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僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード 第5話「作戦会議」【全10話】

🎧 サントラ小説
再生できる方は、本文と一緒にお楽しみください。


【僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード】
第5話
作戦会議



翌朝。
僕は、お父さんがお仕事に出たことにも、お母さんがキッチンにいることにも気づかないくらい、深く眠っていた。
ニャンゴ君の前足おはよう挨拶で、飛び起きた。

慌てて眼鏡を探したけど見つからない。
昨日、どこに置いたっけ?

仕方なく、ぼやけたまま扉を開けると、ニャンゴ君がぼんやりお座りしていた。
どことなく、しょんぼりして見えるのは……僕の目がぼやけてるせいかな?
ニャンゴ君がこっちを見ているのかどうかも、よくわからない。

ニャンゴ君は部屋に入ってくるなりタワーには登らず、僕の机に上がった。

「お前の眼鏡はここにあるニャロ」

ぶっきらぼうに、そう教えてくれる。
眼鏡を装着すると、ニャンゴ君の様子がはっきり見えた。

でもニャンゴ君は、僕と目を合わせたくないみたいで。
眼鏡をかけ終わる頃には、もう床に瞬間移動していた。

「ニャンゴ君、昨日はひどいこと言ってごめんね」

僕がそう言うと、ニャンゴ君は偉そうに言い残して部屋を出ていった。

「昨日のことは水に流してやるニャ。朝ごはんが終わったら、今日は作戦会議ニャロ」

しっぽを振り上げて出ていく後ろ姿が、哀愁ただよっていて――
僕は、思わず吹き出してしまった。

だってニャンゴ君は、どこまでいっても恥ずかしがり屋さんなんだもん。


「見たい景色が三つあるニャロ。全部見終わったら、約束どおりお前にこの心臓をくれてやるニャ!」

「三つしかないの? せっかくなら、もっと見たらいいのに」

「お前は浅はかニャね。どれも、そう簡単に見れるわけじゃニャイ」

「そうなの? ニャンゴ君の足なら、どこへでも行けるじゃない? 一つ目はどこなの?」

「一つ目は海ダニャ。お前は海、見たことあるニャロか?」

「うん。いちどだけね。まだ小さかった頃、海が見たいってお願いしたら、お父さんとお母さんがビーチ付きのホテルを予約してくれたんだ。
まだ今より症状がひどくなくて……でも海を見たら嬉しくなっちゃってさ。我慢できなくて走り出しちゃった。

そのときは平気だったんだけど、その日の夜にひどい発作を起こして病院に運ばれて、旅行は中断。
それきり旅行には行ってないよ」

「海は、キレイニャのか?」

「うん。場所にもよるけど、僕はどこの海もキレイだと思う」

「どんなニャロか?」

「水平線って言うんだけどね、どこまでも続いてるんだ。だってね、地球の七割は海なんだよ!?」

「そうニャのか……」

僕はパソコンのモニターで、世界の海の動画を再生してみた。

「ほら、このパソコンで海が見られるよ? 見て! これが世界の海だよ。青くて綺麗だろ?」

「う、ウんニャ……」

「あれ? どうしたの?」

「……うるさいニャ! なんでもニャイ!」

「もしかしてニャンゴ君、いまは見えてない?」

ニャンゴ君は返事をしない。

僕は問いただした。
しばらくして、ニャンゴ君は白状した。
――僕を自分の中に取り込んだときにしか、目が見えるようにならないらしい。

「仕方ないニャロ。お前から目を全部奪ったら、お前は何も見えなくニャってしまうニャ。だから半分にしたニャロ」

「え? それって……もしかして。ニャンゴ君が僕のために半分にしてくれたってこと?」

僕の質問にニャンゴ君は答えず、大きなあくびをした。
得意の照れ隠しだ。

でも、しばらくするとボソッと答えてくれた。

「でも俺の心臓は全部、お前のものにニャルから安心しろ。丈夫な心臓を手に入れたって、何も見えニャけりゃ意味ないニャロ」

ニャンゴ君はいつもそうだ。
偉そうなことを言って、最後に優しいことを言う。

PCのモニターに流れる、いろんな国の青い海の映像が、僕の心を揺らした。
……なんだろう。
僕の心が、揺れている。

ニャンゴ君は口が悪いけど、思いやりのあるやつだ。
いいやつだ。

でも僕は、いいやつが嫌いなはずなのに。
みじめな気持ちには、ならなかった。



「じゃあ、まずは海からだね! どうやって行くかはあとにして、二つ目の見たい景色はどこなの?」

「……お前、枯山水って知ってるニャか?」

「え? かれさんすい? なにそれ?」

「それが、わからニャイんだ。調べてくれニャイか?」

僕はキーボードを打ち込んで『かれさんすい』をググった。

「これかな?枯れた山と水っていう漢字を使うみたい…。水を使わずに自然を表現する。白い砂を敷き詰めた地面に描かれた直線や曲線、大小様々な石。寺の庭でよく見かける光景です。 このように、水を使わず、砂や石だけで自然の景色を表した庭園が枯山水です。京都の大仙院などの石庭が枯山水としてよく知られている。…だって。わけわかんない」

