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🌈虹の橋を架ける者たち 6




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6話 生命の樹へ ― 虹の橋の帰還


 光の奔流が、潮が引くように収束していく。
 七色の輝きが織りなしていた次元の回廊が薄れ、視界を覆っていた圧倒的な色彩が、現実の景色へと置き換わっていく。

 ふわりと浮遊していた身体が、重力の枷(かせ)を思い出していく感覚。
 スタッ、と乾いた音が二つ、ほぼ同時に響いた。
 世界は、ひどく静まり返っていた。
 頭上を見上げれば、あの禍々しく渦巻いていた紫の空はすでに遠く退いている。

まだ完全な青空とは言えない。

薄墨を流したような灰色がかった雲が空の高い位置を流れ、その隙間から射し込む光は、頼りなげだが、どこか神聖な透明度を保っていた。
 ヒョウモントカゲモドキのレオンとハリネズミのホズミの二人は、懐かしい大地の感触を確かめるように立ち尽くしていた。

 足元の土は柔らかく、しかしどこか痩せていた。
かつて潤沢な魔力を含んで黒々としていた大地は、長きにわたる不和と混乱によって生気を吸い取られ、乾いた灰褐色に変色している。
 一歩踏みしめるたび、カサリ、と乾いた音が鳴る。

 ――帰ってきた。


 その実感が、遅れて二人の胸に込み上げる。

 そして、視線の先には、この旅の終着点であり、すべての始まりの場所がそびえていた。

    生命の樹。


 かつてオーロラランドの中心として、天を衝くほどの偉容を誇り、あふれんばかりの光と命を循環させていた絶対的な存在。

 だが今、二人の眼前に広がる光景は、輝かしい姿とはあまりにも異なっていた。

 巨木は、確かにそこに在った。


 だが、その姿は満身創痍(まんしんそうい)と呼ぶにふさわしかった。
 天に向かって広げられた枝の多くは折れ、あるいは黒く炭化している。
かつて世界中を照らした葉の輝きは失われ、今はわずかに残った葉が、風に吹かれて頼りなげに揺れているだけだ。

 何より痛々しいのは、その幹だった。
太古の岩盤のように強固だったはずの幹には、雷撃を受けたかのような深い亀裂が縦に走り、樹皮の内側にあるはずの脈動が、むき出しになっている。
 亀裂の奥で明滅する光は、淡く、儚い。
 枯れてはいない。
 死んではいない。
 けれど、それを「生き返った」と呼ぶには、あまりにも痛々しい姿だった。

「……確かに、変わったな」

 レオンが、喉の奥を震わせて低くつぶやいた。
 その太い尻尾が、地面をゆっくりと掃くように揺れる。
彼の縦に割れた瞳孔が細まり、周囲の風景を鋭く切り取っていた。
 見上げた空は、以前よりも澄んでいる。
 重く垂れ込めていた不穏な雲は消え、風からは、肌を刺すような冷たさが失われていた。

「はい……調和は、正されています」

 ホズミは静かに答え、その場で地面に膝をついた。
 背中を覆う無数の針が、風になびくようにさわさわと音を立てる。
彼は小さな手をそっと伸ばし、乾いた土に触れた。
 鼻先をひくつかせ、大地の匂いを嗅ぎ取る。
 焦げ臭さは薄れている。
代わりに感じるのは、湿った土と、微かな植物の香り。
 その瞬間――

ドクン。

 掌(てのひら)を通して、微かな、けれど確かな温もりが伝わってきた。

「……息を、しています。」

 ホズミの黒くつぶらな瞳が、驚きと安堵に揺れた。
 生命の樹は、まだ弱々しいながらも、確かに呼吸していたのだ。

虹の橋は架けられた。

 七つの光は統合され、世界の歪みは正された。
 それでも。

「まだ元通り、ってわけじゃねぇな」

 レオンは腕を組み、冷静に現実を見据えた。
 彼の言葉は、常に的確だ。
甘い希望的観測だけで動くことはしない。

「ええ……」


 ホズミは立ち上がり、生命の樹を見つめたまま言葉を続ける。
 その声音は穏やかだが、芯の強さが響いていた。

「癒え始めています。
 けれど、深く刻まれた傷は……
 時間と、そして“想い”を必要とします」

 ヒュゥゥ……と、風が吹いた。

その風は、以前のように荒々しくはなかった。
けれど、どこか迷いを含んでいる。
精霊たちの気配が、あたりに漂う。
姿は見えない。
だが、敏感な二人の感覚には、彼らの戸惑いが手に取るように伝わってくる。

 世界は、救われた。


 しかし、救われた世界は、どう生きればいいのかを、まだ知らない。

「……わたくし」

 ホズミは、静かに息を吸った。
 小さな胸いっぱいに、この世界の空気を取り込む。

「このオーロラランドが、完全に息を取り戻すまで……
 諦めたくありません」

 その声には、揺らぎがなかった。
 彼は一度言葉を切ると、隣に立つレオンを見上げた。

「だろうな‼️」

 レオンは短く答え、ニヤリと口の端を吊り上げた。
彼は一歩前に出る。

「なら、やることは一つだ。
生命の樹を、ちゃんと癒す方法を探す」

 彼は空を見上げ、そして大地を見据えた。

「世界は戻り始めてる。
だったら、俺たちが止まる理由はねぇ」

 その頼もしい言葉に、ホズミは目を細め、優しく微笑んだ。

「はい……行きましょう。
この地に、真の再生をもたらすために」

 二人は並び、再び歩き出す。
がっしりとしたレオンの足取りと、トコトコと続くホズミの足音。
 種族も大きさも違う二つの影が、荒野に長く伸びていく。
 まだ完全ではない世界を。
 それでも、確かに未来へと続く道を。


 ザザ……ッ。
 その背後で、生命の樹の枝が、わずかに揺れた。
 ――まるで、
 勇敢な二匹の背中を「見送る」ように。



さぁ〜ついに2人はオーロラランドへ戻ってきましたね!

でも、2人は納得いってませんね…

次回は…

わし(ムヒ)のnoteだけが知っている。


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2人の冒険はここから始まった‼️

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