図形パズルから「ものの考え方」を考える【時事無斎雑話】
幾分愚痴が入ってきますが、最近、ネットニュースを見ていると「知らなければ恥」「頭の良い人なら解けるはず」「○秒で解ける?」のような煽り文句と共に出題されているクイズやパズルが頻繁に目につき、時にはそうした記事が、はるかに重要なはずのニュースを押しのけてランキングの上位に食い込んでくることさえ珍しくありません。
こんなクイズ・パズルや「ネットの声」を受け売りにするだけのまとめ記事でPVを稼ごうとするのではなく、せめて「オールドメディア」を見下すならそのオールドメディアが恐れ入るような調査報道でもしてみたらどうか、と内心毒づきながら、それでもときどき解いてみます。しかし、たとえば難読地名や慣用読みなどは要するに「知っているかどうか」を問う問題で、PCも変換してくれなかった「散布」や「長流枝」(どちらも北海道の地名です)を私が読めるからといって、決してそれが偉いわけでも「頭が良い」証明になるわけでもないでしょう(注1)。算数のクイズも、単に計算の速さや手順だけを問うようなものが多く、「これが解けたからといって何なのだ」と釈然としない気分になります。
注1:頭の良い人はだいたいにおいて知識や語彙も豊富なものですが、だからといって頭の悪い人間がただ情報を丸暗記したところで、それで頭が良くなるものではありません。ネットで仕入れた怪しげな情報や胡散臭い主張を、世の真実を知ったつもりになって大喜びで受け売りしているネット民の皆さんなど良い例です。
その中でときどき見かけるのが図形パズルです。中にはけっこう興味深いものもある一方、例えば三角形の内部を直線でいくつかに分割して「この中に何個三角形があるでしょうか?」という問いを出し、途中の考え方を示さないまま最後に答えだけを書いて「できましたか?」という安直な終わらせ方をしているものも少なくありません。
そうした例をいくつか見るうちに少々苛立ちがつのり、(嘉門タツオ「ハンバーガーショップ」の節で)「♪もしも自分が図形パズルの出題者だったら、こんな問題出してやるぞ~」などと口ずさみながら、自分でも問題を作ってみました。
問1:AとBの三角形の内部に含まれる三角形は、どちらが何個多いでしょうか【図1】

さて、ここで私が問いたいのは「答え」ではありません。その「答え」に至るまでの「考え方」です。
単純に1つ1つ数えていく、という方法もあるものの、それでは数え間違いや見落としも出てきますし、もっと複雑なパターンへの応用もききません。ここは、問題の中にある法則性に着目して解くことを考えてみましょう。
Aは単純です。1つの三角形が底辺と平行な線で4段に分割されており、1段あたり1個、つまり4個の三角形が含まれています(【図2】)。

ではBはどうでしょう。よく見ると、底辺と平行な線で分割された上の段には、頂点からの線で縦方向に分割された小さな三角形が2つとそれを囲む大きな三角形が1つ、つまり3個が含まれ、2段目を合わせた大きな三角形の中にも、上の段にあるのと相似な三角形がそれぞれ含まれています(【図3】)。つまりBに含まれる三角形の数は(1+2)個×2段で合計6個、Bの方が2個多い、という答えになります。

この考え方は、さらに応用がききます。
問2:三角形Cの内部には三角形がいくつ含まれるでしょうか【図4】

こうなると、1つ1つ数えていたのでは不正確な上に時間もかかります。しかし上で示した考え方を応用すれば、大幅に短い時間で、かつ正確に求めることが可能になります。多少余裕をもって30秒で解いてみて下さい。
……できたでしょうか。それでは解説します。
考え方としては、問1のBと同様、1番上の段に含まれる三角形と、2段目・3段目を含めたより大きな三角形の中にある相似な三角形の合計を求める、という手順になります。1番上の段には【図5】に示した通り「1+2+3」の6個の三角形が含まれ、それが3段あるわけですから、合計は「(1+2+3)×3=18個」となります。

さらに、勘の鋭い人であれば、ここまでの説明で「頂点からの線で縦方向に分割された三角形の内部に含まれる三角形の個数には、一定の規則性があるのでは?」と気付くかもしれません。正にその通り。【図6】に示したように、頂点からの線でN個(【図6】では4個)に分割された三角形に含まれる三角形の数は、

最小の三角形を全て含むものが1個
+最小の三角形を1つだけ除いたものが2個
+最小の三角形を2つ除いたものが3個
+……
+最小の三角形がN個
となり、合計は「1+2+3+…+N」で表せます。つまり「頂点からの線で縦方向にN個、底辺と平行な線でM段に分割された三角形の中に含まれる三角形の個数」は
含まれる三角形の個数=(1+2+3+…+N)×M
という式で求められるわけです。この規則性に気付いてしまえばしめたもので、いちいち数えていられないくらいに細かく分割された三角形でも、その内部に含まれる三角形の個数を計算によって短時間で正確に求めることができます。このように物事をパターン化・一般化しその背後にある法則を見つけられるかどうかは、単なる知識の丸暗記よりはるかに重要だと思うのですが、前述の通り、ネット記事のクイズやパズルでは、その部分があまり深く掘り下げられていないのが残念です。
最後に、これまでの説明の総集編となる問題をどうぞ。
問3:三角形D(頂点から縦方向に6分割×底辺と平行な線で3段に分割)と三角形E(頂点から縦方向に5分割×底辺と平行な線で4段に分割)の内部に含まれる三角形の数は、どちらが何個多いでしょうか【図7】

答えは敢えて書きません。自力で解いてみて下さい。ただ「いきなり問3を出されても解けなかっただろうけれど、考え方が分かった今なら解ける」という方もおられるでしょう。こうした「ものの考え方」の重要性に気付くことが、単に「答え」を知ることよりも(人生のあらゆる局面で)大切であることを理解していただければ、と思い、記事にしてみました。それではまた。
