【利上げできない日銀】が招くリスク、スタグフレーション時代の「資産格差拡大」への備え
こんにちは。村田雅志です。
最近、ニュースで「景気回復が遅れている」と聞くのに、物価は上がる一方だと感じていませんか。
しかも、給料は上がったはずなのに、手元のお金があまり増えないという声をよく耳にします。
――経済は停滞するのに、インフレは続く。
この“ねじれ”は、スタグフレーションと呼ばれる現象で、日本経済が直面する深刻なリスクです。
スタグフレーションとは何か
スタグフレーションとは、経済成長の停滞(スタグネーション・stagnation)と物価上昇(インフレ・inflation)の同時進行を指します。1970年代の石油ショックの時に世界的に問題になった現象で、通常の金融政策が効きにくいのが特徴です。
日本では、いわゆるデフレに苦しんできましたが、最近ではデフレではなく、スタグフレーションの兆候が鮮明になっています。
日本のスタグフレーションの兆候
まず、経済成長の停滞を見てみましょう。2025年第1四半期の実質GDP成長率は年率-0.2%とマイナス成長になってしまいました。OECDの予想によると、2025年の成長率は0.7%に留まると見込まれています。
OECD Economic Outlook, Volume 2025 Issue 1
https://www.oecd.org/en/publications/2025/06/oecd-economic-outlook-volume-2025-issue-1_1fd979a8/full-report/japan_cc84dbee.html
一方、インフレは高止まりです。5月の消費者物価指数(CPI)は前年比3.5%上昇、コアCPI(生鮮食品除く)は3.7%と2年ぶりの高水準です。
賃金上昇の遅れも深刻です。5月の実質賃金は前年比2.9%減と、ほぼ2年ぶりの大幅減少を記録しています。
名目賃金は上がっているのに、インフレがそれを上回り、結果として消費が低迷する、という図式になっています。小売売上高は5月に前年比2.2%増とプラスを維持していますが、インフレの伸びを下回っています。実質賃金の低下が非必需品消費を抑制し、購買力全体が弱まっています。
これらのデータから、スタグフレーションのリスクが高まっていることがわかります。あなたも「物価高で生活が苦しいのに、景気が良くならない」と感じていませんか。
日銀・金融政策の限界
日銀の金融政策は、2025年7月現在、政策金利を0.5%に据え置いています。年初に利上げを実施したものの、追加利上げには慎重です。
政策の限界として、利上げのジレンマがあります。インフレを抑えるために金利を上げると、景気がさらに悪化するリスクが高まります。一方、金利を据え置いたままだと円安が進み、輸入インフレを助長します。ドル円は今後も140円を超える水準が予想され、円の価値が目減りしやすい状況です。
また、賃金・物価の好循環が不十分です。日銀は「持続的な2%インフレ」を目指していますが、賃上げが実質的に相殺され、消費回復が遅れています。海外要因として、米国の関税政策が日本に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。
こうした中、日銀がスタグフレーションを恐れ、金融引き締めに遅れ気味になる展開も視野に入れるべきです。
資産格差のメカニズム
スタグフレーションの下では資産格差が拡大します。
現金や預貯金を保有する方は、インフレで実質価値が目減りする「インフレ税」を強いられます。一方、株式や不動産を保有する投資家層は、資産価格の上昇で恩恵を受けます。
UBSの調査を見ると、日本の個人資産格差を示すジニ係数(格差指標)は、2024年に0.54と他国の中では中程度ですが、2019年からの5年間で2ポイント上昇しています。ジニ係数は大きくなればなるほど格差が大きいことを示すもので、日本の資産格差拡大がデータからも確認できます。
UBS Global Wealth Report 2025
https://www.ubs.com/us/en/wealth-management/insights/global-wealth-report.html
円安・インフレの連鎖は、海外資産保有者の優位性を高めます。この格差が放置されると、経済の長期停滞を招く可能性が高まります。
また、インフレは低所得層の生活を圧迫し、社会的不安定を招く恐れがあります。
スタグフレーション時代の資産防衛法
日本がスタグフレーション時代に入りそうになる中、私たちは何をすべきでしょうか。スタグフレーションリスクを機会に転換し、資産格差の拡大を回避する策は以下のようにいくつかあるでしょう。
1.株式(輸出セクターや価格決定力のある企業)
インフレ時には、企業が製品価格を上げやすく収益を伸ばせますが、特に輸出駆動のセクター(自動車、電子機器など)が有望となります。
また価格決定力のある企業(食品メーカーやエネルギー関連)も、物価上昇を製品に転嫁しやすいため、安定したリターンが期待できます。
2.ビットコインやゴールドなどの代替資産
インフレ時には、法定通貨(円やドル)の購買力が低下しますが、供給量が限定的なビットコインやゴールドは、価値保存機能が高く、インフレヘッジ能力が高いといわれてます。
たとえば、ゴールドは古くから「実物資産」として知られ、インフレ期に価格が上昇する傾向があります。ビットコインは「デジタルゴールド」と呼ばれ、ブロックチェーン技術で希少性を保ち、インフレ環境で投資家が流入しやすいです。
ただし、両者ともボラティリティ(価格変動)が非常に高いため、短期的な損失リスクがあります。たとえばビットコインは過去に1年で50%以上下落したこともありますので注意が必要です。
3.REITや海外債券
円安が進む中、REIT(不動産投資信託)や海外債券は、円換算での価値上昇が期待できるメリットがあります。
REITは不動産に間接的に投資する商品で、家賃収入のような安定した分配金が得られ、インフレ時に賃料が上がることで収益が増す可能性が高いと言われています。
一方、海外債券は、日本に比べ高い利回りが魅力で、円安で円換算のリターンが膨らみます。たとえば、米10年債の利回りは現在4%前後と、日本国債を上回っています。
まとめ:自ら行動を起こそう
スタグフレーションの先行きを確実に言い当てることはできませんが、日銀が完全にコントロールするのは難しいのも事実です。
このため我々がすべきことは、外部に頼り切るのではなく、自分で情報を集め、行動する準備を始めることです。
まずは、インフレ耐性資産を理解し、ポートフォリオを見直すところから思いを巡らすといいかもしれません。
経済の不確実性に立ち向かうには、日銀や政府の動きを待つだけではなく、“行動する生活者”として行動を起こすことができるよう準備を始めることだと思います。
(免責事項: 本コラムは一般的な情報提供を目的とし、投資助言ではありません。個別の状況に応じて専門家にご相談ください。データは2025年7月時点のものです。)
村田雅志(むらた・まさし)
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