「ニャニャ? キョート!?……それニャッ! 間違いない。それニャロ!」

「京都っていうのはね、遠くだよ。東京駅から新幹線に乗って行くんだ」

「電車ニャか?」

「うん。ニャンゴ君、電車知ってるの?」

「ウニャ。いちど乗ったことあるニャ。でも新幹線とかじゃニャイにゃろ」

「猫がどうやって改札通るのさ?」

「改札? そんなん知らんニャ。線路からダッシュだニャ!」

「あ、そっか。猫だから線路から電車に乗れるんだ」

「でもニャ、人間に見つかると大騒ぎニャ……」

「そりゃそうだよね……」

「狭いスキマさえアレバ隠れられるニャが。電車には俺が身を隠せるスキマがナイんだニャ」

「そうか……爆弾とか不審物が置かれないように、徹底されてるからね」

「ふしんぶつ? なんニャそれ? 不便な世の中ニャロ」

「不審物ってのは怪しい荷物のことだよ。……あ、そうだ! グリーン車なら一番後ろの座席下にスペースがあるよ!」

「グリーン車?」

「ちょっと待って。前にJR在来線の動画にハマってたことがあってさ……ほらこれ! 在来線の4号車と5号車がグリーン車両なんだ。ここなら隠れられるんじゃない?」

「ざいらいせん?」

「在来線っていうのは、新幹線や特急じゃない普通の電車のこと。ニャンゴ君が乗ったのは、多分こっちだと思うよ」

「覚えてナイにゃろ。文字は読めんニャ」

「そっか……字は読めないのか」

「お前、キョートはどこにあるニャか?」

「京都は新幹線に乗らなきゃ行けないよ。そうだなぁ、まずは在来線のグリーン車両で海に向かうんだ。そこをクリアしてから新幹線で京都に行こうよ!

常磐線で北に向かう列車に乗れば、乗り換えなしで北茨城の海まで行けるよ。磯原駅で降りたら、すぐ海だよ!」

「俺は字が読めないニャロ。降りる駅も、わからないニャ」

「それは僕の担当でしょ? 指示するから安心して!」

「人間に見つからニャイで乗れるニャロか?」

「大丈夫だよ。ニャンゴ君、かくれんぼ得意じゃん?」

「そりゃニャンズにゃから得意ニャロ」

「で、三つ目の見たい景色はなんなのさ?」

「それは、どこでも見られるからいいんだニャ」

「そうなの? なら先に見ちゃおうよ」

「どこでも見られるニャが、いつでも見られるわけじゃニャイ。お前、俺の心臓が早く欲しいニャロ!?」

「そりゃそうさ」

「焦るでニャイ。必ずその日は訪れる……」

「なに、それ。どっかで聞いたみたいな決まり文句。どこで覚えたの?」

「テレビだニャ。人間はテレビとか音楽つけるのが好きニャロ」

「ふーん。言葉がわかるんだね?」

「耳だけはいいって言ったニャロ! それに、お前より長く生きてるニャ」

「なんだか僕だけ損した気分だよ。ニャンゴ君のエスコートまでして、見返りはずっと先なんてさ」

「お前……性格、変わったニャロね……」

「どういう意味? 小さい頃の僕を知ってるの?」

「いや……ニャンでもないニャロ」

ニャンゴ君が見たい景色は、海と枯山水と――あともう一つ、なんか。
だった。

僕んちの最寄駅は、常磐線の松戸駅。
まず僕たちは、駅に向かう訓練を始めた。

ベッドで横になって寝たふりをすると意識が青い火の玉になってニャンゴ君の身体に乗り移る。

僕の青い魂がニャンゴ君に飲み込まれると、僕はニャンゴ君の目で僕を見下ろしている。
幽体離脱ってこんな感じなのかな?

