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知見は、なぜ共有されにくいのか。思考のインフラを世の中に届けたい。

QAエンジニアのつーつーです😁

プレローンチから約3か月後、先日正式ローンチをしました🫡

前回、「考える道具」と「動く道具」が分断されている、という話を書きました。マインドマップで整理した構造が、タスク管理ツールには転写されない。その「思考と実行の溝」を埋めたくてWeProcessを作っている、という話です。

ありがたいことに反響をいただいたのですが、書き終えてから、もう一つ埋めたい溝があることに気づきました。

「知識を持っていること」と、「その知識が世の中で活きること」の間にある溝です。

私たちは本を読み、記事を読み、勉強会に出ます。
たくさんのフレームワークを「知って」います。でもそのほとんどは、知ったまま動かずに眠っています。そして、せっかく磨いた知見を、人は不思議なくらい共有しません。

今回は、なぜそうなるのか——という話をします。前回が「ツールの壁」の話だったとすれば、今回は「認識の壁」の話です。

前回の記事はこちらです。

学んだことの、9割は使われない

こんな経験はないでしょうか。

良い本を読みます。「KGI/KPI/OKRはこう構造化するのか」「この認知バイアスには気をつけよう」と、深く納得します。付箋も貼ります。ノートも取ります。

そして、使わないまま忘れます😭

これは意志が弱いとか、勉強の仕方が悪いという話ではないと思っています。もっと構造的な現象です。

人は何かを「わかった」と感じた瞬間に、満足してしまう性質があります。心理学でいう流暢性の錯覚に近いものです。
すらすら読めて、すんなり理解できると、脳は「もう自分のものにした」と判断します。
実際には、読んで理解することと、現場で使えることの間には、大きな隔たりがあるにもかかわらず。。。

さらにやっかいなことに、学んだ知識を実際に使うには、毎回それなりのコストがかかります。「あのフレームワーク、どこに書いてあったっけ」と本を探す。内容を思い出す。今の状況にどう当てはめるかを考える。この一連の手間が、ほんの少しだけ「今はいいか」を選ばせます。

その小さな先送りが積み重なって、学んだことの大半は、使われないまま死蔵されていきます。

前回書いた「思考と実行の溝」がツールの壁だったとすれば、これは私たちの認識の中にある壁です。知識は持っているのに、それを日常の作業に下ろす「橋」が、頭の中にもかかっていないのです。

知識は、「所有」した瞬間に動かなくなる

学んだことが使われない理由を、もう一段掘ってみます。

人は知識を学ぶと、それを無意識に「自分のもの」として抱え込みます。
本棚に並べるように、頭の中にしまい込む。
この「所有する」という感覚そのものが、実は知識を動かなくしているのではないか、と私は考えています。

所有した知識には、2つのことが起こります。

ひとつは、使い回さなくなることです。
「これは自分が学んだ大事な知識だ」と棚に飾ってしまうと、別の場面で引っ張り出して当てはめる、という発想が出てきません。
一度きりの理解で終わり、応用されないまま眠ります。

もうひとつは、共有しなくなることです。
苦労して身につけた知見ほど、人はそれを「自分のもの」として強く握ります。出し惜しむわけです。
これについては前回も少し触れました。100社以上の現場を見てきて、「うちの会社固有のノウハウ」だと信じられているものの大半は、実は固有ではない、という話です。

少し踏み込みます。

そもそも知識は、握りしめている限り価値を生みません。

お金にたとえるなら、知識は貯め込む「ストック」ではなく、流通して初めて意味を持つ「フロー」に近いものです。
誰かに渡され、使われ、別の文脈で組み替えられて、また次の誰かに渡る。
その循環の中でだけ、知識は新しい価値を生みます。タンス預金のように頭の中にしまった知識は、額面上は持っているのに、世の中では何も動かしていません。

ニュートンの「巨人の肩の上に立つ」という言葉

あの言葉が成立するには、誰かが肩を貸してくれている必要があります。
先人が知識を流通させてくれたからこそ、私たちはその上に立てる。
つまり知識とは、本来そうやって人から人へ渡っていくことで遠くを見せてくれるものなのに、私たちはそれを自分の頭の中に固定して、流れを止めてしまっている。

ここまでは、個人の頭の中で起きていることの話です。

でも、知識を抱え込むのは、本当に個人の心理だけの問題なのでしょうか。

私はそうは思いません。抱え込むのが「正しい」と思えてしまう、外側の構造があるのです。

なぜ、知見は共有されないのか

ここで視点を、個人の頭の中から、世の中の仕組みのほうへ移します。

知見を共有しても、報われないことがあまりに多い。
これが、私が冒頭で書いた「不合理で不条理な仕組み」の正体です。。。

例を挙げます。

OSSにコードを提供しても、感謝の声は届くかもしれませんが、対価が返ってくることはほとんどありません。
社内勉強会で資料を作って発表しても、評価制度には乗りません。(加点とはなりますが、大きなウェイトを占めているわけではありません)
QiitaやnoteやブログにノウハウをまとめてもPVが少し増えるだけ。後輩のために丁寧なレビューを書いても、それは「業務の一部」として静かに消費されていきます。

