突然降ってきた香港 ⑤ | 飲茶へ行こう ~美心皇宮~
空港で預けたトランクを無事回収し、ホテルへ向かう。香港の中心部まではエアポート・エクスプレス。24分で行ける。リクライニングシートに身を預け、クーラーの効いた空間を満喫する。静かで、窓も大きく、香港の街並みがよく見える。目指すは終点、香港駅。あっという間に到着。
よし、そのまま出発!と思った瞬間、お腹が鳴った。
ホテルは右に10分。飲茶は左に5分。理屈ではホテルの勝ちだ。でも、もう体が負けている。この際、トランクがどうとか、そういうのは一旦どうでもいい。飲茶へ行こう。
香港駅は昼時の人であふれていた。上下左右に、人の流れが交差している。自分が今どの階にいるのかすら分からない。コンビニで店員に聞いてみるがうまく通じない。Google マップは左を示している。もうこれしか頼れない。地上に出て左へ。
勢いよく進んだのに、道は急に途絶えた。おかしい。けどお腹がもう緊急事態だ。少しでも目的地に近づくルートを探し、トランクを引きずりながら右へ左へと進む。目的地は大きなシティホールを示していた。ホールの中にレストランがある訳はないと思いながらも、脳はもう思考停止状態。
シティホールの中は、色とりどりの衣装を着た大勢の子供と保護者で埋め尽くされていて、ハチの巣を突いたような騒ぎだった。どうやら目的の店は2階にあるらしい。エレベーターは見当たらない。諦めて重いトランクを引きずったまま階段を上がろうとした瞬間、係の人に止められた。
「どこへ?」
「飲茶を探してるの。」
「ここはホールだよ、上には飲食店はないよ。」
困り果てて、別方向に進むと、ようやくレストランの広告を見つけた。どうやら建物の裏口から入ったせいで、看板を見逃していたらしい。
「ここ、どうやって行くの?」
「2階だよ。あっち側のエレベーターから。」
ああ、2階でも違う2階なのか。もういい。文句を言う気力もない。ようやく、お目当ての飲茶に辿り着いたのだから。
広々とした空間に真っ白な内装。大きな窓の向こうには海と観覧車。シャンデリアが吊るされ、クーラーはしっかり効いている。店内は人の熱気で満ちていて、ところ狭しと並ぶ大きな円卓が、その熱をさらに膨らませている。
席に案内されるや否や、休む間もなく店員に急かされ、プーアル茶を注文。リュックからお手拭きを引っ張り出しながら、視線はすでにワゴンへ。洗杯(サイプイ)もそこそこに、指はもう蒸籠の中身を指していた。
酸甜炸雲吞(甘酢あんかけ揚げワンタン)
咸芋角(揚げタロイモ餃子)
蝦腸粉(エビ米粉クレープ包み)
叉燒包(チャーシューまん)
サクサクの衣にぷりっとした海老、香ばしい焼豚。あつあつの腸粉は、やわらかく胃に落ちていく。そこへ注ぐのは濃い琥珀色のプーアル茶。揚げ物の油をさらりと洗い流し、甘いチャーシューの余韻をほどいてくれる。飲茶の点心はどれも重量級だ。だから、お茶が際立つ。もしかすると飲茶とは、あの完成されたお茶を最高に美味しく飲むために生まれた文化なのかもしれない。
途中でデザートワゴンが来た。わかってる。ここで甘いものを入れたら終わる。でも止まらない。
芒果布丁(マンゴープリン)
杏仁茶(アンニンチャ)
馬蹄糕(マータイガオ)
薑汁豆花(ショウガシロップの豆花)
スプーンを入れるたび、マンゴーの甘さと香りが一気に広がる。濃厚な杏仁の香り、ぷるぷるシャキシャキの馬蹄糕、ショウガの鋭い温かさが最後に余韻として残る。
気づけばテーブルは完全に占領されていた。プーアル茶を一口。甘い、しょっぱい、甘い、しょっぱい。口の中がずっとリセットされ続けているのに、どれもちゃんと残る。疲れはどんどん引いていき、代わりに幸福感だけが残った。そして、いつの間にか、胃袋だけが完全に限界を迎えていた。
👣 ふらりマップ
🍽️ 美心皇宮
📍もう少しだけ、香港を歩く。
香港編⑥
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