【書籍紹介】「人生の経営戦略。自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20」山口周著
こんにちは。合同会社マルセロ 代表の駒瀬です。経営者、事業責任者に対する事業及びマーケティングの伴走コンサルティング、壁打ち、月額制顧問等のサービスを提供しています。
今話題の書籍。私の周りでも、本書を推している人がたくさん居ます。本書は、経営戦略を人生戦略に応用し、自分自身の人生というプロジェクトの唯一の責任者として、人生を設計し、実践していくヒントを提示した1冊です。
①難しい時代の到来
②準備のできていない人たち
③二極化する人生論、キャリア論
この3点が本書執筆の背景となります。
高度経済成長時代は、日本全体が伸びていたので、システムに載って進めばよかった。大学を卒業し、新卒一括採用で企業に入り、終身雇用前提で社内ローテーションを繰り返し、年齢と共に昇進していく。
どの企業に就職するかで差は出るけれど、全体が伸びているので致命的な差にはならない。
ところが、低成長になった現在、伸びている有望な市場に居るかが極めて重要となる。縮小していく市場に身を置いてしまうと、個人の努力ではどうにもならない差ができてしまう。
従って、社会動向を見定め、必要なスキルを習得し、それを金銭に変えていく。同時に、人生の目標である幸福を目指す。時間という全員に平等に与えられた手札を戦略的に活用することで。
私たちは、自分自身の人生というプロジェクトの唯一の責任者。経営戦略のごとく、時間という手札を適切に配分し、人生戦略を策定、実施していく必要がある。
ところが、これまではシステムに載っていれば良かったので、急に人生戦略を立てなさいと言われても必要な準備ができていない。
巷の人生論、キャリア論は、以下の2大潮流に大別できる。
①残酷な社会ゲームを冷徹に戦って生き残り、経済的、社会的成功を手に入れろというマキャベリ的人生論。
②経済的、社会的成功の虚像に囚われず、自分らしく生きて本当の豊かさを手に入れろというルソー的人生論。
マキャベリ的人生論は、経済的、社会的成功を手に入れても幸福になるとは限らない。一方、ルソー的人生論は、一定の経済基盤がないと実現できない。とそれぞれに欠点を有す。
本書では、マキャベリでもなく、ルソーでもない第3の道が提示されている。それがアリストテレス的人生論。
自分らしいと思える人生を歩み、経済的、社会的にも安定した人生を送る。
■人生のゴール
人生戦略設計の最初に行うのがゴールの設定。ゴールは、幸福になること。言い換えるとウェルビーイングを目指すということ。
ウェルビーイングの構成要素は、以下の3つ。
①自己効力感
②社会的つながり
③経済的安定
自分が成長している、他者の役に立っている、自分は有能であると感じられる自己効力感が最初の要素。
加えて、人間は一人では生きていけない。社会につながってこそ幸福を感じられる。
最後に、経済的安定がなければ幸福にはなれない。自己効力感と社会的つながりだけでは不十分。
■時間資本が出発点
すべての人に平等に与えられているのが時間資本。人生とは、人的資本→社会資本→金融資本へと変換していくゲーム。
①人的資本:スキル、知識、経験
②社会資本:信用、信頼、ネットワーク
③金融資本:お金、金融資産
ポイントは、この順番で変えていく必要があるということ。
人的資本だけでは稼げない。これを信用、信頼というフィルターにのせて他人に伝えることで価値が認められ、マネタイズが可能となる。
ここで重要なのが、人生の時間(80年?)というスパンで捉えて、適切に時間資本を配分すること。肉体労働等で短期的に効率よく稼いでも、それが人的資本や社会資本として蓄積していかないと、人生の後半で稼げなくなる。
常にありたい自分を思い描き、そこに必要な人的資本や社会資本に繋がるように適切に時間資本を配分していく。
注意点は、金融資本だけを重視し過ぎると、最終的に幸せになれないということ。これは、著者自身の経験として、ハードワークで家族との時間を犠牲にする働き方に限界を感じ、バランスの取れた働き方にシフトした事例が紹介されています。
■時間の経過に伴う身体的変化を考慮せよ
わかりやすい例が、若い頃は体力がある。従って、膨大な時間をかけて何かを集中的に実施するということは若い時にしかできない。ここで楽をしてしまうと、後々、十分な社会資本、金融資本が得られず苦労することになる。
もうひとつは知能の変化。若い頃は流動性知能が優位。年齢を重ねるにつれて、流動性知能が後退し、結晶性知能が優勢となる。この特性を理解して、時間資本を適切に配分する。
ちなみに、流動性知性とは素早い分析や創造的な発想に資する知能。結晶性知能とは、既知の概念を組み合わせたり、複雑な概念を他者にわかりやすく表現する知能。
常に短期の合理より長期の合理を心がける。
優れた戦略とは、「短期的に見ると不合理に見えるのに、長期的に見ると合理的」であり、「部分で見ると不合理に見えるのに、全体で見ると合理的」である。
私たち日本の社会では、大学在学中に企業の内定を取り、卒業と同時に名のある組織に入って働き始めるのが勝ち組とされています。在学中に内定がもらえない、卒業してから働く口がないというのは、一般に就活の敗け組とされ、無為に時間を過ごしてしまうことは、それこそ非合理的だと考えられています。
