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「ツール」ではなく「概念」で探す段階 ~ Agent Engineering|Agent Harness


新しいAIツールが毎日のように登場します。
「〇〇を試してみた。」「〇〇がすごい。」
そんな神級ツールを紹介する記事が次々に公開され、数週間後には新しいツールへ話題が移っていきます。本当に神だったのか実感するには、時間が必要です。でもトレンドは待ったなしに変化します。私は最近、そんな情報を追いかけることに興味が湧かなくなりました。



きっかけは、Claude Code向けのOSS「ECC」を調べたことです。
https://github.com/affaan-m/ECC
読み進めるうちに、「Agent Harness」という言葉に行き当たりました。
正直に言うと、何度読んでも意味が分かりませんでした。


説明を読んでも、別の記事を読んでも、腑に落ちない。分かったふりをすることもできましたが、それはやめました。分からないまま、しばらく置いておくことにしたのです。これは、Dockerが出た頃、Kubernetesが出た頃、
もっと言えば、C++に抽象化(OOP)が付属した時も同じでした。

※継承と仮想関数による
抽象化(OOP)が分からな過ぎて
15年かかった記憶も蘇る


ここで、ある記憶が蘇りました。
10年ほど前、

アジャイル、DevOps、Ansible

これからは、アジャイルだよ
と誰かがマウントを取っていた

という言葉が同時に広がりました。
当時の私は、それぞれを個別のツールや手法として理解していました。アジャイルは開発の進め方、Ansibleは構成管理の道具。別々の棚に並べていたのです。



その理解が変わったのは、つい最近のことです。今なら分かります。
あれらは「レイヤが異なる話」でした。
プロセスの話と、実行の話。

比べる対象ですらなかったのです。
けれど、思想の方向性はよく似ていました。
「開発から運用までを一つの流れとして考える」
という同じ方向を向いていた。比較でもライバルでもなかった。
ただ、層が違う場所で、同じ思想が別の形を取っていただけだったのです。



10年かけて、ようやく分かったこと。それをAIが、もっと短い時間で気づかせてくれました。そしてAIの世界でも、同じことが起きています。

ECC、OpenHands、Mastra、
LangGraph、Continue、Mem0……。


一見すると別々のOSSですが、実は共通して目指しているものがあります。
それは、「AIをどう賢くするか」ではありません。
「AIをどう働かせるか」です。

近年は、モデルの性能競争だけではなく、

Memory (記憶をどう持たせるか)
Tool Use (道具をどう与えるか)
Role Definition (役割をどう与えるか)
Evaluation (評価をどう行うか)
Guardrails (失敗した時にどう立て直すか)

といった概念が急速に重要になっています。

つまり、LLMは「頭脳」でしかありません。その頭脳が能力を発揮するためには、記憶があり、道具があり、役割があり、評価があり、失敗したら立て直す仕組みが必要です。


ブームの構造は毎回のように、そっくりになる


ブームというものには、いつも同じ構造があります。
レイヤが異なる話や、メーカー同士の主導権争いから、そっくりな名称のサービスが大量に生まれます。思想は同じなのに、言い方だけが違う。中身はほとんど同じなのに、旗印だけを変えて次々と現れる。


その大量の類似品を一つずつ試すことに、私はもう価値を感じません。

大切なのは、その山の中から、技術がどう変化しているのかという本質を見極めることだと思うようになりました。
正直な気持ちを言えば、私はトレンドを追いかける側にいたくありません。共通の思想と本質を浮き彫りにして、そこからトレンドと未来を作る側にいたいのです。



ローカルモデルを追いかけたり、高スペックなGPUやVRAM容量を追い続けたりする記事もよく見かけます。それを否定するつもりはありません。それは人それぞれの価値観であり、優劣の話ではないからです。ただ、私はそちらの道を選ばない、というだけのことです。

だから最近は、新しいOSSを見るたびに、
私は別のことを考えるようになりました。

「このツールは何ができるのか?」ではなく、
「これは、どの思想の系譜なのか?」

という問いです。
ObsidianやLogseqも同じでした。
どちらが優れているかという議論は、
数年後には意味を失うかもしれません。しかし、

「知識をどう蓄積するのか」
「AIが理解しやすい形で情報を残すにはどうするか」

という問いは、これからも残り続けます。

私は個々のOSSを追いかけることに価値がないと言いたいわけではありません。むしろ、新しいOSSには、その時代の開発者たちが直面した課題や、「こうすればもっと良くなる」という発想が凝縮されています。
使い方を学ぶ以上に、その設計思想に触れることが大きな収穫になります。


実際、私は一つのOSSを調べている途中で、「これは別の分野にも応用できるのではないか」と気付くことが少なくありません。その瞬間に得られるひらめきは、一つのツールの知識ではなく、複数の分野をつなぐ新しい発想へと変わります。

生まれたアイデアの断片は、すぐに役立つものばかりではありません。しかし、後になって別の技術や別の課題と結び付いたとき、思いもよらない解決策や、新しいサービス、仕事の改善につながることがあります。

だから私は、OSSを「使うため」に追いかけるのではなく、「発想を得るため」に追いかけています。一つのリポジトリは、一つのツールであると同時に、世界中の開発者が試行錯誤した結果が詰まった、小さなアイデアの鉱脈でもあるのです。

技術は変わります。ツールも入れ替わります。
しかし、思想は次の世代のツールへ受け継がれます。
私は、その「系譜」を理解することこそ、AI時代のもっとも寿命の長い知識ではないかと感じています。


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