今日のジャズ: 2月15日、1965年@ニューヨーク “Angel Eyes”
Feb. 15, 1965 “Everything Happens To Me”
by Dave Brubeck, Paul Desmond, Gene Wright & Joe Morello in New York for Columbia (Angel Eyes)
スタンダード曲を多数輩出したマットデニス作曲作品を、デイブブルーベックカルテットが纏めてアルバム化、デニス本人がライナーノーツを記した企画盤です。
プロデューサーはブルーベックの代表曲”Take Five”を含む名盤”Time Out”等、数ある名盤を手掛け、コロンビアを一大ジャズレーベルに仕立て上げた大御所のテオマセロ。
ブルーベックのバンドメンバーも”Time Out”と同じで安心感が成せる演奏に悦びがあります。ゴージャスで明快なブルーベックのピアノ、対照的に侘び寂びを効かせたデスモンドのアルトサックス、足取り軽くスイングするベースとドラムに支えられて、単音メロディーで心地良く滑らかに進行していきます。
それがどうでしょうか。3:52からブルーベックのソロにおいて唐突に曲調が変わって力強い「テレン、テレン、トタララ」というメロディーが繰り返される部分に違和感があって不可解な箇所が登場します。同じようにベースラインにも断絶感があることから、帝王マイルスの音源テープさえも容赦無く切り継いで世に送り出した編集魔たるマセロが、何テイクか録音した異なるテープを継ないだ結果だろうかと憶測したくなります。
ジャズ最大のヒット曲”Take Five”にもマセロによる編集の手が入っていると筆者は邪推しています。それはヒットのきっかけを生み出したツギハギの三分足らずのシングル版の存在が論拠で、アルバムバージョンにもブルーベックのピアノソロがカットされるような手が入っているように感じられます。普通に聴いている分には分かりませんが、それを意識して耳を凝らして聴いてみると不自然な箇所があります。そしてアルトサックスのポールデスモンドからは、同曲の本人からしたら失敗テイクのソロ演奏を何故採用したのかとクレームを受けた事をマセロ本人が語っています。その“Take Five”のストーリーについては、こちらをご覧ください。
そんな編集が何故許されるかというと、当時ドル箱だったレコードが売れるからです。ブルーベックのみならず、あの気難しいマイルスまでもが、フリーハンドに編集を委ねるくらい、マセロの力量を買っていたということです。そのプロデュース力にまつわるドキュメンタリー映画まで存在しているほどの重鎮です。その中でテオが語っていたのが、先の内容です。
ブルーベックのカルテットは、ミュージカル大作曲家のリチャードロジャースの楽曲集”My Favorite Things”も同時期に録音しています(以下)。これも、マセロのプロデュースで、ジャケットも同じ女性モデルが採用されているように同路線の作品です。モデルは当時、雑誌”Seventeen”に度々登場していたTerry Renoという方です。明快な音楽と華々しいジャケットで、大衆受けを狙ったものだと推測します。それもあってか、ジャズ音楽としては稀なビルボード200チャートの122位を記録しています。これも売ることに長けたマセロの手腕でしょう。

本曲は、トロンボーン奏者の楽団バンドリーダー、トミードーシーがデニスとその盟友の作詞家トムアデアをニューヨークに呼び寄せて、同楽団向けの曲を缶詰になって量産した際に出来た曲の一つです。当時のドーシー楽団に在籍していたシナトラがシンプルに歌ってヒットした事を皮切りにスタンダード化していきました。そのオリジナル曲がこちら。
最後に、もう少しブルーベックカルテットの音楽を聴きたい方は、こちらのディズニー音楽作品集をどうぞ。
