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あなたの金融資産を盗む【ステルス泥棒】、日銀データが暴く静かなる資産崩壊の正体

「コツコツ真面目に貯金すれば、将来は安泰」――。

今の50代以降の方々を中心に、このようなフレーズをお聞きになった方は多いかと思います。

こんなイメージでしょうか

私たち日本人が”お守り”のように信じてきたフレーズ。もし、あなたが今もそう思っているなら、ぜひこのコラムを最後までお読みください。なぜなら、その常識は、もう過去のものになったからです。


皆さん、こんにちは。村田雅志です。

実は今、私たちの預金が、気づかれないうちに、その価値を急速に失っています。そのことは、日本銀行の「資金循環統計」と総務省の「消費者物価指数」という2つの統計から明らかになっています。

これは、遠いどこかの国の話でも、一部の富裕層の話でもありません。あなたの、そして日本のすべての家計で、今まさに起きている「静かなる変化」なのです。


あなたの金融資産「実質マイナス3.2%」

「給料は少し上がったのに、なぜか生活は楽にならない…」
「節約しているはずなのに、月末にはお金が残らない…」

そう感じている方は多いのではないでしょうか? その感覚は、気のせいではありません。

日銀が発表する資金循環統計では、家計(個人の集合体)が保有する金融資産の残高が発表されています。ここでいう金融資産とは

・現金
・預金
・上場株や投資信託
・国債
・生命保険
・年金
・外貨証券

などです。

資金循環統計では、物価変動を考慮しない「名目」の金額のみが公表されています。そこで総務省が発表する「消費者物価指数」を使って、”物価変動”も考慮した「実質」で、家計が保有する金融資産残高の変化を見てみました。

すると最新データである2025年3月末時点の金融資産残高(実質)は、昨年の同じ時期(2024年3月末)から3.2%も減少していることが分かりました。名目では昨年とほぼ同じ水準(+0.3%)でしたので、家計が保有する金融資産は「インフレ」という見えない力によって、実質的な価値を大きく失ったことになります。

ちょっと具体的に考えてみましょう。

仮にあなたの金融資産が全て銀行に預金として預けられていたとします。その預金額は”1000万円”とします。すると、この預金は1年後に968万円分のモノしか買えなくなっていた、ということです。32万円分の購買力が、何もせず、ただ預けていただけにもかかわらず、静かに消え去ったことになります。

縦軸:前年からの変化(前年比、%)横軸:四半期ごとにプロットした年

特に深刻なのは、家計資産の半分以上を占める「現預金」の実質価値が、統計開始以来、最大のペースで減少していることです。

縦軸:前年からの変化(前年比、%)横軸:四半期ごとにプロットした年

かつて日本で最も「安全」と信じられてきた預貯金が、今やインフレという「見えない泥棒」によって、無防備に価値を奪われる資産へと化してしまったのです。

インフレという「見えない泥棒」※イメージです

なぜ、こんな事態に? 日本経済に起きている3つの地殻変動

この「静かなる資産崩壊」の背景には、日本経済が数十年間続いたデフレ時代を終え、誰も経験したことのない新しい時代へ突入したという、歴史的な転換点があります。具体的には、3つの大きな地殻変動が起きています。

1)“資産防衛”のための「強制投資」時代へ

デフレ時代、物価は下がるのが当たり前でしたから、現金は持ってさえいれば購買力が増える「優れた資産」でした。しかし、今は全く逆です。インフレで現金の価値は減る一方となっています。

政府は新NISAなどを喧伝し、「貯蓄から投資へ」と声を上げていますが、実際は余裕のある人が行う優雅なものではなく、インフレから自分の資産を守るための「生き残りをかけた強制投資」時代の幕開けを伝えているように思えます。

縦軸:前年からの変化(前年比、%)横軸:四半期ごとにプロットした年

2)「安全資産」の崩壊と将来不安

日本人が最も信頼してきた預貯金だけでなく、老後の生活を支えるはずの生命保険や年金すらも、インフレによって実質価値を失っています。保険や年金の運用先の多くは国債などの低利回り商品であり、インフレに追いつけないのです。

「老後のために」と信じて積み立ててきた資産が、実は目減りしていた。この事実は、人々の将来不安を煽り、財布の紐を固くさせる致命的な要因となります。これが、賃金が上がっても景気回復を実感できない大きな理由の1つです。

3)資産ポートフォリオが運命を分ける「インフレ格差」の拡大

「株を持っている富裕層だって、今の株価下落で損をしているのでは?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

じつは、その通りです。

足元(2025年3月末)を見れば、株式・投資信託も実質マイナス(-3.1%)となっています。これはさきほどお示ししたグラフからもわかります。

しかし、ここで気をつけていただきたいのが、資産の「性質」の違いです。

インフレで失われた預金の購買力は、(預金金利がインフレを上回らない限り)二度と戻ってきません。 価値が一方通行で削られ続ける形となりがちです。

一方、株価の下落による損失は、将来の景気回復局面で再び価値が戻る可能性があります。歴史的に見ても、株式は長期的にインフレを上回るリターンを生んできました。つまり、回復の”望み”があるのです。

この「資産の回復力の差」こそが、中長期的に格差を(残酷なまでに)広げていく正体です。
預金中心の人は資産が減る一方ですが、株式や投資信託を持つ人は、今の痛みを乗り越えた先に資産を回復させ、さらに増やす可能性を持っています。

地殻変動の時代をどう乗り切るか?

では、私たちはこの歴史的な転換期に、どう立ち向かえばいいのでしょうか?
悲観する必要はありません。変化の時代は、正しく学び、行動する者にとっては大きなチャンスの時代でもあります。

私が大事だと思っていることは、

・デフレ時代の常識を捨てる
・インフレ時代の新しい金融リテラシーを身につける

の2つです。

預金が安全だった時代は終わりました。これからは、一人ひとりが自分の資産と未来を守るために、経済の大きな流れを読み、賢く行動することが求められます。それは、難しい金融工学の話ではありません。まずは、今、世の中で何が起きているのかを正しく知ることから始まります。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

今回のコラムでは、日銀データに基づき、日本で今、起きている「静かなる資産崩壊」の現実について解説しました。

残念なことですが、私たちは、のんびりと過ごすのではなく、経済、金融、政治といったことを知識として身につけて行くと同時に、リスクをいち早く「察知する」ことが自分や家族の生活を守るために必要な時代になってしまったように感じています。

私のnoteでは、これからも経済・金融のプロとして、専門的なデータを分かりやすく読み解き、「では、具体的にどうすればいいのか?」という問いに答える、実践的な知識や洞察を発信していきます。

このコラムが「面白い」「役に立った」と感じていただけましたら、ぜひ記事への「スキ」と、私のnoteアカウントの「フォロー」をしていただけると嬉しいです。

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また次のコラムでお会いしましょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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