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突然降ってきた香港③ | あの壁の内側 ~九龍寨城~

これでこの旅も安泰だ!

いい気分のまま、九龍寨城公園(クーロン・ウォールドシティ・パーク)へ向かう。さっき、Googleマップで見つけて、気になっていた場所だった。
九龍寨城は世界でも有名なスラム街だった。今は公園になっていて、当時の暮らしを再現した展示が行われているらしい。

Googleマップのナビ、矢印の方向が毎回わからない。おなじみの儀式で、その場をぐるっと回る。

徒歩20分。目的地は道路の向こう側か。見渡しても横断歩道はない。というか、そもそも人間が渡ることを想定してない道路の作りだ。ようやく、モールから歩道橋が伸びているのを発見した。モールの中は、生肉と南国のフルーツ、そして湿気が混ざり合った、アジアの市場特有の匂いが漂っていた。歩道橋は3階のあたりだったはずだと見当をつけて上がっていくが、なかなか見つからない。結局、探すのをやめて人に聞くことにした。いつの時代も、これが一番早い。

歩道橋を通ると、静かなマンション群へとつながっていた。足早に子どもの手を引く女性、一心に野菜を積んだカートを押す人、スーツケースを引く若者たち。少し離れた公園では、ご年配の方々が太極拳をしている。平和な日常の中を横切っていると、本当にスラム街があったのか想像が追いつかない。

九龍寨城公園は整備された広くてきれいな公園だった。公園の中心に、展示の入口があった。しかも無料だ。15分ごとに入場でき、番号札を取って待つ仕組みらしい。広場には、九龍寨城を再現した模型や壁画が並んでいた。どこがどう繋がっているのか分からない。模型を見ているだけで時間が溶ける。壁画の断面図には当時の生活が描かれていて、部屋ごとに人々の暮らしが詰め込まれている。ちゃんと、どの部屋の時計も、同じ時刻を指しているのが印象的だった。一部の部屋では、夫婦の暮らしまで、そのまま描かれていた。

展示に入ると、コの字型に並ぶ建物の中へ案内される仕組みになっていた。混雑を避けて、空いている奥へ進んだ。

真っ暗な空間。頭上すれすれの天井。圧迫感に目を上げると、無数の電線が蜘蛛の巣のように張り巡らされており、時折、電柱ぐらいの太さに束ねられている部分もある。なるほど、これでは窓があっても意味がないし、昼間でも暗くなるわけだ。

奥へ進むと、九龍寨城の屋上からの風景がスクリーンに映し出されていた。そこへ突然、飛行機の轟音が割り込んできた。

うわ!

思わず首をすくめる。すぐ頭上を飛行機がかすめていく。それがこの住民の日常だったのだ。

他の部屋にも入ってみると、茶餐廳(チャーチャンテン)、歯医者、床屋、売店まで揃っていた。薬局へ入った瞬間、独特な薬の匂いがして、匂いまで含めて空間ごと再現されているのが分かる。工務店や魚蛋(フィッシュボール)工場まであり、町そのものが立体化されている。

外に出ると、当時の写真やマンションの位置図があった。写真の中の屋上で遊ぶ子どもたちは、みんな笑顔だった。その背景にはしっかりと飛行機が映っている。マンションの位置図には老人ホームまであった。ぎゅうぎゅうに詰まった都市の真ん中に、そういうところまで気が回っているのが意外だった。ルールより先に、生活が形になっていくような、人々の生きたい意志が、そのまま表現された強さがあった。

展示を出ると、かつて九龍寨城を囲っていたレンガの壁が、公園の境界として残っていた。それまでは、華やかな外の世界と、スラム街を仕切るための壁だと思っていた。でも本当は、あの密集した生活を、外側から守っていた壁だったのかもしれない。




👣 ふらりマップ

🏛️ 九龍寨城公園


📍もう少しだけ、香港を歩く。
香港編④

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