今日のジャズ: 10月16日、1961年@ロサンゼルス “A World of Piano”
Oct. 16, 1961 “Manteca”
by Phineas Newborn Trio (Paul Chambers, Philly Joe Jones) at Contemporary Records Studio, LA for Contemporary (A World of Piano)
オスカーピーターソンに引けを取らないピアノのテクニシャン、西海岸に拠点を置いたフィニアスの絶好調な演奏。マイルスのリズム隊、ベースのポールチェンバース、ドラムのフィリーリージョーンズと共に西海岸録音という企画は、アートペッパーの名盤と同様の”Meet The Rythme Section”と言える。
フィリーがコンテンポラリー録音だとそのドラミングが明快に録音される。シンバルの鳴りは以下紹介曲との比較で顕著なように、タイトで音場の幅の広がりがあるワイドレンジな「横」のコンテンポラリーに対して、重く厚みのある凝縮された押し出し感のある「縦」のブルーノート。
オーディオ的には、この二者択一の究極の選択を迫られ、捉えたエネルギーをどう鳴らすかは、好みが分かれるところ。端的に言うと、視界を開きたいか、遠くまで見通したいか。更にいうと接写して細部を捉えたい、という選択肢もある。オーディオ機器の選択や組み合わせは勿論のこと、アンプの電源ケーブル交換も好みを叶える大きな一つの選択肢となる。
演奏については、1:17からのフィニアスの両手高速フレーズは一体どうなっているのか理解に苦しむ程の難解さ。そして1:50からの「タラララ、テレレレレレ」のフレーズをその後の随所に登場させるユーモア。
その後ろでボクシングのワンツーのように畳み掛けてコーナーに追い詰めるかの如くのドラムのフィリー。負けじと和音の高速フレーズで押し戻すフィニアス。ここまで来ると肉弾戦の様相だが、本人達は嬉しそうに笑顔で演奏しているのだろう。シリアスな肉弾戦と言えば、こちらのトリオ演奏をどうぞ。
最後の我が道を行くリズムはフィリーの遊び心。それを楽しんで受け止めてユーモラスに返すフィニアス。これは懐の深さがあるからこそ繰り出せる芸当で、そういった姿勢と技術、柔軟性を兼ね備えているからこそ、異なる複数の主要リズムセクションの誰と組んでも分け隔てなくクオリティの高い演奏が出来るのが、フィニアスの真骨頂。オスカーピーターソンが、後継者として一人選ぶのなら、それはフィニアスだろうと語っているのも頷ける。
作曲は、ビバップの創設者の一人であり、ラテンジャズ(アフロキューバン)を定着させたディジーガレスピー(ディズ)が名曲”Tin Tin Deo”(以下紹介曲)と同様にキューバ出身のチャノポソと共同制作者として名を連ねている。
本曲はそのジャンルの普及に貢献した初期のメジャーヒット曲の一つで、クラーベというリズムが採用されている。「タンタタン、タンタン」と一小節目に三つ、二小節目に二つのアクセントで、二小節でワンセットのリズム。
曲名の”Manteca”は、スペイン語でラード(脂身)のこと。ディズ本人によると、喜ばしいことがあると、お互いに手を合わせて、手のひらの潤い(油)を確かめ合ったという、その行為を指すそう。例えば野球でホームランが出た時の手を叩き合う喜びの表現が「マンテカ」だそうです(参考: 岩浪洋三著「 『これがジャズ史だ』朔北社、2008年)。

ジョンレノンによると、本曲に触発されて作曲されたボビーパーカーの”Watch Your Step”(1961)をビートルズでカバーしていた他、それが”I Feel Fine”(1964)と”Day Tripper”(1965)のモチーフになっているとのこと。先ずは”Watch Your Step”をお聴きください。
どうでしょうか。そもそも、ビートルズの楽曲でこの二曲が同じ起源を持っているとは、これまでに何回も聴いていますが、この話を知るまでは全く考えもしませんでした。改めて、ビートルズの二曲をお聞きください。
意識して聴いてみると確かに似た箇所がありますね。“I Feel Fine”はリフが、”Day Tripper”は展開が似ているようです。という事で、本紹介曲が無ければビートルズの名曲も生まれていなかった、と勝手に結論付けます。
そのレノンによる”Come Together”にまつわる、やり過ぎた盗作疑惑で訴訟問題を起こされた興味深い顛末については、こちらをご覧ください。
最後に、チェンバースとフィリーの名コンビによるマイルスとの演奏は、こちらをお楽しみください。本作品及び先のペッパーとの演奏と音質とは好対照です。
今日も素敵な一日をお過ごしください。
