昔よりも現在未来における人間と社会が進歩しているという思想には疑問しかない
古代ギリシアやローマ、江戸時代の人間や社会と比べて、現代が科学・技術を除き何か進歩しているのか?
はなはだ疑問です。

“Each generation imagines itself to be more intelligent than the one that went before it, and wiser than the one that comes after it”(どの世代も、自分たちは前の世代よりも賢く、次の世代よりも賢明だと思い込んでいる)
George Orwell (1903 - 1950)
“Each generation imagines itself to be more intelligent than the one that went before it, and wiser than the one that comes after it”(どの世代も、自分たちは前の世代よりも賢く、次の世代よりも賢明だと思い込んでいる)
— No-Marcy@フラットウッズの森のパブリックエネミー (@NoMarcy1225) June 15, 2025
George Orwell (1903 - 1950) https://t.co/xz5kscbVDR
現代に続く進歩史観の呪縛
西洋の思い込みに進歩史観があります。現代の人間も社会とくにデモクラシー国家は、昔の国家や周辺国家に比べ最高に進歩しているとするものです。以下代表的なものを紹介しますが、これら以外にも、進歩史観はものの見方において一般的なものとなっています。
日本の学会はこの半世紀にわたって事実に重きを置く実証主義とアイデアリズム(理想主義)に重心を置いてきました。アイデアリズムというのは、世の中は「進歩」「統一」「戦争のない世界」などの理想(アイデア)に向かって動いているという歴史観です。
例えば国連中心主義というのはアイデアリズムに基づいた考え方の典型例です。日本もこれに則って、第2次世界大戦までの行動を反省し、国連の一員として活動し、軍備を制限すれば平和に貢献できると考えてきました。
ところが、周囲を見渡すと、どうもそうなっていないことが肌感覚として分かってきました。それが、世界史と地政学が注目を集めるようになった原因なのだと思います。
悪である共産主義が打倒され、冷戦が終わった。自由と民主主義の世界が実現し、紛争はなくなるだろうと米国の思想家フランシス・フクヤマ氏が『歴史の終わり』で論じました。しかし、そんな世界は到来しませんでした。


社会進化論
進歩史観は古くは社会進化論の影響を受けています。
ヘーゲル 歴史哲学
進歩史観の代表的なものは、ヘーゲルの歴史哲学です。
ヘーゲルは、絶対精神というものが個々の社会が進歩し、最も発展したゲルマン社会であるドイツにあらわれると考えていたようです。
ヘーゲル『歴史哲学講義』による絶対精神の発展歴史観
1.東洋世界:中国
2.東洋世界:インド
3.東洋世界:ペルシャ
4.ギリシャ世界
5.ローマ世界
6.ゲルマン世界
マルクス・エンゲルスの唯物史観
当初は、ヘーゲルの観念論 歴史哲学の唯物論的改作の唯物史観でした。
「マルクスがその著書『経済学批判』序説において、
「アジア的、古代的、封建的および近代ブルジョア的生産様式」
という世界史の発展段階(四段階)を示したことは周知のことであるが、彼は一方では『共産党宣言』などでは
「奴隷制、農奴制、資本主義」
という発展段階(三段階)をも示している。」
「二つの説は、
「古代的」=「奴隷制」、 「封建的」=「農奴制」、 「近代ブルジョア的」=「資本主義」
で対応する。大きな違いは、前者が「アジア的」という地理上の概念をそのまま歴史上の最初の段階に位置付けているのに対して、後者が「アジア的」を欠落している点である。」
「後者の欠落はエンゲルスに受け継がれており、その著書『家族・私有財産・国家の起源』には「アジア的」の段階がない。」
その後、エンゲルスが、イロコイ同盟を研究したモーガンの著作を参考に、原始共産制と共産制を唯物史観につけ加え、進歩史観として完成しました。
