3行日記 思いどおりにならない日
7月某日
毎日雨で嫌になる。何より湿気がすごい。
僕は癖毛なので、この季節になると髪は自分の意思とは関係なく、好き勝手な方向へ向かっていく。もし髪がまっすぐだったら、雨の日をもう少し好きになれていたのかもしれない。
雨の日は自転車通勤ができないので、傘を差して歩いて会社へ向かう。会社に着くころには汗だくで、雨で濡れたのか汗で濡れたのかわからなくなる。
とりあえず「土砂降りでした」と言う。
僕は考えた。
雨が降る時間を深夜2時から5時までに限定し、日中は晴れにするという政策は導入できないものだろうか。
寝ている間に雨が降り、起きるころにはきれいに上がっている。通勤も散歩も洗濯も快適だ。毎日雨が降ったとしても、僕は文句を言わない。植物だって、きっと喜ぶ。
とても自分勝手な考えなので、人には言わず、ここにひっそりと書いておく。
7月某日
昼、店で今年最初の冷やし中華を食べた。具だくさんで、よく冷えていて、甘酸っぱいタレが実においしい。気づけば5分もかからず平らげていた。
あとになって思えば、器には氷が入っていた。ゆっくり溶かしながら、タレの味の変化を楽しむという食べ方もあったのかもしれない。
夜、晩ごはんを食べに実家へ行くと、食卓にも冷やし中華が並んでいた。同じ日に二度食べることなど、そうそうあるものではない。
人は、ときどき言わなくてもいいことを口にしてしまう。
「昼も冷やし中華だった」
その一言で、食卓の空気がほんの少しだけ変わる。僕は余計なことを言ったと反省した。黙って、おいしく食べればよかった。
そんなことを考えながら、本日二杯目の冷やし中華を3分ほどで平らげた。
結局、冷やし中華は一日に二回食べてもおいしい。
7月某日
冷やし中華の件があってからだろうか。「夜はカレーだから、昼にカレー食べないでね!」そう母から言われた。
人間というのは不思議なもので、「カレー」と聞くだけで口の中がカレーになる。昼どきにはすっかりカレーの気分になっていたが、夜の楽しみを守るため、パスタを食べた。
夜、晩ごはんを楽しみに実家へ行くと、食卓にはケンタッキーが並んでいた。僕はしばらく状況を理解できなかった。
僕「あれ、カレーじゃないの?」
母「ケンタッキーのクーポンがあったから! あんた、ケンタッキー好きでしょ?!」
たしかに好きだ。好きなのだけれど、問題はそこではない。僕は一日をかけて、少しずつカレーの気持ちを育ててきたのだ。
とはいえ、冷やし中華の一件で学んだこともある。人は期待どおりにならないからといって、そのたび口に出すべきではない。
だから僕は何も言わず、ケンタッキーをつまみにビールをたくさん飲んだ。
母は、たまにこういうフェイントをかけてくる。どうやら、冷やし中華の借りはこうして返ってくるらしい。
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