疲れた日にお酒を飲みたくなるのはなぜか。――内向型の回復と現実逃避の境界線。
仕事から帰る。
特別嫌なことがあったわけじゃない。でもなんとなく、疲れている。そんな日に限って、冷蔵庫のお酒が頭をよぎる。
無意識にストレスが蓄積して、つい楽になる感覚がほしくなる日があるのだ。
お酒を飲みたくなるのはどうしてか
ストレスのあとに飲みたくなること自体は、心理学的にも珍しい反応ではない。
研究によると、人が飲酒を選ぶ動機のひとつに「緊張緩和動機」があるらしい。不安やストレスを和らげるために飲む、という行動パターンで、特に自己評価が揺らいでいるとき、一人でいるときに現れやすいとされている。
「なんとなく飲みたい」の裏に、「なんとかしたい状態がある」ということだ。
アルコールが「楽になった感覚」を作る仕組み
アルコールは脳に作用して、いくつかのことを同時に起こす。
緊張が和らぐ(GABA受容体への作用による抑制系の活性化)
自己意識が薄れる(過剰な自己モニタリングが落ち着く)
思考の負荷が下がる(考え続ける状態から抜け出せる)
内向型は刺激の処理コストが高い傾向がある。一日中、音や会話や情報を処理し続けた脳は、夕方にはかなりの負荷を抱えている。そこにアルコールが入ると、思考の回転数が下がる。「楽になった」と感じるのは、確かに事実だ。
ただ、ここに一つ興味深い話がある。
内向型は、アルコールの効きが違う可能性がある。
内向型は刺激の変化に対して反応しやすい神経系を持つ傾向があるとされている。カフェインを使った研究では、内向型は外向型より、自分が何を摂取したかを体感で識別しやすいという結果が出ている。アルコールについても同様のことが起きている可能性は十分に考えられる。(が、直接的な研究はまだ限られている。)
「楽になった感覚」と「回復」は、同じではない
お酒を飲んで楽になる感覚は本物だ。でも、それが翌日につながるかどうかは、人によっても、状況によっても違う。多くの人は、翌日調子が悪くなったこともあるのではないだろうか。
回復できているとき
翌朝、頭が少し軽い
睡眠が取れていて、体が休まっている
問題や悩みが、少し整理されている感覚がある
先送りになっているとき
翌朝、かえって体が重い
睡眠の質が落ちて、疲労が残っている
問題はそのままで、気力も戻っていない
アルコールは睡眠の後半を浅くする作用があることが知られている。
よく眠れたと感じていても、深い睡眠が十分に取れていないことがある。
「楽になった夜」が「しんどい朝」につながっているなら、何かが先送りになっているのかもしれない。翌朝の自分が、答えを持っている。
何から回復したいのか
「お酒を飲みたくなる日」を少し分解してみると、こんな要素が積み重なっていることが多い。
人と話し続けた(楽しい会話であっても、処理コストはかかっている)
情報を大量に処理した(会議、メール、タスクの切り替え)
考えすぎた(反芻思考で頭が止まらない状態が続いた)
自分のペースで動けなかった(誰かに合わせ続けた)
反芻思考と内向型の関係については別の記事でも書いているが、考えすぎて止まらなくなることや、「考え続ける自分を止めたい」という感覚は、内向型に特に強く出ることがある。
お酒を飲むと、その回転が止まることがある。だから飲みたくなる。
私がお酒を飲みたかった理由
私がほしかったのは「考えるのをやめる時間」だった。
一日の終わり、誰かのことを考えて、仕事のことを考えて、明日のことを考えて、それでもまだ何かが頭を回っていた。そのループを止める方法が、当時の私にはほとんどなかった。
お酒は確かに効いた。でも翌朝の重さも、確かにあった。
それが回復だったのか先送りだったのか。今になって少しわかる気がするのは、楽になった夜の数だけ、少し重い朝があったからだ。
飲みたくなる自分を、少し解像度高く見てみる
やめる必要はない。ただ、飲む前に少しだけ自分に聞いてみると、見えてくるものがあるかもしれない。
Q1. 私は今、何に疲れているんだろう?
Q2. 回復したいのか、忘れたいのか?
Q3. 明日の自分は、今より楽になっているか?
自分が何を求めているかを知っていること。それだけで、飲み方は少し自分に正直になれる。
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