通常 カール・マルクスと結びつけて考えられている用語であるが、詳細はフリードリヒ・エンゲルスによって『家族・私有財産・国家の起源』の中で叙述された。原始共産制は、人類の歴史における基本的な富に対する集合的な権利、社会的関係における平等主義、階層化と搾取の発生に先行すると考えられる権威的な統治や階級の欠如などを示している。原始共産制に関して、マルクスとエンゲルスは、アメリカ州の先住民族の村落の構造を「古代氏族の自由、平等、友愛」や「生活における共産主義」と語ったルイス・ヘンリー・モーガンの大きな影響を受けた。
原始共産制のモデルは人類の初期の社会である狩猟採集社会に見られ、そこには階級支配は無く、富の余剰も作成されない[2]。更にいくつかの原始社会では食料や衣服などの全てが共有
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%A7%8B%E5%85%B1%E7%94%A3%E5%88%B6
イロコイ同盟を研究した民族学者L・H・モルガン(モーガン)が著書『イロコイ同盟』(1851)や『古代社会』(1871)でその社会的な機能を明らかにし、マルクスとエンゲルスの学説に影響を与えたことは有名である。
マルクスは原始共同体への研究の手がかりをルイス・ヘンリー・モーガンの文化人類学研究に求めた。モーガンはイロコイ・インディアンを調査研究した成果を『古代社会』にまとめていたが、マルクスはモーガンの著作とその周辺の関連文献を読み漁り、詳細なノートを作成していた。しかし、マルクスは1883年に研究を完成させられずに死去する。本書の序文に「以下の諸章は、ある程度まで遺言を執行したものである」とあるように、エンゲルスの盟友であったカール・マルクスが書いた研究ノートを使って、エンゲルスが独自に仕上げたものである。エンゲルスはマルクスの中途に終わった人類学研究を継承し、ヘーゲル弁証法の方法論を加えて唯物史観に構築し直すプロジェクトに携わっていくことになった
唯物史観により現代の分業をおこなう工業生産は否定され、私有財産のない農業と狩猟採集のみが行われる共産制が理想社会とされました。
「マルクスとエンゲルスは疎外や搾取など近代社会の諸悪の根源を分業に求め,〈まったく気のむくままに今日はこれをし,明日はあれをし,朝には狩りをし,午後には魚をとり,夕には家畜を飼い,食後には批評家である〉ような分業の廃絶の廃絶された牧歌的な社会を理想とした」https://t.co/iIyD0xxJpX
— 石部統久 (@mototchen) June 15, 2024
かれは猟師、漁夫か牧人か批判的批判家であり、そしてもしかれが生活の手段をうしなうまいとすれば、どこまでもそれでいなければならない――これにたいして共産主義社会では、各人が一定の専属の活動範囲をもたずにどんな任意の部門においても修行をつむことができ、社会が全般の生産を規制する。そしてまさにそれゆえにこそ私はまったく気のむくままに今日はこれをし、明日はあれをし、朝には狩りをし、午後には魚をとり、夕には家畜を飼い、食後には批判をできるようになり、しかも猟師や漁夫や牧人または批判家になることはない。
――最近のドイツ哲学およびドイツ社会主義の批判――
古在由重訳・岩波文庫(昭和31年1月)I フォイエルバハ(フォイエルバッハ)
唯物論的な見かたと観念論的な見かたとの対立〔序 論〕
A イデオロギー一般、ことにドイツの
〔1〕歴 史
http://web1.nazca.co.jp/hp/nzkchicagob/DME/D_IdeologieF.html#DIdeFA
マルクス「階級の共倒れ」
ちなみに、マルクスは過去については、革命が必ず成功する=必ず進歩する とは認識していませんでした。
鬪爭はいつでも、社會全體の革命的改造に終るか、或ひは交戰せる兩階級の共仆れに終るのであつた。
カール・マルクス
フリードリヒ・エンゲルス
堺利彦訳
幸徳秋水訳
第一章 ブルジョアとプロレタリヤ
https://www.aozora.gr.jp/cards/001138/files/47057_57486.html
単線的歴史観は間違い
私たちが学校で学んだ知識は、太古の人類はまず狩猟採集民として暮らし、初期の農業においては、タネをまいたり収穫をしたりする中で、次第に労働力が組織化されていく。そして村長(むらおさ)のようなリーダーが生まれ、分業が広がって、王や貴族、商人が誕生し、確固たるヒエラルキーが出来上がっていく。それは不可逆的な過程である、というものだと思います。
本書はそうした単線的な歴史観は間違いであることを、数々の証拠を基に論証します。
