デンマークのバスの中で、10歳年下の男の子に一目惚れされた話
北欧では、友人の紹介かアプリで出会うのが一般的で、街中でナンパされるなんてまずない、と北欧出身の友人が言っていた。
7歳年下のデンマーク人マッチョの家から帰るバスに揺られていたときのこと。
ぼんやり外を眺めていた私に、
「ヴァルラヴェズドゥイアフトン?」と目の前に座っていた男の子が声をかけてきた。
頭に「?」を浮かべる私を見て、彼はすぐ英語に切り替えた。
「ごめん。今夜は何をしてたの?」
初対面のかわいい男の子に「めっちゃセックスしてた」なんて言えるはずもなく、「友達と会っていた」とやんわり返した。
「デンマーク語が話せないみたいだけど、どこの出身なの?」
「日本だよ」と答えると、彼の目が輝いた。
「まじで!再来週から日本に行くんだよ!よければ、今週どこかで日本のおすすめを教えてくれないかな?」と勢いに押され、彼に連絡先を教えることに。気づけば、その週末に会うことになっていた。
当日、川沿いを歩きながら自己紹介をしていると、
「友達に、今日はキュートジャパニーズとデートするって言ってきたんだ!」と、早速とんでもなくかわいい一撃をくらう。
あまりにも少年のようなので「ところで、何歳なの?」ときいてみた。
「21歳だよ」と答えた彼の笑顔は、まぶしすぎた。
つい禁断の質問をしてしまう。
「私、何歳に見える?」
「う~ん。25歳?僕よりは上でしょ?」
「あなたより10歳上だよ」と伝えると、驚きつつも「若いね!全然問題ないよ」とサムズアップ。
問題ないって、なにが問題ないねん。
日本のおすすめ紹介は早々に終了し、世間話が始まる。
彼のお父さんは、世界規模の転勤族で、東南アジアや東欧で彼は子供時代を過ごしてきたそう。
いまは、デンマークのミリタリー勤務で、パイロットの枠が空くのを待っているそう。
会話が一区切りしたところで、私はぶっこんでみた。
「ところで、よくナンパはするの?」
「人生で初めてだよ!」という彼に、私は疑わしい顔を向けた。
「本当に。女性とデートするのも、高校生以来なんだ」
なんと!
まさかと思い、聞いてしまう。
「ねえ、もしかして童貞?」
大正解。
話は尽きず、気づけば深夜だった。
この後どうするのかな、と思っていると「終バス逃したわ」と彼。
どの国でも王道のセリフは一緒なのかな、なんて思いつつ、でも彼の経験値を考えると、頑張ったじゃん、と思ってしまう私もいた。
結局、私はひとつ条件をつけ、彼を家に招いた。
「まじで、なんにもしないし、なんにもしてこないでね」
彼は素直にうなずいた。
シャワーを浴び、寝室へ向かう私。
21歳のかわいい男の子の初めては奪えない。
彼が日本へ旅立つ前夜、「きみのことが本当に好きだ」とメッセージが届いた。
その後も、週一で会うようなゆるい関係が続き、私がオスロにいるときは二回も週末に会いに来てくれた。
最後に会った日、彼は真剣な顔で言った。
「バスの中できみに一目惚れして、きみが僕の運命の人だと本気で思ったんだ。きみが同じ気持ちでないことはわかっているけど、本当に結婚したいと思うほどに、きみのことが好きなんだ」
人生ってなにが起こるか、わからない。
彼は、元カレと別れて恋愛に消極的になっていた私の前に現れた救世主だった。
友人に話したら「その子、絶対童貞でしょう」と言われて爆笑したけど。
そんな彼から先日、久しぶりに連絡があった。
「ミリタリーを辞めて、パイロットの養成学校に入ったんだ」
「いつかあなたが操縦する飛行機に乗れたら素敵だね」
これからも彼との穏やかな友情が続くことを願って。
