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【キャリア】Will / Can / Must ― 自分の「土俵」を見つめ直す

自分のキャリアを言語化しようとすると、いつもCanとMustから考え始めてしまう。

「何ができるのか」「市場には何が求められているのか」。
この二つを並べて、論理的にもっともらしい答えを作ることは、わりと得意だ。

でも、「自分は本当は何がしたいのか」。
このWillだけは、ずっとうまく言語化できないままでした。

そんなとき、以前公開した記事(「30歳、キャリアブレイク」という選択にたどり着くまでの7年間の話)を読んでくださった方から、こんな本質的なフィードバックをいただきました。

「軸の見方の所でもう少し自分のパーソナリティに関わる所とかも見ると、より今後モチベーション高くお仕事を続けれるのかな?と思いました!」

この言葉にハッとさせられ、改めて自分の根底にある「Will」とちゃんと向き合ってみることにしました。




フレームワークの再定義

目標設定やキャリアプランの文脈でよく使われる「Will / Can / Must」というフレームワークがあります(参考:リクルートマネジメントソリューションズ解説)。

  • Will(やりたいこと):内発的な動機や、お金がなくても関わっていたいこと。

  • Can(できること):これまで培ったスキルや、自然と得意なこと。

  • Must(求められること):社会からのニーズや、生活を守るための条件。

この3つの円が重なるところに「納得できるキャリアの軸」がある、という考え方です。

ただ、この図の空欄を真面目に埋めようとすると、どうしても「Will(やりたいこと)」がフワッとしがちです。
市場価値が高そうな専門性(Can)と、給与や安定性(Must)だけを並べて、「まあこれが正解だよね」と自分を納得させることは、わりと簡単にできてしまう。

でも、そのまま走り続けると、ふとした瞬間に「で、自分は本当はどうしたいんだっけ?」と立ち止まることになる。そういう自覚が、自分の中にはずっとありました。

だから今回は、単にフレームの空欄を埋めるのではなく、3つの円を少し自分用にアレンジして使ってみます。

  • Will:単なる「好きなこと」ではなく、「どんな土俵で、どんな戦い方を選びたいか」。

  • Can:目に見える資格や職歴だけでなく、「調べて全体像をつかむ癖」といった資質。

  • Must:市場からの期待だけでなく、「自分の人生設計として外せない条件」。

「正解」を出すためではなく、今の自分の現在地を整理するための道具として、これを使っていきます。


Will ― 私の「意志」はどこから来ているのか

2つの「強さ」の間で育ったこと

自分のWillを遡っていくと、まず家族の話に行き着きます。
タイプの違う二人の兄弟に挟まれて育ちました。

  • ひとりは、勉強・語学・IT技術など、コツコツ積み上げることに強いタイプ

  • もうひとりは、スポーツや海外経験など、新しい環境に飛び込んでいくタイプ

片方は「学習と知識」で勝負する人。もう片方は「行動と適応力」で勝負する人。
その間にいた自分は、いつも「どちらの土俵に乗っても、決定的な一番にはなれない」という感覚を、どこかで抱えていました。

ただ、ここで「じゃあ勝負しなくていいや」とはなりませんでした。むしろ逆で、自分はかなり執着心の強い負けず嫌いでもあります。誰かに勝ちたいし、認められたい。でも、「完全に同じ条件で比べられて負ける」のは、どうしても避けたい。

この矛盾する気持ちが、私のキャリアの根底にある生存戦略を作りました。
「自分が確実に勝てるように、ルールの方を変える」
「人と消耗戦をしなくて済む場所を、意図的に選ぶ」
という、ある種したたかな思考です。

「王道」から半歩外すポジション取り

振り返ると、自分はいつも少しだけ「王道ルート」から外れた選び方をしてきました。

  • 文系からIT業界への就職

  • メジャーな留学先ではなく、アイルランドを選んだ大学時代の短期留学

  • 中小 SIer → ベンチャー → 大規模決済 → 官公庁というキャリアの動き方

  • そして、定番を外してポルトガルで「1年間のキャリアブレイク」という選択

どれも極端な選択ではないですが、「なんでそこでそれを選んだの?」と聞かれそうなポイントを、あえて作ってきたように思います。
仕事の選び方においても、意識していたのは「自分の持っているカードが、相対的にレアになる場所を選ぶ」ことでした。

たとえば、「日本人で、ITの基礎知識があって、プロジェクトが回せる」という人材は、日本の大手SIerに行けばごく当たり前の存在です。
でも、私はあえて「外国籍のメンバーが多い環境」や「特定の専門性はあるが、広範なIT知識を持つ人が不足している環境」を選びました。
真正面からのスキル勝負で消耗するのではなく、自分の属性が勝手にアドバンテージになるフィールドを計算して探す。それが、私にとっての「負けず嫌い」の戦い方でした。


物差しをずらして、「希少性」を作り出す

そこに自分は、意識的に「ニッチさ」や「意外性」のカードを足してきました。
セキュリティの国際資格CISSPを取りつつ、仕事と直接は結びついていないJ.S.A.ワインエキスパート資格にも挑戦しているのも、その一つです。

これは「比較される軸をずらす」ための布石に近い感覚です。同じ物差しの上で順位を競うレースは、上には上がいてキリがありません。だったら、誰も持っていないカードを組み合わせて、「そのセットを持っているのは自分しかいない」という状態を作ってしまえばいい。

IT・語学・セキュリティ・ワイン・海外生活。バラバラに見えるカードを重ねて、「自分だけの勝ちパターン(聖域)」を構築し続けること自体が、私のWillの一部になっています。


