🌀嵐の丘で立ち尽くす者たち 10

前回はこちら
第10話 始まりの大地
嵐は、ある瞬間を境に、嘘のように去った。
あれほど唸り続けていた風は弱まり、雨は音を失い、やがて雲の切れ間から淡い光が差し込んだ。
丘の上には、生まれたばかりの、透き通った沈黙だけが横たわっていた。
それは、嵐が何かを奪い去った後の静けさではなく、新しい世界が初めて息を吸い込む直前の、震えるような静寂だった。
レオンは、ゆっくりと体を起こした。
泥にまみれ、全身が重い。
それでも、確かに――立っていられた。
ホズミは帽子を脱ぎ、胸の前で抱えた。
その耳に、もう風の叫びは届かない。
代わりに聞こえてきたのは、水が流れる音だった。
アルジェリーナは翼をたたみ、静かに息をついた。
羽根の先から、雫が一粒、地面へ落ちる。
三人は、同時に足元を見た。
嵐の中で守り続けた、あの小さな芽。
それはもう、芽とは呼べなかった。
双葉はしっかりと開き、幹はわずかに太くなり、土に深く根を張っている。
ほんの一晩の出来事とは思えないほど、その幹はしなやかに太くなり、葉は嵐の青白さを吸い込んだような、深い緑を湛えていた。
それは、三人が与えた熱と水と風を糧に、この世界の主になろうと背を伸ばしていた。
「……生きています」
ホズミが、静かに言った。
レオンは、何も言わずに頷いた。
アルジェリーナは、胸の奥が温かくなるのを感じていた。
三人は、ゆっくりと顔を上げた。
丘の下に広がる景色は、来る前とはまるで違っていた。
遠くには、赤黒い山が立ち上がっている。
その頂からは、かすかに白い煙が空へ昇っていた。
別の方角には、大きな水の広がりが見えた。
雲から落ちた雨が集まり、川となり、やがて大きな水面を作っている。
さらにその先では、揺れる水蒸気の向こうに、果ての見えない青が広がっていた。
「……あれは」
レオンが、息をのむ。
ホズミは、星図の石を握りしめた。
石は、淡く、静かに光っている。
アルジェリーナは、空を見上げた。
雲が裂けた空に、色が集まり始めていた。
赤でも、青でもない。
名前を持たない、光のゆらめき。
それらは空の高みで溶け合い、やがて、薄い帯のように広がっていく。
まだ、完全な姿ではない。
けれど――確かに、そこに“兆し”があった。
その瞬間、三人の中で、言葉にならない理解が重なった。
「……ここ」
ホズミが、震える声で続ける。
「ここは……始まりなんですね」

誰も否定しなかった。
自分たちは、何かを成し遂げたわけではない。
世界を作ろうとしたわけでも、変えようとしたわけでもない。
ただ、歩き。
ただ、触れ。
ただ、良かれと思って選び、そして失敗した。
その積み重ねが、
この景色を生んだ。
丘の上で、苗木が風に揺れた。
それは、もう守られるだけの存在ではない。
根を張り、空を仰ぎ、
この世界と共に、成長しようとしていた。
レオンは、帽子を深く被り直した。
ホズミは、星図の石を胸に抱いた。
アルジェリーナは、そっと翼をたたんだ。
三人は、まだ知らない。
この世界が、どんな未来へ続くのか。
自分たちが、帰れるのかどうか。
けれど――
丘の上に立つ三つの影は、確かに同じ方向を見ていた。
始まったばかりの、大地を。
そして空では、名もなき光が、静かに、集まり続けていた。
世界は、ここから未来へと、歩き出す。
三人は、ただ呆然とその光景を見つめるしかなかった。
自分たちが何に触れ、何を目覚めさせてしまったのか、その正体は霧の向こうに隠れたままだ。
分かっているのは、ここがもう「知っている場所」ではないということ。
そして、目の前に広がるこの未知の大地を、一歩ずつ確かめに行くしかないということだけだった。
三人は知っていた。
ここが、この旅の終わりにして、始まりの場所なのだと。
はい‼️
どうも三人は来ちゃったみたいですね…
オーロラランドの創世記‼️
そして、生命の樹の誕生に立ち会っちゃいましたね🤞
果たして三人は元の世界へ戻れるのか⁉️
わし(ムヒ)の持つnoteかだけが知っている😁
次回はこちら
最後まで読んで頂きありがとうございます♪
少しでも面白かったな〜と感じたら、
スキ、コメント、フォローをよろしくお願いします。
今後の励みになります。
いいなと思ったら応援しよう!
🌈オーロラランド復興基金‼️
レオンとホズミの旅を応援してくれませんか?下の「チップ」から、二人の「おやつ代」などの旅費を募っています。頂いた応援は、書籍化など、世界中にオーロラを取り戻す活動に大切に使わせて頂きます。二人の冒険を支える仲間になってくれたら嬉しいです🦔🦎