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002【恋愛小説】ウタヒメユメト第一章 政界の蜘蛛の巣 chapter2

🕸️chapter 2 ── 仕掛けられた切り札

「スキャンダルだよ」
その一言が、空気を凍らせた。

権力という蜘蛛の糸が、ゆっくりとユメトを絡め取る。
逃げ場のない対話、仕組まれた罠。
無垢な言葉が、権力の闇に沈む夜。


ウタヒメユメト
─ The Spider’s Web ─
政界の蜘蛛の巣 chapter2


「選挙の件だがね。
先日、伊藤君のほうから正式に断りの手紙を頂いたよ。とても残念だ。
──と言いたいところなんだが、君たちにはいま一度、
考え直す機会を与えてあげようと思って、今日は来てもらったんだよ」

伊藤が先陣を守る。
「もう一度、考え直す。とは?」

「我々は、何も準備せずにユメト君を政治の世界にお招きしようと思っているわけじゃない」

ユメトが伊藤の後を追い、負けじと下手な矢を放つ。
「申し訳ありません、幹事長。とても光栄なお誘いですが、
学歴もない私には到底向いているとは思えませんでした。
それに、契約している企業にも影響を与えてしまいます。
それらをすべて考慮したうえで判断いたしました。
“考え直す”とは、一体どういうことなのでしょうか?」

しかし、敵は擦り傷ひとつ負わない。
それどころか、二人の反撃を待ち望んでいたかのように薄ら笑っている。
「スキャンダルだよ。
ユメト君をこの世界に招き入れるのだから、
こちらもきちんとユメト君の身辺を調べさせてもらってね……。
身に覚えがないのなら構わないのだけれど……
我々は切り札を持っている、と捉えてもらえれば理解してもらえるかな?」

“我々は正義だ”と疑うことを知らない伊藤が、丸腰で将軍を迎え撃つ。
「申し訳ありません、幹事長。何をおっしゃっているのか分からないんですが……?
うちのユメトは独身ですし、恋愛は自由にさせています。何が問題なのでしょうか?」

しかし、戦況は確実に劣勢だった。
成宮幹事長が不気味な笑みを浮かべている。
「恋愛が自由ねぇ……。
自由なら、何をしても構わないと世間が認めてくれるとは思わないが……。
従うつもりがないのなら、我々もそれなりの措置を取らせてもらうという意味だよ。
我々が持っている“切り札”が何なのか、自分の胸に聴いてみるといい。
ユメト君、きみ次第だ」

捕らわれ、武器を奪われたユメトは反撃の術をなくした。
成宮幹事長は、言葉を失った彼女の様子を見透かしたまま続けた。
「そうだ、言い忘れていたがね。
勘違いしないでほしい。
我々が欲しいのはユメト君じゃない。
我が党が政権を取るための“国民の票”だよ」

成宮幹事長の笑みは、どこまでも冷たい。
彼の視線がユメトを離さない。

ユメトは、静かすぎる空気が痛くてたまらなかった。

To be continued… ♡

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