ジャズ記念日: 10月31日、1978年@ニューヨーク
Oct. 31, 1978 (also Oct. 30, Nov. 1, 2) “Blue And Green” by Bill Evans, Larry Schneider, Toots Thielemans, Marc Johnson & Elliot Zigmund at Columbia Recording Studios, NYC for Warner Brothers (Affinity)
80年代手前にビルエバンスがハーモニカのトゥーツシールマンズを迎え、ポールサイモン等のポピュラーソングをエレキピアノも使いながら、モダンなスタイルで披露するのが本アルバムです。
楽曲、ハーモニカとピアノの組み合わせが秋の雰囲気にピタリとハマります。シールマンズのメロディーセンス、表現力と音色のふくよかさによる侘び寂び的な風情への貢献は、エバンスに引けを取らず、素晴らしいものです。
エバンス晩年のベーシスト、マークジョンソンのデビューアルバムとなっていますが、臆せずに登場時から正確なテンポで高度なベースラインを刻んでいる事が分かります。アルバムの音質は今ひとつながら、秋の夜長にしっぽりと聴きたくなる、味わい深い哀愁に溢れたアルバムの一つです。
曲はエバンスが参加しているマイルスデイビス屈指の名盤、”Kind of Blue”に収録されている”Blue in Green”で、そこではマイルス作曲とのクレジットも、エバンス自身によると自らが作曲との話があります。初収録時に印税をマイルスに回すための紳士協定があったのが背景という説があります。

手元にあるCD/SACDハイブリッド版には
“All compositions by Miles Davis”とある
そのライナーノーツは、インプロビゼーションの演奏を日本の水墨画に例えたエバンスによるもの。本曲の本人による解説は以下。
"Blue in Green" is a 10-measure circular form following a 4-measure introduction, and played by soloists in various augmentation and diminution of time values.
「ブルーイングリーン」は10小節の循環形式が4小節のイントロに続き、ソロ奏者達によってテンポを増減しながら演奏されている
そして同年に自身のトリオ作品”Portrait in Jazz”ではマイルスとの共作楽曲とクレジットして収録。こちらは自身のリーダー作品ゆえにエバンスの意図と想いが存分に込められた演奏が印象に残ります。

“Blue in Green” (Davis - Evans)と記載
本アルバムでは上記と同じくマイルスとの共作との記載も”Blue And Green”と曲名を変更している事が分かります。その経緯を見ると、自らを起用してくれたマイルスへの恩義と関係性、本曲へのエバンスの愛着と著作権を巡る複雑な事情があることが窺えます。

Musical Frontiers Pub. Co.はマイルスの著作権管理会社
そして本作は奇しくもその”Kind of Blue”と同じNYのコロンビア録音スタジオ(通称”The Church”、以下記事参照)で収録されています。エバンスは同じスタジオに入り、約二十年前の当時を振り返って、もう一丁やってやるか、なんて気持ちがあったのかもしれません。
アルバム全体的にはフェンダーローズのエレキピアノを駆使した楽曲が印象的な作品ではありますが、本曲ではピアノを使用して、シールマンスを傾聴しながらの美しいハーモニー重視の演奏が何度聴いても耳心地良いです。そしてもう一方のシールマンスは、そんなエバンスのマイルスとの話はどこ吹く風という感じで、”Kind of Blue”における同曲のマイルスの演奏を意識するかのようになぞりつつ、その個性的な哀愁のトーンで発展させたメロディーを綴る演奏となっています。
さて、傾聴スタイルのエバンスに興味がある方は、こちらもどうぞ。普段と異なる組み合わせや楽器になると、その姿勢が強くなる傾向がありそうです。
最後に、シールマンスの侘び寂びハーモニカをもう少し味わいたい方は、こちらもどうぞ。
素敵な一日をお過ごしください。
