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🟡黄の章:砂漠の伝承 ― 古代の知恵を授けるもの 9


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   ムヒのお勧めクリエイター
    鈴蘭-ショートショートさん

   私には書けないショートショート
よくこんだけ思いつくな〜と感心してばかり…


  第九章 金色の砂龍

 レオンとホズミは、ムヒが自らを犠牲にして拓いた道を進み、巨大な竜巻の中心へと、吸い込まれていった。

竜巻の中心は、外から見た想像を遥かに超える、異次元の空間だった。
彼らの体は、風と砂の螺旋に乗り、重力から解き放たれたかのように、軽々と天高く、天高く、舞い上げられていく。

それは、ただの風の流れではなかった。


それは、この砂漠の全ての風と砂が一つの意志を持って、彼らを天空へと運んでいく神聖な儀式のようだった。

視界は、黄色の砂塵で満たされていたが、ふと、その砂塵の切れ間から、眼下に広がる光景が見えた。

それは、果てしない広大な砂漠の海だった。

彼らがこれまで歩いてきた、橙の断崖、砂漠のオアシス、そして、今、彼らがいた神殿が、まるで、小さなジオラマのように、眼下に広がっている。

レオンとホズミは、砂漠全体を一望できるほどの高さまで、舞い上げられていたのだ。

「レオンさん……!
これが……この砂漠の本当の姿なんですね……!」


ホズミは、その途方もないスケールに、息を呑んだ。
彼の目に映る、壮大な砂漠の景色は彼がこれまで旅してきた、どの景色よりも深く、そして美しかった。
彼は、自分の胸元に収められた【星図の石】を、そっと握りしめた。
その石は、この地の全ての風と星と、そして砂漠の心と、共鳴しているかのようだった。

レオンも言葉を失っていた。
彼は、幼い頃から、この砂漠の空を見上げ、その向こうに、何があるのかを追い求めてきた。
しかし、まさか、この砂漠全体を空から見下ろすことができる日が来るとは夢にも思っていなかった。
彼の心には、遠い昔ムヒから聞かされた、古い伝承の物語が、鮮やかに蘇ってきた。

しかし、その感動は、長くは続かなかった。



 彼らの目の前に、竜巻の渦の中心から、一つの存在が、ゆっくりと、しかし確実に、その姿を現した。

それは、金色に輝く巨大な龍だった。

全長は見渡せないほど長く、その体表は高速で回転する黄金色の砂の粒子で覆われていた。

その粒子は、まるで生きているかのように、脈打ち光を放っている。
その姿は神々しく、そして同時に圧倒的な恐怖を彼らに与えた。

「あれが……
ムヒさんの言っていた……
この地の意志……」

レオンは、その圧倒的な存在感を前に言葉を失っていた。
彼の瞳はその龍の瞳に釘付けになっていた。
その瞳は怒りに満ちていたが、同時にどこか深い悲しみと、孤独を宿しているかのようだった。

砂の龍はゆっくり静かに、しかし力強く咆哮を上げた。


その咆哮はただの音ではなく、風そのものを操り彼らの耳に直接、響き渡った。

「――お前たちは、この地の者ではない……。
この砂漠の記憶は、お前たちを受け入れない……!」

その声は、レオンとホズミの心の中に、直接響き渡った。
それは彼らの心の中に眠る過去の過ちや弱さを、具現化させた彼ら自身の声だった。

砂の龍はその巨大な尾を一振りした。

すると、竜巻の渦がまるでその意志に従うかのように方向を変え彼らのいる場所へと襲いかかってきた。

「レオンさん! 危ない!」


ホズミはそう叫びレオンに強くしがみついた。

高速で回転する砂の粒子の渦が、彼らの体を容赦なく飲み込もうとする。
その粒子に触れれば、肉は削られ骨までも一瞬で粉々の塵になる。
彼らの皮膚がその砂の粒子によって微かにしかし確実に傷つけられ、皮膚が削られ血が舞う寸前だった。

「ぐっ……!」


レオンは、ホズミを庇いその砂の渦に、必死に抵抗した。
彼の黒曜石のナイフが、この地の風と共鳴するように激しく輝きを放っている。
しかし、この圧倒的な力の前に、彼の力はあまりにも無力だった。

