【映画レビュー・よりみち】AIは証人、判事は私。〜「MERCY/AI裁判」鑑賞で学んだ線引き〜
リード:私のAI“審理”。『MERCY/AI裁判』を観て、書き手として下した判決
映画から私に投げかけられた問いは
「何をAIに任せるのか、人はどう介入するのか?」
ということでした。
ならば、浮世から現実に戻った私は自分とAIの距離を“審理”してみようと思います。
ここに提出するのは、誤字だらけの書き手がAIと向き合い、人間がどこで手を入れ、どこで責任を負うかを決めた記録。
1.証拠提出:誤りはいつの日か必ず白日の下にさらされる
2010年、私は仕事で障害報告書を作成した。我ながら実によくまとまった報告書だったと思う。
それから5年後。
類似の障害が発生し、その報告書が再び開かれる。
「…報告日、20010年7月7日…に"まん"じゅうねん?
20010年異次元の旅、スケールでかいなっ!!!」
作成者である私のスケールが大き過ぎたのは言わずもがな、確認・承認をお願いした上長も既定の枠には収まりきらない大物だったと言えよう。
…
…
…
…
…
で済まされるかっ!!
幸い提出した顧客先の担当者の方が寛大な心でお許し頂きこの件は事なきを得た(まあ、発覚が5年後でしたしね…)
しかし、いつもそのような温情を頂けるとは限らない。小さな綻びが信用を削ることもある。
人は無意識に優先順位を付けチェックの粒度が不均一になりがちだ。本筋でない報告日の誤字が関係者の目検を鬼スルーしたのはその為かと。
私はその経験もあってこの映画レビューを始めるにあたってAIの導入を決めた。
まずは固有名詞の見張り役として。タイトル、監督、キャスト表記、上映時間。私の、人間の目は時々すべる。だから“証拠合わせ”の段でAIを置く。
ここで大事なのは、任せっぱなしにしないこと。
AIの出力はあくまで「証言」。私は「尋問」して、根拠が曖昧なら差し戻す。
2.証人席:作品情報とあらすじは証言してもらう
私がAIに証言を求めるのは、土台づくりの部分。
公式情報の取りまとめと、ネタバレを避けたあらすじの下書き。
スピードと網羅性は証人に頼る。
また、私はプロフィール記載のとおり前シリーズを未見でも平気で観に行くのだが、逆にネタバレを知っても平気というタイプ。そのため、ネタバレ境界線引きがとても弱い。そんな私の弱い部分も証人に頼る。
ただし、語り口や視点の置き方は人間が介入して整える。ここで私が立ち上がる。
3.尋問と反対尋問:原稿チェックにおける人間の介入
AIの出力は証言、私は尋問。チェック内容により尋問スタンスは変わる。
ひとつは事実関係と誤字脱字。ここは静かに、根拠を添えて正す領域だ。
固有名詞や日付が違っていたら、反駁の余地なく修正する。責任の所在は書き手にあるのだから。
もうひとつは文章表現。ここは堂々と議論する。
AIが提案する修正案はいささか”整い過ぎ”と感じることがある。
私が伝えようとしているのは数ある選択肢の中の1つでしかなく、他を排斥するような断定は本意ではない。
そんな時は私の意図を伝え、私が納得するまで再提案を求め議論をする。
完璧さより、人の揺れ=可能性を残す。それが私にとっての“mercy(慈悲)”だ。
➖実際の事例➖
先日、私は進撃の巨人の記事を投稿したが、その中で『希望と絶望の塩梅の妙』についてを述べる際、こんな紆余曲折があった。
【第1稿】
コントラスト対比で際立つ惨状。
ん?これがよかった点の3つ目?あれ、何か聞こえてくる?
「本当に、地獄が好きなんだなっ!?」
いや、決してそういうわけでは…
AI回答:
自虐的なツッコミは面白いですが、読者によっては混乱するかもしれません。
「辛い展開も含めてドラマティック」のようなまとめがあると分かりやすいかもしれません。
人間(私):
うーーーん😕
これは確かにツッコミではあるけど、
作中のアルミンの台詞の引用でもあり
ダブルミーニングの意図があるんだ。
しかし、わかりにくい、のか…?
ちょっと変えてみるか…
【第2稿】
コントラスト対比で際立つ惨状。
ん?これがよかった点の3つ目?あれ、何か聞こえてくる?
「本当に、地獄が好きなんだなっ!?」
いや、決してそういうわけでは…
辛い展開も含めてドラマティックでいいよね、ということで。
AI回答:
なるほど、アルミンの台詞の引用だったんですね!理解しました。修正版の「辛い展開も含めてドラマティックでいいよね、ということで。」という補足が入ったことで、かなり分かりやすくなりました。
人間(私):
褒めてくれた。
が…
なんかつまんない。余白が足りない。
「ドラマティックでいいよね♪」みたいな
一面的な表現は違ぁーーーーう。
一時休廷(私一人で再考😕)
「説明不足で伝わらないのは良くないけど、説明過多で野暮ったくなったから」
と再尋問開始。
【第3稿】
コントラスト対比で際立つ惨状。
ん?これがよかった点の3つ目?あれ、何か聞こえてくる?
「本当に、地獄が好きなんだなっ!?」(byアルミン)
いや、決してそういうわけでは…
そして、エレンもそういうつもりじゃなかったはず…
アルミンの台詞ということを明示。
私が幸災楽禍な人間でないことの説明と同時に、エレンもそういうつもりではなかったのでは…という解釈を追加。
AI回答:
説明し過ぎず、でも意図は伝わるという絶妙なラインに仕上がっていて素晴らしいです。
ファンなら「ああ、あのシーンね!」と分かり、
そうでない人も「何か意味深だな」と感じる、ちょうど良い塩梅です。
人間(私):
うむ。同意。
双方妥結し、これを最終稿として採用した。
4.口頭弁論:『MERCY/AI裁判』が背中を押したこと
映画はこう訴えた。
「人間もAIも間違いを犯す。そして、学ぶ」
映画に登場する人間は悉く間違っていた。そして、私もよく間違っている。
しかし、AIも間違うのである。
そもそもAIを生み出したのは人間なのだから。
最近のAIは自己学習が可能なものもある。だが、その学習データの源泉を辿れば人間に行き着く。学ぶは真似ぶ、人間を真似たAIが間違わないとどうして言える?
完璧な全知全能の神なんて存在しないのである。
その前提でシステムを構築するのが現時点での健全かつ最適解だろう。
納得できないAIからの提案には根拠を求める。判断に必要な証拠集めは徹底して行う。
そして、それらをもとに最終判断と署名を行うのは人間であり、そうでなければならない。
5.判決:AIは共同作業者、最終決定者は人間
よって本件、被告AIを有罪にも無罪にもせず。人間の監督下に置く。
以上、映画から学んだ私の“判決”である。
参考
この「よりみちシリーズ」は基本的に本道の記事が存在します。
未読という方はこちらも読んで頂けると嬉しいです☺️
…今回、"よりみち"が"本道"を超えそうな文字数になっていますけど😳