狩猟採集をしていた人々が農業を始めたと思ったら、また狩猟採集に戻ったり、季節ごとになりわいを変えたりする人々も存在しました。同じアメリカ大陸でも、格差の大きい社会があれば、非常に民主的な運営がされているところも存在し、まさに多種多様です。
その多様性はたまたまそうなったということでもないようです。どういう社会であればより良い生(せい)を生きられるのかという政治的な思想、そこまで真剣でなくても、ちょっと試してみようかという人間の心持ちがあってさまざまな社会、共同体、都市、国家が選択されてきたということが、最新の考古学的知見と幅広い民族誌の蓄積を基に示されています。
『The Dawn of Everything』
進歩史観から脱却できるのか 人間・社会も進歩しているとは思えません。
人間のパーソナリティに進歩はみられない
人間のパーソナリティは、遺伝の影響もかなりあり、古代ギリシャから変わっていないように思えます。
紀元前4世紀の言葉なんだけど、これまさにいまのツイッターでは・・
— 東浩紀@巻頭言集2巻本、電子版で発売中 (@hazuma) February 10, 2022
(橋場弦『民主主義の源流』、講談社学術文庫、p.253) pic.twitter.com/5MPzPMgQ0f
「(悪口雑言を言う人は)なかでも自分の友人や親族について、あるいはもう死んでしまった人たちについてさえも、言論の自由、民主主義、自由独立、ということばをたてにして言い逃れしながら、ひどくののしる。そしてそれを人生で何よりも楽しみにしているのである。」
— 石部統久 (@mototchen) February 11, 2022
『人さまざま』
テオプラストス
「(悪口雑言を言う人は)なかでも自分の友人や親族について、あるいはもう死んでしまった人たちについてさえも、言論の自由、民主主義、自由独立、ということばをたてにして言い逃れしながら、ひどくののしる。そしてそれを人生で何よりも楽しみにしているのである。」
『人さまざま』
テオプラストス
人間のパーソナリティ(人格)は遺伝と環境の影響は遺伝4割、環境6割
Heritability of personality: A meta-analysis of behavior genetic studies.
https://psycnet.apa.org/record/2015-20360-001
保守かリベラルか遺伝の影響が大きい
デモクラシーは単なる循環のひとつという説
王政、貴族政、多数政治体制の循環の一つがデモクラシー(いわゆる衆愚制)という説がローマ時代にありました。これにはデモクラシーが特に優れているとか進歩しているという意味はありません。
【政治体制分類一覧表】今日延々ツイートしてきたものを表にまとめました。 pic.twitter.com/oWtT4nCJht
— ギリシア語たん(自転車操業中) (@Hellenike_tan) January 11, 2014
民主主義社会はワインのように年を重ねれば熟成されると考えられてきたが、逆https://t.co/lXMl5CAxlm
— ゆきまさかずよし (@Kyukimasa) November 8, 2019
民主主義進むほど国民には反動が(政府が独裁に走ると民主主義を求める声が出るほうは当然としてだが)
”negative thermostatic effect”
人間は進歩していないとの意見
筆者も同意見です。
https://bunkyoken.kawai-juku.ac.jp/plus/journey/post_105.html
https://forbesjapan.com/articles/detail/61489
日 本 人 は 「 進 歩 主 義 」 の 呪 縛 か ら 脱 却 で き る か ?https://ajrf.jp/ronbun/pdf/vol13_yushu_gakusei.pdf
余談 進化について
ここ20万年生物のミトコンドリアに進化はみられなく、中間種も存在しないという説があります。
関連書
【『万物の黎明』 単線的な人類史観を覆す大著】『万物の黎明』は読者を混乱させようとします。氷河期の時代は「牧歌的で平等な社会」か「ヒエラルキー社会」の二択で考えられがちでしたが、そんなに単純なものではないことを論証します。 #大川内直子 https://t.co/62vAHseAhq
— 日経BOOKプラス (@nikkeipub) July 11, 2024

