生きるためには夢がいる。「死ぬことが夢」を要求された若者たち ー 回天とその物語『出口のない海』『特攻の島』を読んで ー
山口を旅している途中ですが、本の紹介です。
前回、回天記念館を訪れましたね。私は、旅先に関連する本を読むことが多い。みなさんも、前回の旅日記をきっかけに、もっと回天について知りたくなりましたよね? そんな方のために、本を2編紹介します。
どちらもフィクション小説。
現地調査、遺族や関係者の方々へのインタビューをもとに、物語が紡がれている。別の作家が描いた2作品だが、似たエピソードが出てくるのは、そうした理由からだろう。
まずは、1冊目
▼ 『出口のない海』(横山秀夫)
この本の主人公たちは、いわゆるインテリ層。
大学野球で勝つことを夢見た学生たち。学業とスポーツに邁進しつつ、この戦争で、日本は本当に勝てるのだろうか? という疑問を抱きながらも、戦争に巻き込まれていく。
私が今まで持っていた戦争突入のイメージは、全国民 日本中が沸き立ち、世論が参戦に動いていった。と理解していたが、主人公らは、戦況を冷静に見極めている。原油備蓄量、欧米の経済制裁の影響などを分析し、友人たちの間で推進派と回避派が、議論を闘わせている。
そして、自分たち学生は、優遇されている(徴兵されない)という事実に苦しみつつ、不思議と戦争は遠い世界で起きている。と思わせる、現実感のない描写がつづく。
ところが
戦況が悪化し、ついに「学徒動員」
突然目の前につきつけられる「死」という現実。出撃すれば必ず死ぬ。必死兵器に乗る兵士を育てる特別攻撃隊という組織への志望、そして、訓練の日々が描かれる。

この唐突に訪れる「死」の恐怖に打ち勝つのは、生きる夢を持つことだ。みなさんも仕事(勉強・スポーツ)をしているのは、夢や目標があるからだよね? なのに、ここで叶う「夢」は、特攻に出撃する腕前になること。家族や国を守るために、死ぬことが夢なんだ。死ぬことを夢にして生きる。
なんて、哀しい
それでも死にたくないともがく、主人公。
戦争って、遠くで起きていると思っていたら、突然目の前に突きつけられるものなんだな。
遠くで雷がゴロゴロ鳴っているとき、他人事と思ってはいけない。突然目の前に、ドカンと落ちてくるのだ。きな臭い令和の世の中、常に自分事として、戦争反対を訴えていきたい。と、感じた作品。
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もういっちょ、紹介します。
▼ 『特攻の島1~9』(佐藤秀峰)
こちらの作品は、貧困層出身者が主人公。全九巻の漫画。名前の通り、大津島が舞台。
この本を読んでから大津島に行かれた方は、回天訓練基地などの設備や風景描写の精緻さに驚かれることだろう。また、回天記念館に展示されていた遺書に混じって、休憩時間に描かれたと思しき絵があったよね。
その絵の作者と、本書の主人公の苗字が同じなのは、偶然ではないだろう。本書の主人公は、貧困にあえぎいじめに合い、生きる意味を失っている。なんのために生きるのか。
そんな中、死ぬことが前提の特攻兵器に乗ることになる。余命を宣告された状態だ。そして、悩む。生きる意味はなんなのか、死ぬってどういうことなのか。
ひたすら自分の自画像を描きながら、自問する。
なぜ、生まれて来たのか。
軍隊という組織は、上意下達。逆らうことは許されない。そんな中で、主人公は、自分の内なる精神だけは、誰にも指示されないことを拠り所にして生きる。
出撃すれば必死だが、何のために死ぬかは自分で決めることができる。そう、生きる意味は自分で決めることができるのだ。
戦争モノなのに、不思議と哀しい感情が出てこない。哲学的で、もう一度自問したくなる。ゆっくりと時間をとって味わいたい作品でした。
次回からは、ふたたび山口旅に戻ります。
おったのしみにー!
(おしまい)
やりたいことが見つからないアナタへ
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