ちはやふる歳時記②「あまつかぜ」〜審査員デビューと、恩返し〜
前回はこちら:
ちはやふる歳時記①
「めぐりあひて」の句と、娘の冬 ⇩
今回は「ちはやふる」の札(緑札)に惹かれて
参加した大会ボランティア。
サムネの画像は、大会の日にお店の方から
いただいたカレンダーの絵柄です📅
この日の思い出を表すようで、
思わず大切に持ち帰りました。
実際に私が担当したのは“青札”の審査員でした。
そして、あの日の光景が今も心に残る一首——
『天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ
乙女の姿 しばしとどめむ』
まるで映画のような時間でした。
教員としてのスタート、不安な日々
念願だった小学校での勤務が始まりましたが、
指導法への不安が募っていました。
子どもたちは授業を楽しんでいるだろうか?
教材の準備は、これでいいのだろうか?
日々、そんな自問を繰り返していました。
月に一度、金曜日の放課後には、
車を走らせて教育サークルに顔を出していました。
そこで毎回配布されるチラシや資料の中に、
ある秋の日、目を引く一枚を見つけたのです。
「五色百人一首 大会ボランティアのお知らせ」
五色百人一首との再会
「五色百人一首…懐かしいなあ」
わが子たちが小学生のころ、
冬休みの宿題で毎年のように
出されていたものです。
リビングで私が札を読み上げ、
よく一緒に遊んでいました。
地区大会にも参加したことがありました。
現在勤務している学校でも、
1月に百人一首大会が予定されていると
聞いていました。
仕事にもきっと役立つし、なにより、
わが子がお世話になった大会に、
今度は私が恩返しできたら——
そんな想いで、ボランティア参加を決めました。
はじまりは、眠たい朝から
大会当日は、1月の早朝。
眠い目をこすりながら電車に飛び乗りました。
雪が降らなかったことにホッとしつつ、
Googleマップを頼りに
会場の「近江神宮」に到着します。
石の階段を上がると、目の前には赤い門。
まるで映画『ちはやふる』の世界そのものです。
大会が行われるのは、敷地内にある「勧学館」。
スタッフが続々と集まり、
私は映画と重ねながらワクワクした気持ちで
会場へ向かいました。
まさかの審査員!
「おはようございます」
そう挨拶を交わしてすぐ、
教育サークルの代表さんから
声をかけられました。
「青の審査員をお願いします」
えっ…審査員?!
聞けば、教員でボランティア参加している人は、
審査員を任されるとのこと。
初心者向けの「青札」ではありますが、
大きな責任を感じました。

子どもたちの記憶に残っていく季節のことばたち。
「一首に込めた想い」
担当した青札で
20首の中から、子どもたちの姿を重ね合わせて、
特に心に残った一首があります。
天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ
乙女の姿 しばしとどめむ
「まるで天女のように」
この歌は、本来、天女たちが帰っていく
雲の道を
「どうか閉ざして、あの舞う姿を
もうしばらく見ていたい」
と願う一首です。
今回の大会では、羽織袴で凛と立つ
子どもたちの姿が
まさに天女のようで——
思わずこの歌が浮かびました。
百人一首の中でも、
この歌は「美しさをとどめたい」
という願いが込められた、
一瞬のきらめきを大切にする歌。
競技に集中する子どもたちの姿に、
私は何度も心を奪われました。
華やかな羽織袴姿で真剣に札を取り合う
子どもたち。
その一生懸命な姿を、
もう少しこの目に焼きつけていたい——
そう思った瞬間、
まさにこの歌がぴたりと重なったのです。
“ちはやぶる”札に惹かれて足を運んだこの大会で、
“天つ風”が私の心にそっと残りました。
やがて会場に参加者が集まり始め、
畳敷きの広い空間が熱気を帯びていきます。
小学生たちの真剣な表情に、
こちらも背筋が伸びる思いでした。
試合の空気と、授業へのヒント
試合前のあいさつや「空札(からふだ)」の
読み上げなど、丁寧な所作が印象的でした。
向かい合った子どもたちが握手し、
礼儀正しく試合を始めます。
この「空札」やあいさつの流れがとても気に入り、
私は後日、自分の授業にも
取り入れることにしました。
(感染対策のため、握手は控えましたが…)
審査員として、
子どもたちの姿勢や所作を見届けるなかで、
懸命な姿が胸に響きました。
勝って喜ぶ子、負けて悔し涙を流す子、
どの子も本当にまぶしかったです。
まるで映画のような一日
試合が進むにつれて、
会場の熱気はさらに増していきます。
札を叩くスピードもどんどん速くなり、
羽織袴姿やチームTシャツを着た子たちが
一層会場を盛り上げます。
「本当に『ちはやふる』の世界だ…!」
私は胸を熱くしながら、
目の前の光景に見入りました。
大会の裏側でも学びがたくさん
大会の裏側では、
スタッフが札の枚数や並びを確認しながら
丁寧に片付けをしていました。
取り札の裏には番号がふってあり、
並べるのも確認しやすく工夫されています。
この仕組みを、自分のクラスでの片付けにも
活かそうと、しっかりメモを取りました。
優勝者への賞状や参加賞の準備もお手伝いし、
私なりに「恩返し」ができたと感じました。
思わぬ贈り物
大会後、会場のショーケースで
『ちはやふる』グッズを見て回りました。
千早が描かれたファイルやエコバッグ、カレンダーを手に取り、娘へのお土産に選びました。

心くすぐるお土産。教室でも話題に。
「グッズを買ってくださった方にプレゼントです」
と、勧学館の方からいただいたのは、
オリジナルのカレンダー。
その冬から、このエコバッグを提げて、
百人一首の授業に向かう日々が始まりました。
心に残るご縁と、近江神宮への感謝
帰り際、スタッフの先生が
声をかけてくださいました。
「電車で来られたんですか? 駅まで送りますよ」
初対面の私に、さりげない優しさを
かけてくださったことが忘れられません。
ボランティアに関わる方は、
こうした温かい心遣いが自然と
身についているのかもしれません。
帰る前に、近江神宮に立ち寄り、
ご挨拶と日頃の感謝をお伝えしました。
この一日を通して、過去と現在がやさしく
結びついたような気がしています。
百人一首は、ただの言葉遊びではなく、
今この瞬間を抱きしめる
「こころのしおり」なのかもしれません。

子どもたちは夢中で札を取り合いながら、和歌のリズムと日本文化に親しんでいきます。
最後までお読みいただき、
ありがとうございました🎴
🎴「ちはやふる歳時記」では、
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次回は「教室で百人一首を教える日」(仮)✍️
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