Can ― スキルではなく「資質」の棚卸し

これまでの7年間の泥臭いキャリアの全貌や、そこで積み上げた具体的なITスキル(Can)については、以下の記事にまとめています。

ここでは、目に見えるスキルではなく、環境が変わっても持ち運べる「資質としてのCan」について書きます。

仮説を立てて、とことん調べる癖

自分の一番の資質は、分からないことを自分で調べ、状況の全体像を把握していく「調査力」だと思っています。

ポルトガルに来る前後を振り返っても、ワーホリビザの申請手順、現地での家の探し方、ICカードの種類といった最低限の生活インフラはひと通り自分で調べて動きました。さらにそこから一歩踏み込んで、ローカルの人が使う買い方や交通手段、毎月の通信費や食費といった固定費をいかに下げるかまで、かなり細かくリサーチして生活を組み立てています。

仕事でも同じで、新しいプロジェクトに入るときは、ステークホルダーや過去の資料を一気に洗い出し、「なぜ今この状態なのか」を自分なりに一枚絵にまとめます。
できるだけ早くその場の共通言語をつかみにいく。この仮説と検証のプロセスを、息をするようにやってしまう癖があります。


相手に合わせて内容を調整し、意味をつなぐこと

これまでの仕事で求められたのは、単純な技術力や語学力ではありませんでした。
求められたのは、

  • ビジネス側のふわっとした日本語の要望を汲み取る

  • それをエンジニアが動けるロジックまで分解する

  • 技術的な制約やリスクを、ビジネス側が判断できる言葉に変換して伝える
    という、「文脈や粒度の翻訳」でした。

相手が何を求めているかを理解し、一番受け取りやすい形に情報を加工して渡す。そうやって「意味のすり合わせ」を繰り返していくこと。

この「異なる言語をつなぐ翻訳スキル」は、これから軸足を置くAIやセキュリティ、クラウドといった専門用語の壁が高い領域でこそ、強力な武器になるという仮説を持っています。
難解なことを、相手に合わせて調整して渡す。それが自分の勝ちパターンのひとつです。


未知の環境に入るほど、スイッチが入る

「初めての国」「触ったことのないドメイン」「ゼロから任される新しい役割」。
本来ならストレスになりそうな状況で、むしろ学ぶスピードが上がり、行動量も増えるというスイッチが入ります。
大規模決済プロジェクトでの「英7割・多国籍チーム」も、実績ゼロから飛び込んだ官公庁案件の統括PMも、冷静に考えればかなり“未知寄り”のフィールドでした。

自分にとって「未知」は、不安要素というよりも、「成長するための条件」に近いものです。


Must ― 時代と人生観から求められる条件

これからの10年を考えたとき、「ここは確実にニーズが伸びる」と感じている領域があります。

  • AIガバナンス(ルールづくり・リスク管理・説明責任)

  • セキュリティとクラウドを前提にしたシステム設計

  • 技術とビジネスの間をつなぐPM的な役割

これは、「好きだから」という理由だけではなく、「この辺りでちゃんと食べていきたい」という現実的なMustとも重なっています。

同時に、もう少し個人的なレイヤーでのMustもあります。

  • 日本と海外を行き来できる選択肢を持っていたい

  • 勉強・ワイン・旅など、「自分にとっての豊かさ」につながる要素は確保しておきたい

ポルトガルでの1年は、これらを一度全部壊してしまうのではなく、「この先5〜10年のMustを見据えて、いったん立ち止まって微調整する時間」というイメージです。


欠けている視点 ― 「他者への貢献」という現在地

ここまで Will / Can / Must を整理してきて、ひとつ自覚していることがあります。
それは、今の自分の思考ベクトルが、どこまでも「自分自身」にしか向いていないということです。

自分の強みをどう活かすか。自分がどう生き残るか。自分の人生をどう豊かにするか。
ここに書いた軸の主語は、すべて「私」になっています。

でも、本当に良い仕事や、モチベーションを高く持ち続けられるキャリアの根底には、必ず「他者や社会へどう貢献するか」という視点があるはずです。
今の自分には、その視点が明確に欠けています。

ただ、今の段階で無理に「社会への貢献」を Must や Will に組み込もうとすると、嘘くさくなってしまう気もしています。
まずは自分の足場を固め、自分の土俵を整え切ること。他者へのベクトルが自然と湧いてくるのは、自分の内側のコップがしっかり満たされてからなのかな、と今は考えています。

「社会との関わり方」や「他者への貢献」。
それは、自分の現在地を受け入れたうえで残る、次なる課題です。


おわりに

ここまで Will / Can / Must を整理してきましたが、今の自分をあえて一行にとどめるならこうなります。

「AI × セキュリティ × クラウド × PM」という変化の中心に身を置き、日本語・IT・語学・資格・ワイン・海外生活といった要素を組み合わせた自分だけのポジションを、戦略的につくっていく。

時間をお金に変えるのではなく、時間をこの見つめ直しにじっくり使ってみる。今のポルトでの生活は、自分の土俵をもう一度ちゃんと整え直すための実験期間です。

完璧な答えは、たぶんこの先も出ません。
でも、今の自分はこう思っているという仮説を書き出してみるだけで、日々の選択の解像度が少し変わってくる気がしています。

もしコーヒー一杯分の時間があれば、ノートを開いて試してみてください。
今の自分は、どこがズレているのか。
それを見える化するプロセス自体が、これから先の数年を生きるための、ひとつの設計図になるはずです。

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