ジャズ記念日: 12月5日、1972年@ラスベガス
Dec. 5, 1972 “Things Ain’t What They Used To Be” by Duke Ellington & Ray Brown at United Recording, Las Vegas for Pablo (This One’s for Blanton)
最晩年のエリントン(74歳)が、27歳年下のベースの名手レイブラウンとデュオを組み、最愛のベーシスト、ジミーブラントンに捧げたアルバムからの、エリントン自作のスタンダード曲演奏。
時代的には、前年に日本での最後の公演を行った頃。

チケット代の相場感が気になる
デュオの企画は、如何にもパブロのノーマングランツらしいが、録音場所が珍しくラスベガスなのは、何故か読み解けなかった。ブラウンによるとグランツから電話があって、エリントンがベガスに居るのでレコーディングに来て欲しいという依頼があったとのこと。ベガスには、デュークエリントンウェイという名前を冠した道路があるので、何か縁があるのかもしれない。

もしかしてエリントン楽団がラスベガスで定期出演していたかも知れないとも思ったが、それは確認出来なかった。
演奏は、エリントンには珍しくゴリゴリ感は少なく、パーカッシブさに加えて、綺麗に澄み渡った音色が特徴で、砂漠地帯にあるラスベガスの乾燥した空気感が伝わってくるが、何よりもエリントンの内面にあるその美しさが表出して優雅に捉えられているところが本作が名演奏名録音と形容される所以。
ブラウンのベースもエリントンとブラントンに敬意を表すものの、怖気付く事なく、ブラントンに負けず劣らず、メロディアスな演奏でエリントンに対峙しており、その伴奏が全くもって違和感を感じさせないので、エリントンもブラウンとの演奏が心地良く愉しかったに違い無い。
デュオ演奏という事もあってか、ベースの名手ブラウンの力量が余す事無く思う存分、味わえる。さらりと凄いことをやってのける技術がありながら、かといってそれを自分本位にひけらかすことがなく、音楽最優先で使いこなしてエリントンに敬意を払ってバランスを取りながらスイングさせるところが、現代モダンジャズベースの理想的なお手本の証。
そして本作では、ブラウンの硬派なベースの弦と木の鳴りが解像度高く味えるのも良い。ベースだけの音を比較するなら、ブラウンが加わった名演名録音盤の以下の大定番に匹敵する水準と思う。
他の曲もエリントンナンバーだけでは無く、後半にある、その場限りの組曲も即興とは思えない出色の出来で、アルバムとしても素晴らしい内容。ジャズの定義なんて吹っ飛んで、エリントンによる、「音楽には良いものと、それ以外しかない」という名言が、この演奏を聴くと物凄い説得力を持つ。
There are simply two kinds of music: good music and the other kind ... The only yardstick by which the result should be judged is simply that of how it sounds. If it sounds good, it’s successful; if it doesn’t, it has failed.
ご興味がある方は、アルバムを通してお聴きください。演奏する悦びに溢れていて、生きる活力をお裾分けしてもらえるような演奏です。
このデュエットは、1940年10月1日に録音されたエリントンとブラントンのデュオ作品をオマージュしたような内容となっている。エリントンのピアノのアプローチの進化と共に、ブラントンが如何にブラウンに影響を与えているか、特に以下演奏の後半のベースラインを聴くと理解が出来る。
ブラントンが素地を作ったモダンジャズベースを磨き上げて完成系にしたのが八歳年下のブラウンと言えます。同じ曲をエリントンを軸に演奏しているので、そちらでの比較もどうぞ。演奏も録音も進化しています。
二人を含めたモダンジャズベースの進化を名手の象徴的なフレーズを散りばめて紹介した、以下のコンパクトに纏まった映像をどうぞ(以前も紹介したものです)。3番目にブラントン、6番目にブラウンが登場していて、両者が音楽的につながっている事が分かります。
さて、エリントンのピアノを味わいたい方は、こちらもどうぞ。ちょうど本作から十年前の作品です。
そして、ブラウンの雄大なベースラインとスイング感を堪能したい方は、こちらもどうぞ。本作から25年前、1957年の作品の紹介曲だけでも、これだけあります。この時点で完成したスタイルを、長年にわたって維持するだけでも大変な事なのに、それを更に進化させているところが、ジャズの巨人としての証です。
最後に、同じくピアノとベースのデュオ作品に興味がある方は、こちらのハンクジョーンズのピアノとチャーリーヘイデンによるスピリチュアル楽曲の演奏もどうぞ。ヘイデンの個性あるベースはブラウンとは好対照です。
ジャズって素晴らしいですね。
