触れたGLUT4の話を覚えている人もいると思う。食後ウォーキングで起きているのも、あのときと同じメカニズムだ。


食前に歩いても、食後の血糖は下がらない

ここが今回いちばん伝えたいところだ。
2023年に同じSports Medicineに出たEngeroffらのメタ分析。8件のRCT、計116名(2型糖尿病47名+非糖尿病69名)を解析した結果。

食後に運動 vs 何もしない:血糖は 有意に低下
食前に運動 vs 何もしない: 有意差なし

同じ運動を、食前にやったか食後にやったか。
それだけの違いで、 片方は有意、片方は無意味

血糖値に関しては食前に歩いても効果なし

さらにこの研究のメタ回帰分析で、 食後から歩き始めるまでの時間が短いほど効果が大きい ことも出ている。

これがCGMで自分が体感したことの裏付けだった。「食べてすぐ歩いた日」と「15分休んでから歩いた日」でピークが違った理由がここにある。食後の血糖スパイクは食べた直後から始まっている。歩き始めが遅れれば、ピークが立ってからの追いかけっこになる。山を「抑える」のと「登りきった山を降ろす」のでは、体への負荷がまるで違う。
ちなみにCGMの体験記はこちら。


食後すぐの10分が、30分後の30分に勝った(食後ウォーキング)

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