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「また怒られるかも」と常にビクビクする内向型ADHDの消耗の正体と対処方法

「また怒られるかもしれない」

人と会う前から、会社に行く前から、そう思っている。

普段から、人一倍気をつけている。

過去に何度も何度も、気をつけていたのにやらかしたから。

話の流れを読み違えた。
冗談のつもりが、気づいたら相手の顔が曇っていた。
職場では何度も同じことを注意されて居場所がなくなっていった。
悪気がないのに、場を乱した。

だから今度こそ、と思う。

今度こそ変なことを言わないように。
今度こそ怒らせないように。

その「今度こそ」が、誰かと会っている間、ずっと頭の片隅で動き続けている。

内向型にADHD傾向が重なったとき、社会に合わせ続けることのしんどさが、より一層増してしまう。

この記事では、その仕組みを整理していく。


ADHDは、叱られ続ける環境に置かれやすい

ADHDの特性は、社会のルールと噛み合いにくい場面が多い。

不注意でミスが増える。衝動的に動いてしまう。優先順位通りに動けない。締め切りを守れない。本人が怠けているわけではなく、脳の実行機能に関わる特性として知られている。

ただ、周囲からはそう見えないことが多い。

「やる気がない」「何度も同じミスをするなんて」「なんで普通にできないの」。

そのような言葉を、子どもの頃から、職場でも、繰り返し受け取ってきた人が多い。

ADHDの特性があると、子どもの頃から叱られる経験が多くなりやすく、生きづらさやストレスを感じやすいことから、自尊心や自己肯定感をもちにくくなってしまう傾向がある。(不注意型は社会に出てから明らかになることもしばしばだが)

失敗体験の積み重なりが、自己肯定感を少しずつ削っていく。


傷の積み重ねが「防衛モード」を作る

自己肯定感が削られていくと、何が起きるか。

人と関わる場面で、無意識に「防衛モード」が起動するようになる。「また怒らせるかも」「また変なことを言うかも」という予期不安が先に来て、会う前からすでに緊張している。

これはRSD(拒絶敏感性)と呼ばれる状態に近い。RSDは、拒絶や批判に遭遇したとき感じる特別な身体的・感情的痛みのことで、ADHDの症状のひとつとして、特に成人後に多く報告される現象だ。 

重要なのは、RSDは実際に拒絶が起きてからだけでなく、拒絶を予期した段階でも行動を変えてしまうという点だ。

怒らせないために完璧にこなそうとする、承認を得るために相手に合わせ続ける、少しでも不機嫌そうに見えたらサインを読もうとする、そういった行動が積み重なっていく。

ゆえに繊細さに磨きがかかることも考えられるだろう。


ASDが重なるとさらに複雑になる

ここで少し触れておきたいのが、ASDとの併発の話だ。

ADHDとASDを併発している割合は、成人の発達障害のおよそ27〜30%とされる調査結果がある。

ASDの特性のひとつに、暗黙のルールや他者の意図を読み取ることへの困難さがある。「なんとなくこういう空気だから、こういう返し方をする」という処理が、定型発達の人より負荷がかかりやすい。

ADHDと単独で向き合っている人でも難しい場面なのに、ASDが重なると、その場の「空気を読む」という作業がさらに重くなる。ADHDとASDが合併することで社会適応の難しさは単純な足し算にはならず、より大きな困難として現れることが指摘されている。

さらにやっかいなのが、互いの特性が表面的な行動を打ち消し合うことがある点だ。ADHDの多動性をASDの不安が抑え込んでしまい、外から見ると「落ち着いている人」に映ることがある。困難さが見えにくくなるぶん、周囲に気づかれにくく、本人も自分の消耗の原因がわからないまま過ごしやすい。 


内向型が重なると、処理が2層になる

ADHDに内向型の特性が重なると、消耗の構造がもう一段深くなる。

内向型の脳は、外から入ってきた情報を処理するのに多くのエネルギーを使う。目の前の相手から受け取る情報と過去の記憶を照らし合わせながら処理するため、外向型が使わない脳の部位も経由することがわかっている。 

つまり、内向型×ADHDの場合、以下のことが同時に起きている。

  • 相手の話を深く処理しながら聞いている(内向型の情報処理コスト)

  • 防衛モードで発言を監視し続けている(RSDによる警戒)

  • 実行機能に負荷がかかっている(ADHDの特性)


