リーマントラベラーに背中を押されて
リーマントラベラー。
今までに聞いたことはあったけれど、こんな方だったとは。一緒に書店を歩いているとき、彼が立ち止まっていった。「まゆちゃん、これ好きそう。」それがリーマントラベラーこと東松氏の文庫で、旅好きの私はすぐに手に取った。
読んで思ったことは3つ。
まず、自分の思い込みを崩す作業が楽しいという、旅にでる理由への共感。
次に、男性じゃないとできない旅だなという少しの諦め。
最後に、週末だけでもこんなに旅ができるという旅熱の再燃。
旅をもっと身近にしてくれる、熱い1冊だった。
ところで私は、昨年1年で20か国をまわった、正真正銘の会社員だ。つまりは、リーマントラベラー。会社員をしながら旅を愛する、まさに著者と似たスピリッツを持って日々生きている。
大きく違うと思ったのは、著者はコロナのずっと前、限界会社員がわんさかいた時代にリーマントラベラーになったこと。そして休みが取りづらく仕事命というイメージがある、広告代理店勤めということだ。私はコロナ禍の入社で、働き方もフレキシブル、有休もとてもとりやすい。私が20か国に行くのと、彼が週末だけで世界一周をするハードルには大きな隔たりがあると思ったのだ。だから、純粋に尊敬の念がある。ものすごい。
そして、旅が面白いのは、固定観念が壊されるからだと話す著者に共感した。当たり前だと思っていた世界が、自分の半径5メートルの共通認識が、旅ではあっという間に壊される。旅先で全く違う生き方をみると、自分の生活に向ける視線も変わってくる。ただ素敵な景色やおいしいものを食べるのではなく、どんな場所にも誰かの日常があると身を持って学ぶのが旅だと私自身も思う。
一方で、これは男性じゃないとできないぞと思うこともあった。彼の旅のスタイルが、現地の人ととにかく絡んでいくスタイルなのだけれど、これを女性がどこの国でもできるわけではない。リーマントラベラー氏は身長180センチ、バスケとアメフトで鍛えたでっかいからだがあり、顔も結構いかちい感じである。完全に安全が保障されたひとなどいないとはいえ、私が誰かを襲う犯人であれば、まず最初に彼を選んだりはしない。アジア人ながら、強面で図体も大きいというのは、特にひとり旅で知らない環境に飛び込んでいくときにすごいアドバンテージだと思う。
私は慎重な性格なのもあるけれど、ひとり旅での交流には非常に神経質になる。やっぱり身長も低いしさほど可愛くなくても女性だし、力ではどうしようもないところはある。だから夜は出歩かないし、一人でいるときに声をかけられてもついては行かない。偶発的な出会いの喜びは、制限されてしまう。
けれどもそれ以上に、著者の旅への熱意はすごい。そもそもどんな旅がいい、悪いということも彼は言っていない。彼にとっての旅の目的が明確化されているだけで、どんな旅をしよう! と強制されないのも心地いい本だった。週末だけで行ける国が並べられていたり、子連れでの旅のエピソードがあったり、「無理かもしれない」としり込みしてしまいそうな場面で背中を押してくれるのだ。
私も、昨年の旅行が財布にも体力的にもひびいて、今年は国内で温泉にばかりはいっている。でも本当は、まだまだ行きたい国がある。今行かないと、後悔するんじゃないの。ときどき自分の声が聞こえる気がする。でも、ライフステージも変わったばかり、仕事も変わったばかりで、今無理をしなくてもなあ。と、まさに中途半端に旅から遠ざかっていた時に、この本を読んだ。
読めば読むほどに、やっぱりわくわくしている自分がいる。行きたい、行かなきゃ。立ち止まっていた足が進みたがっている感覚がある。
次の海外旅行はいつになるだろう。ゴールデンウイークの旅は決まっているけれど、こんなに行きたいところだらけなら無理やりねじ込んでしまおうか。わくわくする気持ちとともに本を閉じる。旅はここから始まっている。
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