しかし、本当にそうなのでしょうか? むしろ、さしたる人生経験もなく、企業や産業を評価するリテラシーもないままに、下手をすれば一生いることになる企業を新卒一括採用と呼ばれる、世界でも類例のない奇怪な制度に依存して選んでしまうことの方が、よほど非合理的だという考え方もできるでしょう。
■変化率とコア人材に着目せよ
時間資本の配分を考える際、正しいタイミングを見極めることが重要。その際、変化率とコア人材に着目する。
アマゾン創業者のジェフベゾスは、「インターネットの市場成長率は2,300%」というレポートに衝撃を受け、ヘッジファンドの職を捨て、アマゾンを創業した。
また、定量的情報がない中で兆しを捉えるには、その業界で評判の高いコア人材に着目する。
私たちは、物事の趨勢がどちらとも決めかねる時、つい安易に予測に頼ってしまいがちですが、著名なスタートアップ創業者ポール・グレアムに言わせれば、テクノロジーに関する長期予測は当たったためしがなく、これに頼っていれば必ず趨勢を読み誤ることになります。
では、何に頼ればいいかというと、グレアムはヒトに着目せよといっています。ここでいうヒトとは、あるジャンルにおいてコアの中核にいる人々のことです。彼らの言動や話題を観察することで、これから先、何がやってくるかを捉えることができる、と言っているのです。
■計画よりも実行を重視せよ
一般的に、イノベーティブなプロダクトやサービスを生み出すことに成功したチームほど、計画段階にかける時間が少なく、実行段階にかける時間が長い傾向があると言われている。
成功したプロジェクトチームは、仮説に基づいて大まかな計画を一気に作った上で、プロジェクトの進行に従って明らかになっていく仮説の検証結果に従って、その場その場で新しい計画を策定し、それに乗り換えていったのです。言うなれば、プロジェクトの実行過程全体にプロジェクトの計画と修正を溶かし込んでいるのです。
■マイケルポーター提唱のファイブフォースの応用
ポジショニング理論の教祖であるハーバード大学のマイケル・ポーター教授提唱のファイブフォース理論。企業のポジショニングの魅力度は、5つの力に着眼することで分析可能と説いた。
①競合との競争
②新規参入の脅威
③代替品の脅威
④顧客の交渉力
⑤売り手の交渉力
人生戦略策定に際し、これらの脅威に対して、対抗策を考えていく必要がある。特に、避けて通れない脅威がAIによる仕事の代替。解決策は、以下の3点。
①正解のある仕事を避ける
②感性的、感情的な知性を高める
③問題を提起する力を高める
例えば私が長らく携わっている経営コンサルタントや人材育成、組織開発といった仕事では、実は認知的な知性以上に、クライアントの感情を察知したり、逆に感情を揺さぶったりするための感情的な知性が求められます。現時点では、このような領域については人工知能よりも人間にアドバンテージがあります。
AIによって正解を出す能力が過剰に供給されれば、ボトルネックはその前工程となる課題設定のプロセスに移行します。なぜなら問題の解決の前には必ず問題の設定が必要になるからです。AIがもたらす過剰な正解提供能力を価値につなげられるかどうかは、前工程において、どれだけ良質な問いを立てられるかどうかにかかってくるのです。
■複数の仕事を同時に持つポートフォリオ戦略
ポートフォリオとは投資用語で様々なアセットクラスを適切に組み合わせたものを指す。これにより、市場の変動で一部の資産にネガティブな影響が及んでも、その影響を吸収し、リスクとリターンのバランスを最適化することが可能。
この投資戦略を、人生戦略にも応用せよと著者は説きます。
複数の仕事を同時に持つポートフォリオ戦略には、以下の4つのメリットがある。
①成長の機会
②キャリアの多様性
③人的ネットワークの構築
④リスク分散
ポートフォリオ戦略実践に際しては、以下の3つの視点を意識する。
①リスクとリターンのバランス
②長期、短期のバランス
③ライスワークとライフワークのバランス
ライスワーク(本業)ではやりがいより安定的に収入を得ることを重視し、ライフワーク(副業)で将来に対する投資を行ったり、好きなことを究めて人生を充実させる。
また、リスクとリターンの非対称性に着目した投資戦略であるバーベル理論も紹介されています。アップサイドの大きなリターンを享受すべく、不確実な案件にも一定の時間を投資せよと説きます。
バーベル理論に興味のある方は、こちらも併せてお読みください。
他にも、
打率より打席数を重視せよ
経験とは良質な失敗のこと
と言った示唆深いフレーズも出てきます。
更に、私個人としては、発達指向型組織(DDO)に関し触れているところも気に入りました。
職場でありのままの人間を晒し、弱さも隠さずに見せる。社員が成長視点で難易度の高い仕事に挑戦し、それをサポートする仕組みとセットで、個人の成長と組織のパフォーマンス向上の両立を目指す理論。
ご興味ある方は、こちらの書籍をお読みください。私は、既に読了して、記事化予定ですが、中身がかなり濃いので手こずっています(笑)。
以上となります。すべての職業人必読の1冊として推奨します。
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