彼らは、まるで巨大な荒波に揉まれる小さな木の葉のようだった。

砂の龍の咆哮は、彼らの耳を劈き、視界を完全に奪っていく。
レオンとホズミはもう、自分の意志で動くことさえできなかった。

その時、レオンは自分の心の中に、一つの声が響いてくるのを感じた。

それは遠い昔、ムヒから教わった、この砂漠での生き方だった。

『砂漠では、風を読め。
風は、時に砂の壁を作り、
時に砂の道を拓く。風の流れを読めれば、この砂嵐の中心も、危険な場所ではない……』

レオンはその言葉を胸に、自分の体を砂の渦に、任せてみた。
すると、彼の体が砂の渦と一つになっていくのを感じた。
レオンは砂の渦の流れを正確に読み取り、その流れに逆らうのではなく、その流れに乗って砂の龍の攻撃をかわしていった。
彼の瞳はこの砂の龍のわずかな動きの変化をすべて見通していた。

「ホズミ!
大丈夫だ!
この竜巻は、俺たちを飲み込もうとしているんじゃない!
俺たちの力を、試しているんだ!」

レオンはそう叫びホズミを励ました。

ホズミもまた、レオンの言葉を信じ自分の心の中にある風の声を聴こうとした。
彼の羅針盤は相変わらず沈黙したままだったが、彼の胸元に収められた【星図の石】が、竜巻の風と共鳴するように、激しく、しかし力強く輝きを放っている。

 その【星図の石】から放たれた光は竜巻の渦を微かに、しかし確実に照らし出し、砂の龍のその光輝く急所を彼らに示していた。

「レオンさん!
あそこです!
あの光輝く場所が龍の急所です!」

ホズミはそう叫び、光が指し示す方向へとレオンの体を力強く押した。
レオンはホズミの言葉を信じ、砂の渦の流れに乗って、砂の龍のその急所へと、一気に駆け上がっていった。

レオンが力強く握りしめた黒曜石のナイフが、この地の風と共鳴するように激しく輝き、その刃が砂の龍の急所へと真っ直ぐ向かっていく。

しかし、その瞬間

砂の龍は、レオンの動きをすべて見通していたかのように、その巨大な尾をレオンへと振り下ろした。

レオンはその一撃を避けることができなかった。

彼の体は砂の龍の尾によって吹き飛ばされ、尾が触れた部分の肉は裂け、その傷口からは血が滴り落ちる。

その時、彼らの背後から一つの影が現れた。

それは全身から血流しながらも、その瞳には強い意志を宿したムヒの姿だった。


「馬鹿者!
そこで、終わりか!」


ムヒはそう叫び、そのボロボロの身体を盾とし、レオンとホズミの前に出る。

だが砂の龍の攻撃は一切止むはずも無く、ムヒのポロポロの身体に容赦なく襲いかかる。

ムヒは己の身体を盾とし、レオンとホズミを守りながら、かろうじて急所をかわし必死に反撃のチャンスを伺う。

グォオオオォォォーー‼️

砂の龍が咆哮をあげ、口から砂の粒子をビームの様に3人に向かって吐き出す。

その砂の粒子のビームからレオンとホズミを守ろうと2人を強く押し、弾き飛ばすムヒ。

バァシューー

その瞬間、ムヒの左腕がまるで存在しなかったかのように、砂の粒子のビームによって、一瞬で削ぎ落とされた。
肩口から、血が止めどなく流れ出す。

「ムヒー‼️」


レオンはその光景に絶叫した。

しかし、ムヒはその痛みに、一切の表情を変えることなく、右手を砂の龍へと力強く突き出した。


「――古き知恵よ!
今、この地の怒りを鎮めたまえ!」

ムヒは、最後の力を振り絞り、砂の龍の、その光輝く急所へと古代の術を叩き込んだ。

ムヒの術が龍に命中した、その瞬間‼️


砂の龍は断末魔の叫びを上げ、その巨大な体を、ゆっくりと、しかし確実に崩壊させていった。

金色に輝く砂の粒子が、
竜巻の渦全体に広がり、
まるで黄金の雨のように降り注いだ。


そして、竜巻の轟音は、次第に静寂へと変わっていった。



しかし、その静寂は、彼らが、天高く舞い上げられているという、現実を彼らに突きつけた。


竜巻が消滅した今、彼らを支えるものは、何もない…



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