三題噺ショートショート_女房
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、きかん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼四朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、気が済むのよね?
ブラックホールよりも重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「女房」まいりましょうか。

勝とはいつも一緒だった。少年野球の最初から、ずっと。
勝は、超剛速球ながらコントロール抜群で。宇宙に比類なきエースだった。
俺は平凡な選手だったが、女房役だったおかげでいつもニコイチ。ドラフトもワンツー指名で入団した。
昔はWBCも海を渡る選手もない時代で。それでもリーグ優勝、日本シリーズ制覇はこの上ない思い出だ。
不惑を越え、同時に引退してふたりで起業した。
やり始めたのは、毎週金・土・日オープンの餃子屋。
最初は閑古鳥が鳴いていて不安だったが、口コミでお客が増えていき。あれよあれよという間に今や一大全国展開チェーンだ。
おかげでタワーマンションにも住める。
勝とは、2軒だけある最上階の隣同士だ。
ある日店で、俺は言ったんだ。
「おまけだったけれど、幸せな人生だった」
すると、勝がポツリと言った。
「お前の配球が全てだった。お前が生餃子で、俺はただの保冷剤なんだよ」
みんなが嫌がるポジションのキャッチャー。俺にはなぜか、最高だった。

ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
そうなの?三題噺?落語の?ショートショートの?ヤスさんの?書いたの?また、下手くその?みんなに迷惑じゃん!じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しと参りましょうか。ぺぺペン、ペンッ!
……。
マッサージをすると、家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。

