「ホルモンの唐揚げ」をつくりながら、ホルモン文化を考える
埼玉県秩父市で「ホルモンの唐揚げ」を食べた。
秩父は「豚ホルモン」が名物だ。

(西武秩父駅前温泉祭の湯・秩父湯台所にて)
「ホルモンの唐揚げ」は、豚大腸に片栗粉をつけて、カリッと揚げられていた。モツに塩味がしっかりついていて、噛めば噛むほど味が出る。酒のつまみにぴったりの一品だ。
ホルモンと聞いて思い浮かぶ料理といえば、焼肉、もつ焼き、もつ鍋、もつ煮…。私には「焼く」か「煮る」という選択肢しかなかった。
ホルモンを「揚げる」とは、なんとも斬新な発想だ。
とはいえ、広島には「ホルモンの天ぷら」があるし、ホルモンを揚げる料理が存在することは知っている。ただ、それが関東で出てきたことが、ちょっと衝撃だった。しかも「唐揚げ」だ。
さっそくこの「ホルモンの唐揚げ」を再現することにした。
ホルモンの唐揚げ
<材料>
豚大腸 300g
にんにく 2片
ナンプラー 小さじ2
コショウ 少々
片栗粉 大さじ3
<材料>豚大腸
秩父で食べた「ホルモンの唐揚げ」は、豚大腸が使われている。
いきつけの内臓肉店へ買いに行くと、ちょうど新鮮な「テッポウ(豚直腸)」が入荷していた。
いい肉を見つけたぞ!これでつくろう!

テッポウ(豚直腸)は、大腸のなかでも肛門に近い部位。
切り開いたときの形が鉄砲に似ていることから「テッポウ」と呼ばれる。
細長いシマシマの部分は薄っぺらいが、幅広い部分は肉厚で、程よい脂があってウマイ。厚みのある部分は、やや噛み応えがあるため、肉の裏側に隠し包丁を入れて、食べやすくしておこう。

<味付け>不動の調味料「ナンプラー」
味付けには、私の不動の調味料「ナンプラー」を使う。
おいしい塩味をつけたい時、これ一本で味がキマる、万能調味料だ。
「ナンプラー」は、東南アジア・タイを代表する調味料。カタクチイワシなどの小魚を、塩漬・発酵・熟成させてつくる魚醤だ。グルタミン酸などのアミノ酸を多く含んでいるため、強い旨味がある。
ややこしいレシピ不要で、本当にこれ一本で味がキマる。
野菜炒めをはじめ、炒飯、唐揚げ、なんとパスタのトマトソースにも大活躍だ。
ナンプラーでキメてきた、歴代のホルモンレシピ
・鶏膝ナンコツの唐揚げ
・ホルモン炒飯
・トリッパ(ハチノス)のトマト煮
さあ。ナンプラー、おろしにんにく、白コショウを少々加えて、しっかり混ぜて、豚大腸になじませよう。

大腸がダンゴにならないように広げながら、片栗粉をしっかりまぶす。
あとは揚げるのみ。

少なめの油で揚げる。それがホルモン魂
食品価格の高騰で、油もずいぶん高くなった。
あまり贅沢に使えないため、少なめの油で揚げよう。

少ない油で揚げる。
これこそが、ホルモン魂。
以前、フライドチキンも「ホルモン」の仲間だった! という話を書いたが、フライドチキンは、捨てる部位だった鶏の手羽やネックなどを、食べやすいように油で揚げたことが始まりだ。アメリカの大恐慌時代で、少ない油しか使えない。そこで圧力鍋を使って揚げる調理法を編み出したのが、現在のケンタッキーフライドチキンなのだ。
考えてみると、いまも大恐慌と変わらない。
戦争があって、食品や油などの物価が上がってしまった。かつて捨てる部位といわれていたホルモンでさえも、高騰っぷりが半端ない。
そこで私が編み出したのは、「少ない油で、熱効率の良い中華鍋で揚げ物をする」ことか?
そんなことを考えている間に、ホルモンはカリッと揚がった。

秩父は、なぜホルモンが名物なのか?
家畜の内臓を食すホルモン料理は、独特の食文化だ。
独特の背景があって、その料理が生まれている。ディープな歴史が絡んでいることもあるので、私はなぜ、秩父なのかに興味があった。

調べてみると、いたってシンプル。
関東の水瓶でもある市内の二瀬ダムの建設により昭和30年頃に、大阪から来た工事関係者が秩父市の押堀先にホルモン焼き屋を開業したのが『秩父ホルモン焼き』の始まりです。
「大阪から来た人が伝えた」とのことだ。
埼玉県には、気になるホルモン文化がある
とはいえ、実は、埼玉県には気になるホルモン文化がある。埼玉県東松山市には、串に刺して焼いた豚カシラを「やきとり」と呼ぶ食文化があるのだ。
鶏ではなく、豚の串を「やきとり」と呼ぶ。このなんとも不思議な食文化は、限られた地域にだけあり、そのひとつが東松山なのだ。東松山は「日本やきとり7大都市」のひとつでもある。
日本やきとり7大都市
北海道美唄市、北海道室蘭市、福島県福島市、埼玉県東松山市、愛媛県今治市、山口県長門市、福岡県久留米市
東松山の「やきとり」は、食糧難だった終戦後の昭和20年代に誕生している。
当時市内にあった屠畜場の仕事を手伝う人々が、捨てられていた豚の頭をもらい受けて、肉をこそぎ落として串に刺して炭火焼きにしたのが始まりだ。
埼玉にはディープなホルモン文化がある。
個人的には、おいしい肉の気配がする注目のエリアだ。
何はともあれ、いただきます!
ホルモンの唐揚げは、揚げたてのうちにいただこう。
カリッとして、噛めば噛むほど豚大腸から旨味が出て、クセになるおつまみだ。
秩父名産「しゃくし菜漬」も、箸休めにピッタリだ。

いつもは「焼く」か「煮る」でしか調理していなかった豚大腸だが、「揚げる」というのは、かなりアリだ。
新たなホルモン文化に注目するきっかけにもなった。
秩父ホルモンに敬意を示して、乾杯だ!
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