僕の目で見て、ニャンゴ君がジャンプしてダッシュする。
操縦士はニャンゴ君。僕は指示役だ。
大人の足なら、家から駅まで徒歩十五分くらいの最寄り駅。
でも僕たちは、道なき道を行く。

ニャンゴ君の全力・休憩なしダッシュで、約十分。
しかも目指すのは駅の入り口じゃない。
一番線の下りホームだ。

電車の往来が激しい時間帯に、線路から攻める。
念入りな計画と、細心の注意が必要だった。

ニャンゴ君いわく、ここ数年で野良猫はほとんど姿を消したらしい。
ニャンズがのこのこと歩いているだけでも目立つとか。

人間に見つかると追いかけられたり、写真を撮られたり。
ひどいときは水をかけられたり、怒鳴られて追い払われるらしい。

なるべく人間の目に触れないルートで、ホームまで向かう。
駅までの遊歩道も公園も、途中で横切る知らないお家のお庭も。
夜の街と違って、昼間は人の目が多すぎた。

僕はニャンゴ君の身体に何度も乗り移って、松戸駅までの安全なルートを模索した。

試行錯誤の末に、最善のルートが確立される頃――
僕たちの街に、梅雨前線が近づいてきた。

今年も去年と同じ。
必ず訪れる、ジメジメ宣言。

「雨は嫌いだニャ」

「そうなの? 僕は嫌いじゃないな。でも梅雨明けしてくれないと海へは行けないね」

「ニャンズはみんな濡れるのイヤニャロ」

残念ながら、第一作戦の決行日は雨で流れた。

僕の街には今年も、変わらない雨粒が降りしきる。
降っても降っても、やまない雨。
やむことを知らない雨。

しかも今日は風まで混ざって、暴風雨。

ニャンゴ君は切なそうに、窓越しで暴れ狂う雨粒を眺めていた。
小心者のニャンゴ君は僕の隣で大雨を怖がっている。

でも無性に――どうしようもなく、悪さをしたくなって。
僕は雨風が吹き荒れる窓を、思いっきり開けた。

ニャンゴ君は窓から一番遠い場所へ、瞬間避難する。

「にゃっ! ニャニするニャか!? 気でも狂ったニャロか!?」

「別に。僕は雨が見たいんだよ」

「家の中がびしょ濡れニャロ!」

「濡れたら拭けばいいだろ?」

「アニャ〜!……お前、やっぱりクソアマタレにゃね」

「なにそれ? なに語?」

「ニャン語! クソみたいに甘ったれって意味ニャロ! このクソアマタレが!」

「ぶっ……アハハッ!」

ニャンゴ君が「ニャン語」なんて言った。
それだけで、僕は腹を抱えて笑った。

ニャンゴ君はプンスカ怒って、部屋を出て行った。

僕は吹き込む雨粒を浴びながら、大笑いした。

そしたら気づいた。
去年とはちがうこと。
同じじゃなかった。

今年の雨は、去年の雨とちがう。
だって僕は雨を見ながら、笑ったことなんて一度もない。

そして、この僕が梅雨明けを待っている。

今年の僕は、去年の僕じゃない。

しばらくすると冷気で眼鏡が曇って、世界が真っ白になった。
吹き荒れる嵐も、やまないはずの雨も、何も見えなくなる。

やがて梅雨が終わると、街に虹が現れた。
待ちわびた夏が来た。

いよいよ――
僕とニャンゴ君の冒険が始まる。

つづく🐾

↓↓↓ 第6話「はじめての冒険」


-モフモフ🐾余談-

赤ちゃんニャンゴスター
尻尾がポキっと折れてます🔑

ニャンゴスターは我が家で産まれました。
4匹兄妹の長男坊。
母猫のニャオ丸は野良猫だった為、残念ながら父親は分かりません💦

同じ柄と同化するのが好きらしい🤭


なんと!!!
4匹みんなキジトラ柄でした🐾
オス猫が一匹だけ。
ニャンゴスターは一番おっとりとした、優しい性格。
実は…母猫のニャオ丸はものすごく気が強いんです😨あわわわ

だから、ニャオ丸とは真逆の優しい性格の子を残しました。

ニャンゴスターがまかさの長毛種だと発覚したのは、生後3ヶ月目くらい🧐

あれ?なんか、毛が長くない?って🤣

後に発覚しましたが、4匹中2匹は毛長ちゃんでした🥰

最後までお読みくださり、ありがとうございました😊

モフモフの背中

次回……第六話🐾初めての冒険🚃

ニャンゴスター🐈‍⬛に乗り移った少年の僕とニャンゴスターが千葉の松戸駅から常磐線に乗って茨城の夏の海へ☀️
猫がどうやって電車に乗るの!?って
私は脳内フル稼働して、猫のリアル電車旅を実現可能にしてみました🤭ふふふ
当然、トラブル続きの冒険になります🤣笑

お楽しみに🫶🏻

海ではしゃぐニャンゴスター🐾

第6話、更新しました🆙
9000字あります💦
お時間の許す時にお楽しみください😌

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