どれも確かに価値を生んでいます。誰かの時間を節約し、誰かの判断を助け、誰かの成長を早めている。

なのに、出した本人には、評価も対価もほとんど返ってきません。正確に言うと、その行動や成果に対しての評価が難しく対価を返す判断ができない。

これが、私の見解です。

すると何が起きるか。「出しても報われないなら、出さなくていいか」となります。
これは怠惰ではなく、きわめて合理的な判断です。報われない行動が続かないのは、当たり前のことだからです。

ここで、前章の話とつながります。

知識を抱え込むのは個人の心理の問題に見えて、実は「出しても報われない」というこの構造が、その心理を裏側から正当化しているのです。出さない理由を、私たちは無意識に世の中から受け取っている。だから知見は、頭の中に死蔵されたまま流通しない。

個人の認識の壁と、社会の構造の壁。この2つが噛み合って、知識の流れを止めています。

では、どうすればこの流れを取り戻せるのか。

私が出したかった答えが、次の話です。

評価が、循環する仕組みをつくりたかった

WeProcessには、テンプレートマーケットプレイスという仕組みがあります。

自分が実務で磨いたフレームワークを、テンプレートとして公開できる。
誰かが作ったテンプレートを、自分のプロジェクトにそのまま適用できる。前回も紹介した機能です。

ただ、ここでお伝えしたいのは機能の説明ではなく、その裏にある思想のほうです。

公開したテンプレートに「いいね」がつくと、それはポイントとして蓄積されます。そして、そのポイントを換金できる仕組みになっています。

これを単なる「投げ銭機能」だと思ってほしくありません。
私がつくりたかったのは、貢献が評価と対価に変わって循環する回路そのものです。(合わせて、価値の無い高額商材の撲滅も)

前章で書いた不合理を、もう一度思い出してください。価値を生んでいるのに報われない。だから出さなくなる。だから知見が死蔵される。

この流れを逆向きに回したいのです。

出した人には、評価と対価が返る。
受け取った人は、知見を使って自分の仕事を前に進められる。そして受け取る側も。いいねを贈ること自体が、ささやかに報われる設計にしています。

それはなぜか。

良いものを見つけて評価する行為もまた、価値ある貢献だからです。

出す人と受け取る人の両方が報われることで、知識が一人の頭の中に留まらず、人から人へ流れ続ける。

ニュートンの言葉に、もう一度戻ります。

前回は「巨人の肩の上に立つ」という、肩を借りる側の話をしました。でも今回考えているのは、その逆です。

肩を貸す側に、ちゃんと意味があってほしい。

肩を貸す人がいなければ、誰もその上に立てません。
なのに現実では、「肩を貸す行為」、「知見を共有する行為」には、何の見返りもないことがほとんどです。それでは肩を貸す人は増えません。

だから、肩を貸すことが報われる場所をつくりたかった。
それが、評価が循環する仕組みの正体です。

学ぶものから、使い回し、還元するものへ

ここまでの話を、一本につなぎます。

フレームワークは、学んで終わりにするものではありません。

学んだら、使い回す。現場で当てはめて、磨く。磨いたものをテンプレートとして切り出し、世の中に還元する。還元すれば評価が返り、その評価がまた次の誰かの貢献を後押しする。

学ぶ・使い回す・還元する・報われる。この全部が、一つの場所でつながって回る。

それが、私がWeProcessを単なる「プロジェクト管理ツール」ではなく「思考のインフラ」と呼んでいる理由です。
考えることと動くことの溝を埋め、さらに学ぶことと還元することの溝も埋める。知識が個人の頭の中で死蔵されず、人から人へ流れ続ける土台をつくる。目指しているのは、そういう場所です。

最後に

前回は、「考える道具」と「動く道具」が分断されている、という溝の話を書きました。

今回書いたのは、「学ぶこと」と「還元すること」が分断されている、という別の溝の話です。

私たちは知識を学んでも使わず、磨いても共有しません。それは個人の意志が弱いからではなく、「わかった気になる」認識の壁と、「出しても報われない」構造の壁が、二重に流れを止めているからです。

その構造そのものを変えたい。知見を出す人がきちんと報われ、知識が一人の頭の中ではなく世の中を流れていく。そういう仕組みを、WeProcessでつくろうとしています。

そして、ようやくローンチにこぎつけることができました。
肩を借りるだけでなく、肩を貸すことが報われる場所を。

興味を持ってくださった方は、ぜひ一度触ってみてください。前回の記事もあわせて読んでいただけると、私が埋めようとしている2つの溝が、つながって見えてくると思います。

WeProcessの開発の様子も、これから書いていく予定です。よろしければフォローしていただけると嬉しいです。

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