僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード 第4話「はじめての喧嘩」【全10話】
🎧 サントラ小説
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【僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード】
第4話
はじめての喧嘩
それは翌日のこと。
目覚めた僕を待ち構えていたのは、霧がかかったみたいに薄ぼんやりとした、見たこともない世界だった。
「うわぁぁぁあッ! なんだよこれ!? 何も見えないじゃないかッ!」
「そうニャか? ちょっとだけ目が悪くなっただけニャろ?」
「ちょっとじゃない! 全部ぼやけてるよッ! 右目も左目も……ぜんぜん見えない!
なにこれ? ひどいよニャンゴ君! こんな話、聞いてないよ!」
「お前、バカか? 悪魔のトレードニャンだから当たり前ニャロ。リスクはつきものニャ」
「でも、心臓は? 僕の心臓は何も変わってないじゃないか! どういうことか説明してよ!」
「そりゃそうニャ。俺の心臓がお前の心臓になったら、俺が死んじまうニャロ?」
「どういうことだよ?」
「言ったはずニャ! 俺の丈夫な心臓は、俺が死んだときにお前にくれてやるって」
「なんだよそれ……そんなウソくさい話、信じていいのかよッ!?」
「さぁニャ。悪魔のトレードに、信じるもクソもニャイ」
僕は言葉を失った。
混乱し、とまどう僕に、ニャンゴ君は近づいてくる様子などなく、キャットタワーの一番上のお気に入りの場所で、優雅に毛づくろいを始めた。
確かに失明はしていない。
はっきりは見えないけど、家具の配置も、ニャンゴ君の様子も、なんとなくは分かる。
でも――完全に僕をバカにしてる。
⸻
目が見えなくなったことをお母さんに話すと、お母さんは慌てて仕事を休み、急きょ予約なしで主治医の先生のところへ向かった。
「目が悪くなっただけだから、眼科に連れて行ってよ」
いくら説明しても、お母さんは信じてくれない。
突然目が悪くなった理由をあれこれ検査して、主治医の先生も完全にお手上げだった。
最後の最後にやっと眼科に回してもらえて、急いで眼鏡を作って、夕方には家に帰れた。
先生もお母さんも、「心臓が悪いのに、目まで悪くなって落ち込んでるんじゃないか」って心配してくれた。
でも、実際のところ――そうでもなかった。
確かに、ぼやけてよく見えないから歩くのは大変だった。
でも僕は、もともと早歩きしたり走ったりできない。
だから「不便」ってほどでもなかった。
焦点が合わないって、すごく大変なんだな。
それを知れたのは、むしろ新鮮だった。
知らない世界を見ているみたいで、ちょっとだけ愉快でもあった。
眼鏡をかけると、僕の世界が元に戻った。
外すと、ぼやけた世界。
なんだか――ぼやけた世界のほうが、僕には合っている気がした。
だって、色んなものが鮮明に見えてしまうと欲が生まれる。
いろんな子と自分を比べて、みじめになる。
叶わない願いにとらわれなくていいのなら、最初から見えない世界も悪くない。
でも。
僕をだましたニャンゴ君を、簡単に許せる気にはなれなかった。
僕の目が見えなくなるなら、トレードする前に説明するべきだ。
何の説明もなく、ニャンゴ君は僕をだました。
だから――簡単には許さない。

ニャンゴ君は玄関先で、僕とお母さんが病院から戻るのを待っていた。
帰るなり、お母さんに猫なで声で甘えている。
健気なふりをしてる。
その様子がさらに僕の怒りを煽った。
僕は一日がかりの病院で疲れ果てていたし、なにより、ものすごく怒っている。
足元にすり寄ろうとするニャンゴ君を無視して、僕は自分の部屋に直行した。
夕食ができるまで、少し休もう。
しばらくすると、お母さんから夕ご飯をもらったニャンゴ君が、いつもみたいに僕の部屋の戸を前足でせっせとこすっている。
「開けろ」って。
僕は無視したかったのに、気を利かせたお母さんが扉を開けてしまった。
余計なお世話だ。
暗闇に包まれた部屋で僕は、今日も寝たふりをする。
⸻
ご飯のあと、ニャンゴ君はいつもならタワーに登って優雅に毛づくろいなのに、今日はなぜか直行で僕のベッドに上がってきた。
「お前、今日も寝たフリニャロか?」
「うるさい! 関係ないだろ。話しかけんなよ! 裏切りもの!」
「目玉、返すニャか?
でも目玉返したら心臓、渡せなくなるニャロ……悪魔のトレード不成立になるニャね」
「ハァ? もう眼鏡も作ったし、いらないよ!
どうせ僕はどこへも行けないんだ。よく見える目なんて必要ないんだよ!
ニャンゴ君は勝手に外へ出て、好きなところに行ってくればいいだろ!」
ニャンゴ君は、しばらく黙っていた。
そして、
「ごめんニャロ」
とポツリと言い残して、僕の部屋を出て行った。

夕食の時間。
お母さんがニャンゴ君を心配していた。
「ニャンゴスター、なんだか元気ないの。一人でお留守番が、さみしかったのかしら?」
だけど僕は――僕は、興奮していた。
だって、友達とケンカなんて初めてだったから。
お父さんとお母さんに嫌な気持ちをぶつけるのとは違う。
お父さんもお母さんも、僕がどんなにひどいことを言っても、全然ひびかない。
なのに今日のこれは、何かが違う。
ニャンゴ君はしょんぼりして、僕の部屋を出ていった。
あのとき僕の中に、ふつふつと笑いが込み上げてきた。
不思議な気持ちだ。
相手を傷つけたのに笑っているなんて、僕はとんでもなく嫌なヤツだ。
でもどうしても、ニヤニヤが止まらない。
僕はニャンゴ君とケンカをした。
それが嬉しくてたまらない。
初めて知った感情に、笑いが止まらない。

でも、その日の晩。
ニャンゴ君は僕の部屋にはとうとう戻って来なかった。
きっと、お父さんとお母さんの部屋で寝たんだろう。
僕は落ち着かなくて、夜中に何度も半開きの扉を確認した。
でも、いつまで待ってもニャンゴ君は戻って来なかった。
廊下から差し込む電球の柔らかな灯りが、むなしく見える。
ニャンゴ君の、フッサフサのしっぽをふるい上げた勇敢なシルエットを思い出すと、
僕はなぜか泣いていた。
それは、今まで流してきた涙とはちがう涙だった。
自分以外の誰かを思って、胸が苦しくてあふれる涙。
「僕の方こそ、ひどいこと言ってゴメンね……ニャンゴ君……」
僕は泣きながら謝っていた。
素直な気持ちを吐き出すと、不思議と張り詰めた気持ちが楽になって、
いつのまにか眠ってしまった。
つづく🐾
↓↓↓ 第5話「作戦会議」
-モフモフ🐾余談-

ニャンゴスターはダッシュと木登りが超得意です🐾
家の中にいれば彼は猫に見えますが…
草むらの中に隠れているニャンゴスターは
ニホンタヌキにしか見えません笑🤣

しかも、この空き家
モノホンのタヌキチも住んでいます🤭ふふふ
次回予告…第五話🐾
ニャンゴスターの行きたい場所が明かされます🐾
ニャンゴスターが見たいものとは…👀!?
最後までお読みくださりありがとうございました🫶🏻
adiós♡
