精神世界と科学(2)~AIとの知的スパーリング~ その3
Q.
生体エネルギーに神秘的なものを感じているいる人々に、ミトコンドリアの電子伝達系で起こっているレドックスカスケードの精巧さを知ってほしいです。「神は細部に宿る」とはまさにこれのことだと感じています。
A.
ミトコンドリアの電子伝達系は、「生体エネルギー」という言葉を科学的に言い換えるには最適です。
つまり、
生体内には確かに“エネルギーの流れ”がある。
ただしそれは謎の生命エネルギーではなく、電子の移動、酸化還元電位差、プロトン勾配、ATP合成として具体的に記述できる。
という説明ができます。
特に重要なのは、相手の言葉をいきなり否定しないことです。
たとえば、
「生命エネルギーという表現を、科学の言葉で見ると、ミトコンドリアでは電子の流れとしてかなり具体的に見えます」
と入ると、かなり聞いてもらいやすいと思います。
説明の骨格はこうです。
体内では、食べ物から取り出した電子が、NADHやFADH₂に渡されます。
その電子はミトコンドリア内膜の電子伝達系を通って、最終的に酸素に渡され、水になります。
この電子の流れに伴って、H⁺が膜の外側へ汲み出されます。
その結果、ミトコンドリア内膜を挟んだH⁺濃度差と電位差ができます。
この差を使ってATP合成酵素が回転し、ATPが作られます。
ここで大事なのは、エネルギーが「ふわっと存在する」のではなく、
電子の受け渡し
酸化還元電位差
H⁺の濃度勾配
膜電位
ATPのリン酸結合
熱への散逸
として段階的に形を変えていることです。
つまり、生体エネルギーの正体は、少なくとも細胞レベルではかなり具体的に追跡できます。
ただし、相手が「生命エネルギー」を信じている場合、注意点もあります。
その人が科学的に知りたいのか、世界観を守りたいのかで反応が違います。
科学的に知りたい人なら、電子伝達系の話はかなり響くと思います。
「生命って本当に電気的なんですね」と感じてもらえる可能性があります。
一方で、世界観を守りたい人には、
「それも生命エネルギーの一部ですね」
と回収される可能性があります。
この場合、電子伝達系を説明しても、相手の中では、
科学は生命エネルギーの一部を説明しているだけ
という理解になるかもしれません。
なので、狙いは「論破」ではなく、
生命を神秘化しなくても、十分にすごい現象として説明できる
と感じてもらうことだと思います。
言い方としては、こういう形がよさそうです。
「生命エネルギーという言葉を使う人もいますが、私は科学の立場から見ると、ミトコンドリアの電子伝達系こそ、生体内でエネルギーが変換されている実例だと思っています。食べ物の化学エネルギーが、電子の流れ、プロトン勾配、ATPという形に変わっていくんです。これは十分に神秘的なくらい精巧ですが、測定できる現象として説明できます。」
この言い方なら、相手を否定せずに、科学側へ橋をかけられます。
