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AirPodsは補聴器の代わりになるのか――耳鼻科医が見ている未来


私は音楽が好きで、
初めてAirPodsのノイズキャンセリングを体験したときは、正直びっくりした。

音が良くなった、というより、
世界が一段、静かになった感じがした。

エアコンの低いうなりも、遠くの車の音も消えて、
残ったのは音楽だけ。
「あ、これは“聞く環境”が変わる体験なんだ」と思った。



一時期、
自宅で自分で耳の型を取って作るオーダーメイドのイヤホンも市販されていた。

耳鼻科でやるのと同じように耳型を取って、
自分の耳にぴったり合うイヤホンを作る。
遮音性が高く、音漏れもしにくい。
音楽好きやミュージシャン向けの製品だった。

今思えばあれは、
「より良く聞くために、耳そのものに合わせる」
という発想だったんだと思う。

補聴器の世界では、
それはずっと前から当たり前に行われてきたことなのに。


一方でAirPodsは、少し違う道を選んだ。
耳に合わせるのではなく、
周囲の世界を消すことで、聞こえを際立たせた。

ハードではなく、
ソフトと演算で「聞こえ」を変えた。

このアプローチは、
補聴器の世界にかなり近づいてきていると感じる。


ただ、補聴器にはもう一つ、
技術とは別の壁があった。

「補聴器をつけて自転車に乗っていたら、
警察に止められたことがある」

イヤホンと見分けがつかなかったのか。

でもこのエピソードは、
聞こえを補うための道具が、まだ社会に十分理解されていない
ことを象徴しているように思える。


一方で最近、
自身に難聴のある耳鼻科の先生のコラムを読んだ。

今は補聴器がBluetoothで携帯とつながり、
仕事上の会話や電話も、
補聴器を通して普通にこなしているという。

診察も、会議も、日常のやりとりも。
「聞こえないから無理」ではなく、
技術が仕事を続けさせてくれている

正直、すごい時代だと思った。

補聴器はもう、
音を大きくするだけの装置じゃない。
社会とつながり続けるためのインターフェースになりつつある。


「補聴器は見た目が……」
そう言う人は、今も多い。


でもそれは、
性能の問題というより、
イメージの問題なんだと思う。

今やAirPodsを耳につけている人は街にあふれていて、
それを気にする人はほとんどいない。

補聴器もいつか、
AirPodsみたいに“普通で、かっこいいもの”
として受け取られるようになったらいい。


聞こえを補うことは、
年を取った証拠でも、弱さでもなく、
生活をアップデートする選択だ。

AirPodsは、
補聴器の代わりにはまだならない。

でもきっと、
「聞こえにくさを放置しない社会」への入口にはなっている。


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