外向型ADHDとの違い

同じADHDでも、外向型の人は違う消耗をする。

外向型は外界からの刺激でエネルギーが充電される設計になっている。刺激が得られないとき、むしろエネルギーが消耗し、退屈や疲労を感じやすい。 人と会うこと、にぎやかな場にいること、それ自体が燃料になる。

ADHDの多動性や衝動性も、外向型の場合は場の盛り上がり役として機能しやすい。多少やらかしても、明るさやテンションで場が和むことがある。失敗への耐性が、社交的なエネルギーに支えられていることも多い。(もっとも、外向型ADHDは、すごく明るくて破天荒なキャラに見える一方で内面がとても繊細なことが多いため、内向型以上にそのギャップに悩まされる人が多いのではないか、と彼らを見て個人的には思っている。)

一方で、内向型の場合、刺激は充電ではなく消耗になる。そこに防衛モードが重なってしまう。


「普通にこなせた」日ほど、消耗が深いことも

マスキングという言葉がある。ここでは、ADHDや発達障害の特性を隠し、「普通」に見せるための適応行動のことだ。

マスキングには短期的なメリットもある。周囲と衝突しにくくなったり、社会的な場面でスムーズに振る舞えるようになったりする。しかしその裏側では、常に自分を監視し続けるような状態になり、疲れやすくなったり、不安や抑うつが強くなったりすることがある。 

このようなことをしていないだろうか。

  • 発言する前に、頭の中で2〜3回確認している

  • 相手を退屈させていないか、常に顔色を確認している

  • 帰宅してから「あの発言は大丈夫だったか」と反省会が始まる

  • LINEを送る前に、何度も読み返している

  • 沈黙が来たとき、自分が何か話さなければと焦る

3つ以上当てはまるなら、かなり高い負荷で日常をこなしている可能性がある。

うまくできた日ほど、消耗が深い。なぜなら、うまくできた日は、それだけ多くのマスキングが機能したかもしれない日だからだ。


社会に適応しようとすることでコストが生まれる

内向型×ADHDが社会に適応しようとするうえでの問題は、その適応にかかるコストが回収しにくいことだ。

内向型×ADHDの場合、ADHDのマスキングと内向型の適応行動が同時に動いている分、消耗の総量がそもそも違う。

そのうえ、ADHDの特性によって社会生活への適応が難しくなることで自己肯定感が低下し、不安やうつ状態といった二次的な問題につながりやすいことが知られている。 

自己肯定感が下がると、休もうとしても「また怠けた」「もっときちんとしなきゃ」という思考が邪魔をする。休息が休息として機能しにくくなる。


消耗しない設計に変えていく

「適応しすぎない」ことを意識するのは、思ったより難しい。長年の習慣になっているから。

ただ、少しずつできることはある。

消耗の総量を把握する
予定を立てるとき、時間だけで判断しない。
同じ2時間でも、その場でどれだけ実行機能を使うかで、終わったあとの状態は全然違う。ADHDの場合、こういう場面ほど消耗が深くなりやすい。

  • 流れが読めない、何が起きるかわからない場面

  • 同時に複数のことを求められる場面

  • 失敗が許されない、緊張感が高い場面

「何時間空けるか」より「どのくらい実行機能を使う予定か」で考えると、回復の見積もりが変わってくるかもしれない。

回復日を先に確保する
予定を入れてから回復日を探すのではなく、回復日を先に決めてから予定を入れる。特性上、衝動的に予定を入れがちであるため、ワンクッションおく癖を付けるといいと思う。

「帰宅後の反省会」に気づく 
帰宅後に「あの発言は大丈夫だったか」「また変なことを言ったかも」と頭の中で再生が始まるのは、ADHDのRSDと深く関係している。反省会をやめようとしてもなかなかやめられない。まずそれが始まったとき、「またRSDが動いてる」と気づくだけでいい。


社会のルールに合わせようとし続けることはどうしても必要になるが、そうすると消耗が蓄積していく。

「発達障害は個性だ」とか「発達障害は才能だ」とか、ここではそんな綺麗事はおいておく。

少しでも生きやすくなれるよう、仕組みを知って対処していく方法を考えていきたい。


このnoteでは、内向型・繊細な気質を持つ人が消耗しすぎずに生き延びるための情報を、当事者目線で発信しています。 社労士(有資格者)・キャリアコンサルタントとしての知見も交えながら書いています。    

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